【冥王ハデス(プルート)】くじが外れて冥界の支配者に【ヴィランレビュー第3回】

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ハデス、またはハーデスというと死者を統べる冥界の支配者のイメージ。
確かにそうです。
そしてそれ故にとかく悪役嫌われ役にされていると思いませんか?

イメージ的には悪のラスボスとしても遜色ないキャラクターかとは思います。
しかしですね、実は本当の彼はまったく真逆の性格をした人物なのです。

ゼウスのように好色でもなければ、ポセイドンのように荒々しくもありません。
妻と二人、家で静かに暮らす真面目な優等生だったのです。

ということで、今回はギリシャ神話を題材にしたとき、よく悪役として使われるハデスです。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

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目次

そもそもハデスとはなんぞや?


ハデスとは、ギリシャ神話における「冥界の支配者」であり、ゼウスとは兄弟であります。

彼の父は先代の支配者であった農耕神クロノス、母はレア。

姉に炉の女神ヘスティア、大地の女神デメテル、結婚の女神ヘラ
弟に海神ポセイドン、最高神ゼウスとなっています。

実はハデスは長男です。
なので順当に行けば次期支配者はハデスとなるはずでした。
しかし現実はゼウスが支配者となります。

先々代の天空神ウラノスを追放し、支配者となったクロノスは、自分も同じように我が子に追放される日を怖れていました。
そのため生まれてくる子をその都度、丸飲みにしていたのです。
それが6番目の子であったゼウスの時、母レアにより父に丸呑みにされる難を逃れたゼウスは、やがて5人の兄妹を救出してクロノスを倒してしまうのです。

この時飲み込まれた順を遡るように吐き出されたので、1番最初に飲まれた長女ヘスティアは最後に出てきました。
順番を言えばポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテル、ヘスティアの順で出てきました。
これで兄妹の順序も逆転したとする向きもあります。
末の弟だったゼウスが、逆順に入れ替わって長男と考えるというのです。

加えて戦功を挙げたゼウスが最高神に就くことに異議を唱えられる者はいなかったというのもあります。

くじ引きで支配地域を決定


見事クロノスを退けた後、戦後処理についての話し合いがありました。

その結果ゼウス、ハデス、ポセイドンの3人で三界、いわゆる「天空」、「海」、「冥界」の支配を分け合うことになります。
担当は公平にくじ引きで決められました
その結果、天空はゼウス、海はポセイドン、そして冥界、死者を統べる地底の世界をハデスが治める事となったのです。

冥界というと禍々しい印象を持たれるかと思います。
確かにそうかもしれません。
また、次期支配者の地位から「転落」した、とも受け取れるハデスのこのイメージから、しばしば彼は創作物の悪役、ヴィランに設定されることが多くなりました。
陰鬱とした死者の世界に籠っていては、どんなポジティブシンキングもやさぐれたとて仕方ないでしょう。
また、死者の世界は遠く、ハデスも神々のおわすオリュンポス山に常駐しなかった為、ゼウスの兄(弟)でありながら栄光あるオリュンポス12神には数えられない、という事も悪の設定に拍車をかけていますね。

しかしですね、本当の彼は人を慈しみ、芸術に感動する大変に優しい性格の持ち主なんです。

竪琴に落涙し、ルールを曲げる


竪琴の名手オルフェウスは、あのアルゴノーツの一員としてセイレーンとも渡り合った英雄です。

そんな彼の妻エウリュディケが、毒蛇に噛まれ死んでしまいました。
嘆き悲しむオルフェウス、ゼウスの許しを得てハデスの治める冥界へと赴きます。
冥界には死者しか入れません。
なぜなら地獄の番犬ケルベロスが生者は入らないように見張っているからです。

だがその地獄の番犬もオルフェウスの奏でる竪琴の音色を聴くと大人しくなってしまいました。
ほら、尻尾だって振っています。
妻を想い奏でるその美しい旋律。
これにはハデスもいたく感動し、特例として妻を連れ帰る許可を与えてしまうのでした。
やったねオルフェウス!

ただしひとつだけ条件が付きました。

「生者が地上へ戻る道すがら、決して後ろを振り返ってはならない」

オルフェウスは喜び、妻を連れて家路を急ぎました。
しかし道のりは長い。
次第に後ろをついてくるはずの妻が気になりだします。

「妻よ。ちゃんとついてきているか?」
「…………」
「変わりはないか?」
「…………」

背後に異常はないだろうか。
オルフェウスは気になって仕方がありません。
皆さんもどうですか?
長い帰り道、1度も後方確認せずに帰宅するのは難しいと思いませんか?

彼もそうでした。
後少しで地上へ着くはずだったのに。

オルフェウスは、振り返ってしまうんですね。

我慢できなかったんですね。
妻を先に歩かせればよかったのにね。

振り返ったオルフェウスは何を見たのか。
結末は決まっています。
妻、エウリュディケとは永遠の別れとなってしまったのです。

ハデスも沈痛の面持ちだったことでしょう。
何故かって?
それは彼にも愛する妻がいるからです。

ハデスの純愛


心優しくも、貧乏くじばかり引かされるハデスですが、たったひとり、恋した女神がいたのです。

それは姉である大地の女神デメテルの娘、ペルセポネでした。
恋愛に奥手なハデスはこの恋をゼウスに相談します。

「そんなに好きならさらっちゃえよ」

ゼウス的にはサプライズデート程度の助言だったのかもしれませんが、ハデスは文字通り、ペルセポネを強引に冥界へと誘拐してしまったのです。

すぐにデメテルがゼウスに抗議しますが、ゼウスも自分の助言が絡んでおり、また少なからずハデスの不満も解消しておかなくてはと考え、まともに取り合いません。
激怒したデメテルは全ての職務を放棄、引きこもってしまいます。

デメテルは「豊穣」を司る大地の女神です。
その大地の女神が仕事をサボるということは何を意味するのか。
地上に作物が実らず、飢饉が襲うのです。

こいつはさすがに不味い、とゼウスはペルセポネを返すようハデスに命令します。

しかしハデスも精一杯の勇気を振り絞り彼女をさらったのですから、すぐには納得できません。
そこで地上へ帰る前にせめて食事だけでも、とペルセポネを誘います。
まあ、食事ぐらいなら、とみんなもそれに同意しました。
ペルセポネはその席でデザートとして「ザクロの実」を食べました。

「ククク……」

実はザクロは冥界の食べ物です。
冥界の食物を口にしたら、冥界の住人とならなくてはならないという、厳然たるルールがあるのです。
ハデスによる精一杯の反抗でした。
デメテルからすれば「何て事してくれてんだ!」という話ですがね。

仕方なくゼウスがまたしても仲介に入ります。
ペルセポネが食べたのはザクロの実を4粒
そこで1年の3分の1は冥界で、残りは地上で過ごす事で決着します。

  • ペルセポネが「地上」にいる間はデメテルの機嫌もよく、作物が実ります。
  • ペルセポネが「冥界」にいる間はデメテルはふさぎこみ、作物が実りません。

その期間が「冬」なのです。

ちなみにですが、最終的にペルセポネはハデスの真心に気付き、正式に妻となり仲睦まじく暮らしました。

ただ、1度だけハデスは浮気します。
メンテという美しいニンフを好きになったのですが、それを知ったペルセポネによりメンテは草に変えられてしまいます。
そういう部分はやはりギリシャ神話の女神。怖い部分ですね。
草に変えられたメンテ、それこそがみんな大好きチョコミントのミントなんです。

ハデスの治める冥界とは?


ハデスも先の大戦「ティタノマキア」では大いに活躍しました。

そもハデスとは「目にみえないもの」という意味があり、サイクロプス(キュクロプス)のこさえた「姿隠しの冑」を使い先陣をきったのです。

ちなみに後のローマ帝国支配時にはハデスはプルートとして冥王星を割り当てられます。
意味としては「富める者」。

名前の意味、地底での生活、その影の薄さはしかし逆に彼にとっては居心地のいいものでもありました。
元来目立つポジションには就きたくない性分だったのかもしれませんね。
彼は真面目に冥界での仕事に励んだとされます。
そもそも死んだ者が地上へ戻れてしまっては、やがて地上は人で溢れてしまいます。
そうならないよう世界のバランスを保っているのはハデスなのです。

その冥界。
古代ではギリシャに限らず、多くの地域で「死者の国」は地底にあると考えられてきました。
死者だけではありません。
死者だけでなく囚人も閉じ込めるあの奈落の「タルタロス」も冥界の領域にあります。
同じ死者と言っても逆に天国ともいえる「エリュシオン」もハデスの治める冥界の領域に含まれます。
必ずしも暗く、陰惨な世界観ばかりではないのです。
ここを間違えてはいけません。

ハデスの治める冥界は、世界を囲むオケアノスの海の果てにあります。
そこは「昼と夜の境界ヘスペリア」と呼ばれ、その地下に冥界はあるのです。

冥界には5つの川が流れます。

  • アケロン川 (悲嘆)
  • ステュクス川 (憎悪)
  • プレゲトン川 (火炎)
  • レテ川 (忘却)
  • コキュートス川 (号泣)

この中心にハデスの館、宮殿が建ちます。
そこへ至る道には地獄の番犬ケルベロスがおり、3つの首はそれぞれ「地上から来る者」「地上へ出ようとする者」「ハデスの領内へ出入りしようとする者」を見張り、また威嚇しているのです。

ハデスの宮殿の前庭はペルセポネのために地上のような美しい景色が作ってあります。
ポプラ並木や種々の草花が咲き誇る庭園だそうです。

この並木道に沿うようにして、「沈んだ太陽を迎える門」と「夢が住む国」が並び合っています。

この庭の地下に流れる川の先に、白い砂の不毛な大地「アスフォデルの野」があり、死者たちがそこで行く先の審判を待っています。
生前の行いにより厳正かつ公正な審判がくだされ、死者の行く先はエリュシオン(天国)かタルタロス(冥府)かが決定されるのです。

まとめ

  • ハデスはゼウスやポセイドンの兄または弟である
  • くじ引きで冥界の支配者に決まった
  • 芸術を愛で、情に厚く、時にルールを曲げることもある
  • 妻は誘拐してきたペルセポネ
  • 死者の審判を厳正に行う物静かで真面目な神

いかがだったでしょうか。

ハデスのイメージが少しは変わったでしょうか?

とかくゼウスに恨み持つキャラ設定であったり、闇を愛する破壊の神みたいなイメージもありますが、割りと荒っぽい逸話の少ない神だったりしましたね。
そしてそのビジュアルイメージなんですが、ゼウスやポセイドンって大体決まってるじゃないですか。
白髪の老人だったり。
しかしハデスは色々あるんですよね。
逆にゼウスと似た白髪の老人にデザインされると違和感があったり。

この辺、まだまだ創作に使う余地がありまくりだと思うんですが、皆さんはどう思われますか?

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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