古代ギリシャ人に人気ナンバーワンの神と言えば、太陽神アポロンをおいて他にありません。
アポロンって聞き覚えがあって、わりと知名度あると思うんですよね。
でもどんな神かはあまり知られてないんじゃないかな、と。
それはどうしてか考えたんですけど、もしかしたらこれのせいかもしれない。
明治製菓が発売する、長きに渡り愛され続けているチョコ菓子です。
ご存知の方も多いでしょう。
このチョコの形、見覚えありませんか?
そうです。
1969年に人類初、有人月面着陸を達成し、無事に帰還した「アポロ11号の司令船」に見えますよね。
ですのでこのアポロチョコはアポロ11号から来てると思われていますが、明治製菓がアポロを商標登録したのはそれよりも以前の1966年のこと。
担当者はNASAの計画が大成功することを予見していたのかもしれませんね。
とはいえアポロチョコもアポロ計画も、共に名前の由来は同じ。
今回ご紹介する太陽神アポロンから来ているのだそうです。
今回はギリシャ神話で人気の高いイケメンの太陽神アポロンです。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもアポロンとはなんぞや?
アポロンとは、ギリシャ神話に登場する「オリュンポス12神」の筆頭格でもある「太陽神」です。
父はゼウス、母はティタン神族コイオスの娘である「黒き衣の女神」レト。
月の女神アルテミスは双子の妹になります。
超絶イケメンで、「弓矢」「音楽と詩」「数学と医術」の神です。
予言の力も有し、竪琴と弓矢を携え、黄金の戦車(要するに太陽)で空を駆け巡り、人々に神託を授ける役目も負っていました。
アポロンは古代ギリシャ人の理想像を体現した存在で、頭脳明晰、スポーツ万能、非の打ち所のない完璧超人です。
そのため古代ギリシャではゼウスに次ぐ神として、人々に崇め奉られていました。
音楽や詩など、芸術も司ることから、アポロンは実はギリシャだけに留まらず、アジア各地でも信仰の対象となりました。
大陸の東西、芸術や文化が混じる、いわゆる「ヘレニズム」を象徴している神でもあります。
これほどの影響力と人々の理想像を持ちながら、しかしアポロンはどうしようもなく恋愛における失敗談が多いところが、ある意味人気の秘訣かもしれません。
アポロンと関わると不幸な結末が待っていることがよくあるのです。
そして医術の神であることから反面、疫病をもたらす神の側面もあります。
黄金の弓を持って疫病をばらまくのです。
攻撃の仕方がエグいですね。
牧畜の神としても知られ、恐ろしいオオカミの群れを自在に操り、家畜を護る役目も負いました。
なんとも多才な神であります。
さてこれほど人気のある神ですから、当然嫉妬を受ける対象にもなります。
その最大の障壁はもちろんあのゼウスの正妻です。
輝ける島での誕生
アポロンの父親はギリシャ神話最強主人公にして全能の神ゼウスですが、母親はゼウスの正妻ヘラではありません。
ティタン神族の女神レトが母親です。
ゼウスとヘラの間には4人の子供がいましたが、ゼウスは無類の女好きなため、美女と知ればあちこち手を出すことをはばかりません。
そしてあろうことか、ゼウスはレトとの間に生まれる子供について、「わたしの子供たちの中で最も輝かしい存在となるだろう」と発言したのです。
さあ大変。ヘラの嫉妬は大爆発です。
嫉妬に狂うヘラは強権を発動して、女神レトが世界のいかなる大地でも出産させぬよう各地にお触れを出します。
困ったレトは身重の身体で世界中を放浪しました。
彷徨って彷徨って、そしてようやく見つけた出産場所は、自身の妹である「アステリアの上」でした。
意味が分かりませんよね?
実はレトの妹アステリアはその昔、なんとゼウスに言い寄られ拒否したことがあるのです。
それで気分を害したゼウスによって、大海をさまよう浮島に姿を変えられてしまったのです。
神話チックなお話ですね。
しかしこれが幸い。
浮島は大地とはみなされず、レトは妹である浮島で出産することにしました。
さて「出産」を司るのはヘラの実子である女神エイレイテュイアでした。
レトは分娩に九日九晩苦しみましたが無事双子を出産できました。
どうやら出産の苦しみを知るエイレイテュイアは、母ヘラの目を盗んでレトに協力してくれたという事です。
生まれたアポロンはアステリアに感謝の意を示し、浮島をギリシャ世界の中心に固定。
自身が生まれたこの地を聖地とするために、「デロス」(輝ける島という意味)と名付けました。
そして黄金の弓を取ると、デルポイにある大地母神ガイアの神託所へ行き、守護大蛇ピュトンを倒し、この地で神託を授ける予言の神となりました。
ちなみにあの英雄ヘラクレスに「12の功業」を成すよう告げたのもこのアポロンです。
古代ギリシャの人々にとって、困ったときはアポロンの神殿で神託を伺うというのは割りとポピュラーなイベントです。
こういう所も人気の高さがうかがえますね。
恋多きアポロンのコイバナ
古代ギリシャ人の理想像とも言われるアポロンですが、恋愛に関しては失敗談ばかりです。
月桂樹になった川の神の娘ダフネの場合
「子供が大人の扱うような弓矢を振り回すもんじゃない」
恋のキューピッドと言えばお馴染みの神エロスは、よくアポロンにこう言われ拗ねてました。
そこでギャフンと言わしてやろうとアポロンに金の矢を撃ち、ダフネという娘に鉛の矢を撃ち込みます。
ダフネはアルテミスのお付きのニンフ(妖精)で、大層な美人でした。
- 金の矢で撃たれたアポロンはダフネに恋をします。
- 鉛の矢で撃たれたダフネはアポロンを嫌悪します。
激しい恋慕に駆られたアポロンはダフネに迫りますが、ダフネは自らの身体を月桂樹に変えてまで拒否しました。
ダフネとはギリシャ語で「月桂樹」を意味します。
アポロンは月桂樹にすがりつき泣きわめきましたが、やがて落ち着きを取り戻すと、これ以後、頭に月桂冠を載せることにしたのです。
ヒヤシンスの生まれた訳は
ギリシャに限りませんが、古代ではよくあることとして、たいていの人は男も女もイケちゃう両刀使いでした。
スパルタ南部に住むヒュアキントスは、ペラ王ピエロスと「歴史の女神」クレイオーの子です。
アポロンは快活な少年であるヒュアキントスが気に入り、よく二人でスポーツを楽しんでいました。
しかしある時アポロンの投げた円盤が少年の額に当たり、無念、彼は命を落としてしまいます。
一説によれば、「西風の神」ゼピュロスもこの少年が好きで、嫉妬に駆られてアポロンの投げた円盤を強風で暴れさせた疑惑があります。
ともかく絶命したヒュアキントスのために流したアポロンの涙から、ヒアシンスの花が生まれたのです。
ただ、このヒヤシンスが現在我々の知るヒヤシンスと同種であるかは未確認だそうです。
カラスの体が黒い訳
カラスの身体が黒いのもアポロンのせいです。
もともとカラスは白鳥のように白い体をしていました。
テッサリアに住むコロニスという娘を気に入っていたアポロンですが、仕事が忙しくなかなか会いに行けません。
スマホどころか電話もない時代です。
そこで一羽のカラスを伝言役として遣いに出していました。
このカラスは人語を解し、しゃべることも出来たのです。
ある時いつものようにカラスがコロニスの元へ行くと、庭先で若い男と談笑しているではありませんか。
この不倫現場を早速アポロンに多少盛りつつ伝えると、恋愛下手なアポロンは極端な行動に出てしまいます。
コロニスに金の矢を撃ちこんで殺してしまいました。
別に不倫してたわけではなく、本当にただ世間話をしていただけなのに、娘は事態が飲み込めないまま、
「お腹の中の子だけは、どうぞお助けください」
と言い残し死んでしまいます。
もちろんアポロンの子です。
カッとなって取り返しのつかないことをしてしまったアポロンは、勘違いしたカラスが悪いと責任転嫁。
コロニスの喪に服せ、と体を黒く変えてしまったのです。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
ところで最初に書いた通り、NASAの宇宙計画はアポロ計画と呼ばれました。
何故アポロンが選ばれたのでしょう?
おそらく目指す場所が「月」であったためでしょう。
双子の妹アルテミスは「月の女神」ですものね。
この計画名を付けた人のセンスは抜群ですね。
アポロンが登場する作品としてはやはり神話に強いメガテンシリーズから『ペルソナ2罪』を挙げさせてください。
主人公、周防達也(名前変更可)の初期ペルソナがアポロンでしたね。
古代ギリシャ人の理想像として、完璧な容姿と能力を持ちながら、運のステータスが低いために何事もうまく行かない。
そんなキャラクター像が見えてきました。
ダフネの月桂樹の下りなんかはエロスに対してまさに口は災いの元、といった具合。
人々に神託を授ける予言の神としてはもう少し言っていいことと悪いことを考えるべきかと。
まあそういう部分がまた人気の秘訣かもしれませんね。
それではまた!