ギリシャ神話というものがあり、ゼウスという神がいる。
これほど有名なキャラクターもそういないですよね。
けどじゃあゼウスとはどんな神で、どんなことをしたのか、ご存知でしょうか?
今回はギリシャ神話の主人公、全能の神ゼウスをかいつまんでご紹介させていただきます。
ギリシャ神話の入門用にもちょうどいいと思います。
ファンタジーの知識があれば、より楽しい!
今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもゼウスとはなんぞや?
ゼウスとは、ギリシャ神話における主神であり、多くの神、英雄が登場するこの世界の主人公格です。
オリュンポス山の宮殿にて神々の頂点に立つ最高神。
その名は「天空」を表す「dyeus」から来ており、気候、特に雷を司る天空神です。
ローマ神話ではユピテル、英名ジュピターとして、太陽系で1番大きな惑星である木星にその名が付けられています。
ハデス、ポセイドン、ヘスティア、デメテル、ヘラといった神々を兄姉に持つ6人兄弟の末っ子で、父は農耕神クロノス、母は女神レア。
一般的に山羊の皮鎧に白髪白髯、手にはイカズチを発する神器「雷霆(らいてい)」と知恵を司る鷲を止まらせた姿をしています。
大きな戦を3度指揮しており、武神としての側面がある一方、非常に好色で多くの女性と関係を持ち、多くの子供が英雄として誕生しています。
しかしそんなゼウスも始めから好き放題できる身分ではありませんでした。
むしろ過酷といえる誕生秘話を抱えています。
ゼウス誕生
ゼウスの父であるクロノスは、横暴な初代の王ウラノスの男性器を切り落とし、その座を奪い取りました。
しかしクロノス自身もやがて生まれてくる子に王座を奪われるのではないかと疑心暗鬼に陥ります。
その不安に駆られたクロノスは、妻のレアが生む子供たちを生まれたその場で丸呑みにしてしまうのです。
それが5度繰り返され、嘆き悲しんだレアは、クロノスの母である大地母神ガイアに相談します。
そこで6番目の子供、ゼウスが生まれた時に大きな石を産着にくるんでクロノスに渡したのです。
しっかりと確認せずにその石をゼウスだと信じたクロノスは、いつも通り丸呑みに呑み込んですっかり安心してしまいました。
しかしゼウスは密かにクレタ島のニンフ(妖精)たちによってスクスクと育てられていたのです。
「ティタノマキア」 ティタン神族との戦い
成長したゼウスは知恵の女神メティスの煎じた嘔吐薬(カラシと塩)をクロノスに飲ませ、先に丸呑みされたデメテル、ヘスティア、ヘラ、ハデス、ポセイドンを吐き出させます。
しっかりとクロノスの腹の中で成長していた兄姉と協力し、オリュンポス山にてクロノスに反旗を翻します。
対するクロノスは「ゼウス許すまじ」、とティタン神族を率いてオトリュス山に布陣しました。
こうしてティタン神族との戦い、「ティタノマキア」が開戦します。
しかし基本不死である神と神同士の戦いは、決着のつかないまま10年の膠着状態に陥ります。
ちなみに、名特撮監督として名高いレイ・ハリーハウゼンの傑作映画に『Clash of the Titans(邦題:タイタンの戦い)』というものがありますが、まさにタイトルがティタノマキアなんですね。
ただし内容はアレンジの加わった英雄ペルセウスの物語ですし、ティタン神族も出てきません。
10年も戦局が動かないことでゼウスは祖母である大地母神ガイアの助言に従い、奈落の冥府タルタロスから単眼の巨人サイクロプスと50頭100手の巨人ヘカトンケイルを解放し味方につけます。
彼らは先々代の支配者ウラノスとガイアの子でしたが、その醜い形相のため理不尽にも奈落に幽閉されていたのでした。
意外にも手先が器用で鍛冶技術に長けたサイクロプスにより、オリュンポス勢の装備品が強化されます。
「雷霆」もそのひとつ。
自在に雷を操るこの神器を得てゼウスは無敵の戦闘力を手に入れます。
巨岩を雨のように投げ続けるヘカトンケイルの活躍もあって、ついにこの戦いはゼウスたちの勝利で幕を閉じました。
無類の女好きゼウス
天界をゼウス、海をポセイドン、地下の冥界をハデスが治め、最高権力者の地位もゼウスが手に入れます。
しかしゼウスにはひとつ、困った性分がありました。
それは無類の女好きから来る浮気性でした。
古代ギリシャは「一夫一婦制」で、王であっても後宮やハーレムなどは持たないのが普通でした。
正妻として姉でもある女神ヘラを迎えておきながら、そんなことにはお構いなしに神だろうが妖精だろうが人間だろうが、美女であれば片っ端から手を出すのです。
それも正攻法で口説けないとなれば、動物に化けたり、雨や雲に変じて近付いたりと手段を選びません。
以下は主なゼウスの愛人関係とその子供です。
ザッとご説明させていただきます。
正妻ヘラ
- アレス(軍神。オリュンポス12神のひとり)
- ヘパイストス(鍛冶の神。オリュンポス12神のひとり)
- へべ(青春の女神。ヘラクレス最後の妻)
- エイレイテュイア(出生を司る女神)
- エリス(アレスの双子の妹とする説もあるが、夜の女神ニュクスが単身で生んだとする説もある)
知恵の女神メティス(ゼウスの最初の妻。後にゼウスに丸飲みにされ、以後体内から助言をする)
- アテナ(戦の女神。オリュンポス12神のひとり)
黒い衣の女神レト
大地の女神デメテル
- ペルセポネ(冥界の女王。ハデスの妻になる)
女神マイア
- ヘルメス(神々の伝令。オリュンポス12神のひとり)
セメレ(人間)
- ディオニュソス(酒の神)
正義の女神テミス(ゼウスの2番目の妻。後に離婚、ゼウスの秘書となる)
- ホーライ三姉妹(季節を司る。エウノミア、ディケ、エイルネ)
- モイライ三姉妹(運命を司る。アトロポス、ラケシス、クロートー)
アルゴスの王女ダナエ
- ペルセウス(メデューサを退治した)
ミュケナイ王の娘アルクメネ
- ヘラクレス(12の功業を成した)
フェニキアの王女エウロペ(ヨーロッパの語源)
- ミノス(クレタ島の王。冥界の裁判官)
- ラダマンテュス(楽園エリュシオンの統治者)
- サルペドン(トロイア戦争の英雄)
スパルタ王妃レダ
- ヘレネ(トロイア戦争の原因となった絶世の美女。復讐の女神ネメシスの娘説もある)
- ポリュデウケス(双子座の片割れ)
ニュクラウスの娘アンティオペ
- ゼトス
- アムピオン
ヘラの巫女イオ(後のエジプト神話のイシス)
- エパポス(エジプト王)
判明しているだけでもこれぐらいはあります。
ゼウスの浮気に対してヘラの嫉妬は凄まじく、相手の女や子供は激しい呪いを受けたり、あるいは殺されたりします。
それに対しゼウスは後ろめたさからか、ヘラを止めることはできず、こっそりと支援や手助けをする程度しかできないようです。
中でも最も憎まれたのが英雄ヘラクレスでしょう。
その名は「ヘラの栄光」という意味ですが、そんな名前を付けるから煽ってるみたいに受け取られたんじゃないですかね。
ちなみにヘラが最も可愛がったのが青春の女神へべでして、最後はヘラクレスにへべを妻に迎えさせることで和解したとあります。
このゼウスの浮気性についてですが、一応彼の擁護をしておくと、古代ギリシャに数多くいた偉人や英雄が、こぞって「自分はあのゼウスの血をひいているので」というような事を云うので、各地にゼウスの子孫が氾濫するという現象が起きていたようです。
古代ギリシャとはひとつのまとまった国ではなく、都市国家のひしめく地域であったため、我も我もと言う声をみな拾っていった結果こうなってしまった、という見方もあります。
ガイアの反乱
このように色に更けるやりたい放題なゼウスに今度は大地母神ガイアがキレます。
ゼウスは先の大戦で打ち負かしたティタン神族に対し、苛烈な懲罰を与え続けました。
ゼウスは孫ですが、ティタン神族はガイアの子たちです。
再三にわたる減刑の要望も聞き入れられず、ゼウス自身は日々享楽に更ける。
ついに堪忍袋の緒がキレたガイアは新たなる敵「ギガンテス」を生み出したのです。
ギガンテスとの戦い「ギガントマキア」の開戦です。
下半身が蛇である巨人ギガンテス(複数形。単数形はギガント)には、ある秘密がありました。
それは「神の攻撃無効化」というチートなスキルです。
一切のダメージを神からは喰らわないという能力ですが、しかしゼウスはこの日のためにあらかじめ対策となる英雄を育てていました。
それが超英雄ヘラクレスです。
無駄に女遊びをしていたのではありません。
せっせと奥の手をこさえていたのです。後付けぽいとか思わないで。
半分人間であるヘラクレスの攻撃は有効で、ギガンテスはあえなく敗れ去ります。
しかしガイアも諦めません。
最終手段として、自ら奈落の冥府タルタロスそのものと交わることで最凶の怪物テュポーンを生み出したのです。
テュポーンはタイフーン(typhoon)、いわゆる台風の語源となった存在。
そのあまりの恐ろしさにオリュンポスの神々も動物の姿を借りて遠くエジプトまで逃げ出します。
だがゼウスはひとり踏みとどまり、テュポーンと戦いました。
激しい戦いではありましたが、無念、ゼウスは手足の腱を奪われ、身動きできないままデルポイ近くのコリュキオン洞窟に閉じ込められてしまいます。
そのゼウスを救ったのは神々の伝令役ヘルメスでした。
牧神パンと共に腱を取り戻しゼウスを救出します。
そこが転機でした。
一転、攻勢に出るとゼウスの雷がテュポーンの炎に競り勝ちます。
そうしてテュポーンをシチリア島のエトナ火山に封じる形で戦いは終わりました。
さすがのガイアもこれ以後は大人しくなり、ゼウスの治世は磐石のものとなったのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
一定の年代より上の世代にとって、ゼウスはなかなかに馴染みのある神だと思うんです。
ビックリマンですね。
1個30円(当時)のチョコ菓子についてくるおまけシール。
その第1弾のヘッドがスーパーゼウス。
まさしく今回ご紹介したゼウスがモデルでしたね。
まあビックリマンは天使vs.悪魔がテーマであるためにスーパーゼウスも天使という括りにはなりますが。
さて、どうでしょう。
(西洋的な)神といえば一般的なゼウスのデザインを思い浮かべるのがセオリーとは思えませんか?
それだけ普遍的な、定番を生み出した偉大な存在でもあると思います。
ギリシャ神話はローマ帝国によりキリスト教が国教と定められた後、千年近く忘れ去られていた文化です。
それが中世のルネサンス期に大復活し、日本に入ってきたのは20世紀初頭という。
長い人類の歴史から見たらほんのつい最近じゃないですか。
それでこれだけ浸透しているゼウスというキャラクター。
創作を志すならこれぐらい強烈なキャラを生み出したいものですよね。
それではまた!