【王女イピゲネイア】生け贄にされた花嫁【ヒロインレビュー第19回】

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今回は悲劇の王女です。
英雄の花嫁になれると聞いて花嫁衣装に身を包み、式場へ向かうとそこは生け贄の儀式の場であった。

今回はサクッと悲劇の王女イピゲネイアをご紹介したいと思います。

皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

イピゲネイアの幸せと不幸せ


イピゲネイアはギリシア神話終盤の大イベント「トロイア戦争」の登場人物です。

はギリシャ連合総大将、ミュケナイ王アガメムノン
はスパルタ王女であったクリュタイムネストラ
エレクトラ
オレステス

今回はイピゲネイアを取り上げていますが、実はこの家族は全員不幸な目に遭います。
簡単に述べてしまえば、は母に殺されは弟に殺されは女神により正気を失わされます
妹は父がトロイアに行っている間に苦労します。

ではイピゲネイアに話を戻しましょう。

イピゲネイアの父アガメムノンには、スパルタに婿養子に入ったメネラオスという弟がいました。
このメネラオスの妻はヘレネといって、信じられないほどの美女でした。
ところがこのヘレネが、あろうことかトロイアの王子パリスと駆け落ちしてしまいます。

妻をトロイアの王子に寝取られた弟メネラオスのために、アガメムノンはギリシャ中の戦士たちをかき集め、ヘレネを連れ戻すためトロイア王国へ攻めいることにしました。

これがトロイの木馬などで有名なトロイア戦争の発端です。

さて、イピゲネイアの物語は、その出征前から始まります。
アガメムノンは出征前の景気祝いに「狩り」をしていました。
その日はとても調子が良かったのでしょう。
ついそこでヤバい失言をしてしまいます。

オレ様の狩りの腕前は比類なきものだ。あの狩猟の女神アルテミスとて敵うまい

はい、アウト!
ギリシャ神話では絶対に口にしてはいけない、神々を侮った発言であります。
当然これを知ったアルテミスは激怒。
トロイアへ出征するために大船団が集まったというのに、海の風を止めてしまいます。
風が吹かないので船を出せません。

アガメムノンが頭を抱えていると、予言者カルカスが神託を持ってきます。

アガメムノン様。神託によればイピゲネイア姫を女神アルテミスに生贄として捧げるべきだと

何を言っているのでしょうか。
弟の妻を取り戻すために、これから戦争を始めようとしている男が、そのために自分の娘を生贄に捧げましょうか?

「うん? そうなのか。あいわかった」

捧げるんですねぇ。
早速アガメムノンは妻と娘のいる城へ、使いの者をやります。
とはいえ生贄にするからスグに来い、と言って来るとも思えません。
そこでギリシャいちの英雄アキレウスと結婚させることにしたから準備して来なさい、と伝えました。

「まあ! あの英雄アキレウス様と結婚ですって」
「よかったわねぇ、イピゲネイア。さあ早く行きましょう」

この知らせを聞いて母クリュタイムネストラとイピゲネイアは大喜び。
早速支度を整えアガメムノンの元へ赴きます。

しかし到着すると華やかな結婚式には程遠い、なんとも厳かな雰囲気です。

用意されていたのは愛を確かめる祭壇ではなく、姫を生贄に捧げるための祭壇でした。

ここでイピゲネイアは自分がアルテミスに捧げられる生贄であることを知るのです。

クリュタイムネストラは夫に思いなおすよう懇願します。
名声を悪用されたアキレウスも姫を不憫に思い、こんなことは止めるように言います。
が、アガメムノンは聞き入れません。
彼はどうしてもトロイアの領土が欲しく、そもそも弟のためというのも口実に過ぎなかったのです。
その欲望の前には娘の命すら天秤を傾けるものではなかった。

「お母様、よいのです。このイピゲネイアの命がギリシャのお役に立てるのなら。それに、あのギリシャいちの英雄アキレウス様の妻になれる、そんな夢を一時でも見ることが出来たのですから、わたくしは幸せです。」

せめてもと、真っ白な花嫁衣装に身を包んだイピゲネイアは、生贄として女神アルテミスに捧げられてしまったのです。

こうして海に風は吹きましたが、クリュタイムネストラの中にも夫に対する怒りと憎しみの風が吹き荒れていました

アガメムノンに不信感を抱いたのは、名前を利用された英雄アキレウスも同様です。
この事が始まりとなり、戦争が始まってからも度々二人は衝突を繰り返すことになります。
そして最期までアキレウスが総大将であるアガメムノンに忠誠を尽くすことはありませんでした。

こうして始まったトロイア戦争ですが、実に10年もの歳月をかけた大戦になりました。
結果として、戦争はギリシャの勝利で終わります。
アガメムノンは多くの戦利品を得て、意気揚々とギリシャに帰りました。
しかし夫の留守の間にクリュタイムネストラは愛人を囲い、帰国したアガメムノンを早々に暗殺してしまったのでした。

異説

と、ここで終わるのではなくて、もう少し救いのあるエピソードもあります。

生贄にされる直前、女神アルテミスがイピゲネイアの身代わりに雌鹿を置いていったのです。

そしてイピゲネイアをタウリケの地(現在のクリミア半島)に連れ去りました。
その地で「タウリケのイピゲネイア」と呼ばれ、自身に仕える女祭司にしたというのです。

元々アルテミスは生け贄が欲しいなんて一言も言ってません。
予言者が勝手に言っていただけですし。

さてそのタウリケにて、後年、母殺しの罪で狂気に陥った弟のオレステスが訪れます。

アガメムノンを暗殺したクリュタイムネストラが、オレステスも殺そうとしたので返り討ちにしたのです。
しかし母殺しを断じて許さない、アレクトー、ティシポネ、メガイラの三女神で構成されたチーム、復讐の女神エリニュスによって、オレステスは正気を失ってしまいました。

「タウリケにある『アルテミスの神像』をアテナイに持ち帰ることで狂気が治るであろう」

人々に神託を告げるのが本職である太陽神アポロンはそう告げました。
その神託を信じ、オレステスは従兄弟のピュラデスと共にタウリケの地へ訪れたのです。
そこで奇しくも姉弟は再会を果たします。
そうして神像と共に故郷へと帰り、イピゲネイアは変わらずアルテミスの女祭司として働きました。
弟のオレステスも母殺しの罪による狂気が治まり、罪も許されたのです。

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まとめ

ベンジャミン・ウエスト 「イピゲネイアの前に犠牲として連行されるピュラデスとオレステス」 (1766)
  • イピゲネイアはトロイア戦争時のギリシャ連合総大将アガメムノンの娘
  • アキレウスとの結婚式と騙され生贄にされた
  • アルテミスに救われ女祭司として生きた説もある

いかがだったでしょうか。

神話のヒロインといえば欠かせないのがお姫さま。
それもこれ以上ないくらいの悲劇のヒロインですよ。
さすがにこれはないよね、てことで助かったルートも用意されている徹底ぶり。
なんとかこのお姫さまには幸せになってもらいたいものですね。

実は他にもトロイア戦争では不幸な目に遭う姫がいます。
いずれその方々もご紹介できればと思います。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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