【酒の神ディオニュソス(バッカス)】はた迷惑なパリピ教開祖【ヒーローレビュー第10回】

※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

ディオニュソスは葡萄の栽培と酒の醸造法を人類に伝えた酒の神です。

正直彼をヒーローカテゴリーに入れるのを悩みました。
酒は気分を高揚させますが、同時にトラブルを巻き起こします。
ご紹介する逸話もそんな感じでして。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもディオニュソスとはなんぞや?


ディオニュソスとは、ギリシャ神話に登場する「葡萄酒と演劇」の神です。

二度生まれし者」という意味の名を持ち、ローマ神話では「バッカス」と呼ばれます。

人類に酒を教え、人々を熱狂的なディオニュソス教に染めた神です。

父はゼウス、母はテーバイの王女セメレ。

ゼウスと人間の王女との間に生まれたディオニュソスですが、無事に生まれたわけではありません。
例えばアポロンアルテミスヘラクレスと同様に、嫉妬深いゼウスの正妻、女神ヘラの攻撃を受けました。
それは彼が生まれる前から始まります。

セメレを許せないヘラはメイドに変身しそそのかします。

「あの者が本物のゼウスであるか疑わしいです。確かめるべきかと」

そう言ってその方法を教えます。
ゼウスが現れるとセメレは教えられた通りにゼウスに話しかけます。

「わたくし、お願いしたきことがございますの。聞いてくださる?」
「冥界に流れるステュクス川に誓って。なんでも聞いてやるぞ」

全能の神を自負するゼウスにとって叶えられない願いなどありません。気軽に請け負ってしまいます。

「それでは、女神ヘラと同じように、わたくしにも本来のお姿で接してくださいな

本物であると正体を確認するための問いかけです。
ゼウスは困りました。
しかしステュクス川に誓った以上、約束を反古にすることはゼウスとて許されません。
仕方なくゼウスはその場で正体を現します。

ゼウス本来の姿。
それは激しい稲妻と雷鳴に包まれた灼熱の荒神でした。
とても人間が間近で耐えられるものではありません。
憐れ、ヘラの入れ知恵により一瞬にしてセメレは焼けただれて死んでしまいました。

悲しむゼウスでしたが、セメレの胎内に自分の子が宿っているのを見つけます。
ヘラにバレぬようこっそりと未熟な胎児を取り出すと、自分の太股に埋め込んだのです。

やがて月が満ち、ゼウスの太股からディオニュソスは生まれました。

生まれたディオニュソスをセメレの姉妹であるイノの家族に預けましたが、ヘラの追随は止まず、イノと夫のアタヌスを狂わせ二人の子供を殺させてしまいます。
これはディオニュソスも危険だと、ゼウスはニュサのニンフに預け養育を頼みました。

ちょっとヘラにはドン引きしますよね。

酒を広めてディオニュソス教の開祖に


ニュサで成長したディオニュソスは、フリュギア(現在のトルコ辺り)の女神キュベレーから、葡萄の栽培方法と酒の醸造技術を学びます。

酒を飲むと心が解放される。
この素晴らしさを広めようと旅に出ることにしました。

エジプトやシリア、フェニキアなどの国々を巡りながら、酒の素晴らしさを広めます。

ワインを浴びるほど飲むことで恍惚状態に導く。
ディオニュソスの秘儀はしかし、人々を熱狂的にし、狂気と騒乱を巻き起こすものだと貴族連中が迫害に乗り出します。
けれどそうした抵抗にはディオニュソスは神の力を行使して神罰を下すことで黙らせました。

ある時アッティカ地方のイカリアにて、旅のディオニュソスをもてなしてくれた農夫のイカリオスにワインの醸造方法を教えてあげました。

神の恵みに感激したイカリオスは、すぐさま村中にワインを振る舞います。
しかしいまだ酒に疎かった村人たちはひどく酔っぱらい、酩酊状態に陥ったのを毒を盛られたと勘違い!
なんとよってたかってイカリオスを殺してしまったのです。

怒ったディオニュソスは村に神罰を下すと疫病や飢饉が流行り、村の娘たちも狂い出すという、そこまでするのかというあらぶりよう。
ようやく真相を知った村人たちは反省し、そしてディオニュソスを崇めるようになります。

こうしてディオニュソス教の勢力はどんどん拡大していきます。

ちなみにヨーロッパで最初にワインを作ったとされるのはもちろんギリシャ。
時代は優に3000年以上遡るそうです。

故郷テーバイでもウェーイ


ディオニュソス教はどんどんと膨れ上がり、もう手が付けられない状態に!
それほどに酒の力は凄まじい!

この集団の秘儀は主に夜中、酒を飲み、歌い、踊り、騒ぎまくる。そうやって気持ちよくなる。
気持ちもおおらかになり、節操もなくなる。
ただの飲み会と違うのは、獣を八つ裂きにして生肉を食したりしていたそうな。

まったくもって迷惑なパリピパーティーそのものだけど、何故か信者は圧倒的に女性が多かったらしい。

そうしてディオニュソスが故郷であるテーバイへ戻ると、その時の王ペンテウスはこの教団を弾圧していました。
まあ良識ある為政者ならなんらかの対策を打っているでしょうね。
そのため信者たちはキタイロン山中まで行き、そこで毎夜パーティーナイトを楽しんでいたのです。

ペンテウス王は帰ってきたディオニュソスを逮捕し、酒も禁止にしようとします。
だが「1度信者たちの様子を見るといい」、とディオニュソスに導かれ、キタイロン山中へと赴きます。
一方的に弾劾せず、歩み寄る姿勢も見せた為政者の鏡と言えますね。

そして狂乱のパーティーを覗き見していると、信者の女に見つかってしまいました。
即座にディオニュソスは信者たちを煽り、ペンテウス王は大勢の女たちに襲われ、獣のように八つ裂きにされ殺されてしまいました。

しかもその先頭に立っていたのはペンテウス王の母アガウエ。
正気に戻ったアガウエが自らの行為におののいているとディオニュソスは冷たく言い放ちます。

神である私を侮り、秘儀を信じようとしない、この者が悪いのだ

どクズじゃないですか?
ディオニュソスをヒーローカテゴリーにして良いものか?
お分かりいただけたでしょうか。
酒を好まない人からすれば「悪」にしか見えないですよね。

そんな彼も後に栄えあるオリュンポス12神に加わります。
ゼウスが我が子をその席に入れたがったのです。
すでに席は埋まっていましたが、ゼウス兄弟の長女、炉の女神ヘスティアがその座を譲り渡しスムーズに交代がなされたのです。そしてヘパイストスの罠にかかり黄金の椅子に拘束されたヘラのため、酒に酔わせて天界にヘパイストスを連れてきた行動をもって、ヘラとも和解することが出来ました。

王様の耳はロバの耳


プリュギアのミダス王は、あの女神キュベレーの養子でした。

ある時ディオニュソスの師であるシレノスが酔いつぶれたまま行方知れずに。
それを発見したミダス王がシレノスを手厚くもてなした事で、ディオニュソスはどんな願いでもお礼として叶えようと言います。
そこでミダス王は、

私が触れるもの全て、黄金になるようにしてくださいまし

と頼みました。

容易いことだ、と望みを叶えてやると、彼の触れたオークの小枝や小石が次々と黄金に変わります。
ハッピーな気分になったミダス王は、今夜はパーティーだ! とメイドにご馳走を用意させます。
が、当然食べようとしたものも黄金に変わり、水までも黄金の固まりになります。
挙げ句、娘のマリーゴールドにも触れてしまい、見事な黄金の彫像にしてしまったのです。

ごの能力、ヤメにじだいでずッ!

ディオニュソスに泣きながら懇願すると、ならばパクトロス川で行水をするがいい、とお告げが下ります。
言われた通りにすると黄金の力は川へと移り、そして川の砂が黄金になりました。

砂金が豊富なこの川を示すエピソードだったようです。
お酒関係ないし。

ミダス王の触れたものを黄金に変える力。
最近では『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』で見かけましたね。
主人公の相棒カミュの妹マヤ。
彼女が呪われた首飾りをかけたら触れたものを黄金に変えられるようになりました。
しかも力が暴走し、自分自身まで黄金の彫像にしてしまったというあたりが、ミダス王の娘マリーゴールドの部分も踏襲してますしね。

ドラクエは結構神話由来のエピソードを持ってくるんですよね。
決して堀井裕二氏のオリジナルばかりではない、知識の下支えがしっかりと出来ているんですね。さすがです。

少し脱線しますが、このミダス王、後に音楽に傾倒し、葦笛を吹く牧神パーンを崇めるようになります。
ある時同じように音楽を司る太陽神アポロンが、竪琴を奏でてパーンと腕前を競うことに。
集まった判定員が軒並みアポロンを評価するのに対し、パーンを崇めるミダス王は全員忖度している、と判定に異議を唱えました。
それにアポロンが激怒。(神はスグ怒ります)

「そのような耳は必要なかろう」

なんとミダス王の耳をロバの耳にしてしまったのです。
有名な「王様の耳はロバの耳」の話です。
童話ではなく神話だったんですね。

国民に知られまいとロバの耳を隠す王ですが、床屋さんにだけは隠しきれません。
もちろん口止めはしますが、床屋さんからすれば言いたくて仕方ない。
そこで町外れの草原に行き、地面に穴を掘って叫ぶのです。

王様の耳はロバの耳! ウェーイ

誰にも言ったつもりはありませんでしたが、しかしこの事は町中に噂となって駆け巡ります。
もちろんミダス王のロバの耳にもその噂は入ります。

「誰だ! ワシの耳の事を笑う奴はッ! 打ち首じゃ」

犯人を見つけ出し懲らしめてやる、と息巻いた王様でしたが、しかし考えを改めます。

「いや、それは違う。その者は罪を犯したわけではない。私怨で法をねじ曲げては、ワシの方にこそ罪悪がのし掛かる。そのような権利は誰にもありはしない」

考えを改めたミダス王の姿勢を評価したアポロンは、王の耳を普通の耳に戻してやったのでした。

まとめ

  • ゼウスと人間の王女セメレの間に生まれた
  • 人間に酒を教え広めた
  • ディオニュソス教はパリピが集い騒ぐ集団として人気
  • その人気でオリュンポス12神の座に後からなった

いかがだったでしょうか。

正直酒は素晴らしい、酒は人類最大の娯楽、酒酒酒、てのを正当化したいためだけの存在なんじゃないかと訝ってしまいます。

お酒が好きな人はいいでしょうが、嫌いな人も飲めない人もいますからね。
そちら側の人からしたらこのディオニュソスには魅力を感じなくても仕方ないかもしれません。

なんと言っても酒に溺れて騒乱を巻き起こすという駄目な部分を前面に押し出してきますからね。
ホント、ネガキャンしたかったのかな?

冒頭でチラッとディオニュソスは演劇の神でもあると書きました。
これは時代を経てディオニュソスの名を冠した劇場でギリシア悲劇が上演されるようになったことから来ています。
ディオニュソスはイベントを盛り上げる神、という具合ですかねえ。

みなさんはどう思われましたか?

それでは、また!

ランキング参加中です。
いつも応援していただき、ありがとうございます。
にほんブログ村 歴史ブログ 神話・伝説へ にほんブログ村 ゲームブログ ゲームの世界観へ
PVアクセスランキング にほんブログ村
よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

更新情報はX(Twitter)で発信しています。

目次