物語に欠かせないヒロインの存在。
ヒロインの個性で物語人気が左右される、そんな事もありますよね。
そして古今東西、人気があるのは悲劇のヒロイン。
そんな悲劇のヒロインといえば、それはもう今回取り上げるニンフのことでしょう!
圧倒的に巻き込まれ型のヒロインたちばかりです。
健気な女の子は好きですか?
嫌いな人はいないと思います。
ギリシャ神話にはそんな女の子がいっぱい。
そのほとんどがこの今回のテーマであるニンフたちです。
今回も皆さまの創作の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもニンフとはなんぞや?
ニンフとはギリシャ神話に登場する下級の女神、あるいは精霊、妖精のことです。
ニンフという名は英語読みで、ギリシャ語読みではニュムペー、ないしニュンペー。
「花嫁」「若い娘」などという意味があります。
その名の示す通り、ニンフには若い娘しかいません。
ニンフは娘のみですが、エルフは男性もいればダークエルフなど、悪役もいます。
ニンフにはひとりひとり、それぞれに守護する対象があります。
例えば山や河、植物、または町や国そのもの。
このような地形や自然を守護する者として古代ギリシャでは捉えられていました。
ニンフとは総称であり、守護する対象により名称が異なります。
海ならばネレイス、樹木ならドリュアスなど。
名称については後述します。
ニンフは精霊のように思われがちですが、彼女たちは肉体を持ち、故に神や人間と結ばれることも非常に多いです。
なかなかに創作的に都合のいい存在かもしれませんね。
彼女たちが主人公的に活躍することは残念ながら稀で、多くは巻き込まれ型のヒロイン的立場となります。
そしてほとんどが悲劇に見舞われます。
有名どころとしては月桂樹に姿を変えたダフネ。
冥界をさ迷うことになった吟遊詩人オルフェウスの妻エウリュディケなど。
逆に見初められ大出世したのは海神ポセイドンの妻アムピトリテです。
むしろ彼女の海の一族を後ろ楯にポセイドンは海での影響力を高められたとも言えますがね。
ギリシャ神話全体についてはこちらの記事からどうぞ!
□【ザ・神話オブ神話】5分でわかるギリシャ神話の世界【サーガレビュー第1回】
木になったダフネ
最も有名なニンフの悲劇と言えば、このダフネでしょう。
この話は古代ギリシャ人気No.1太陽神アポロンのやらかしによるエピソードです。
恋のキューピッドでお馴染みのエロスをアポロンがいじりました。
「おい、エロス。弓矢は大人が扱う武器だ。子供のお前が遊び道具にしていいものじゃぁない」
「ムキーッ」
エロスは仕返ししてやろうと、相手を好きになる金の矢をアポロンに、相手を嫌いになる鉛の矢を川で水浴びをしていた河の神の娘、ダフネに撃ち込みました。
するとアポロンはダフネに激しく恋をし、逆にダフネはアポロンを嫌悪して逃げ出します。
しかしアポロンから逃げきることは困難。
ダフネは父に祈り自らの体を月桂樹に変える事でアポロンを拒絶しました。
アポロンは哀しみに沈み、以後、月桂冠を常に頭に被るようになりましたとさ。
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□【アポロン】NASAの宇宙計画の名の由来となった太陽神【ヒーローレビュー第4回】
姿を変える事になるニンフの話はいくつもあります。
他にも主神ゼウスに見初められたため、純潔を護る事が至上命題である月の女神アルテミスのお付きから外されたカリスト。
彼女は更にゼウスの妻ヘラの怒りまで買ってしまい、その姿を熊に変えられてしまいます。
しかも自分とゼウスの間にできた息子に熊ということで狩られてしまう悲劇。
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□【アルテミス】月の女神は純潔を護れと命令する【ヒロインレビュー第6回】
似た話で冥界にあるコキュートスという河のニンフであるメンテは、冥界の王ハデスに惚れられるのですが、ハデスの妻ペルセポネによって雑草に変えられてしまいます。
それこそがみんな大好きチョコミント味のミントなのです。
このようなエピソードが結構あります。
ニンフ悲劇のヒロインすぎる。
振り向いてはいけない黄泉の国
その冥界にまつわるお話。
吟遊詩人オルフェウスの妻は樹木のニンフ、エウリュディケ。
ある日毒蛇に噛まれたエウリュディケは命を落としてしまう。
オルフェウスは妻を迎えに冥界へと下ります。
地獄の番犬ケルベロスを竪琴の演奏で眠らせ、ハデスの元まで辿り着くと、その見事な腕前に感嘆したハデスからエウリュディケを連れて帰っていいと許しを得ることが出来ました。
ただし、地上へ戻る道すがら、決して背後を振り向いてはならないと申し付けられます。
オルフェウスは喜びながら妻と帰路に着きました。
しかし長い道中、次第に不安が込み上げてきます。
後ろを歩く物静かなエウリュディケが本当にちゃんとついてきているだろうか。
不安に負けたオルフェウスはやっぱり後ろを振り返ってしまうんですね。
そうしてエウリュディケは地上へ帰ることが出来ず、永遠に冥界をさ迷うことになりましたとさ。
さまざまなニンフ
ニンフはそれぞれが守護する地形、自然、対象によって専用の呼び名があります。
ここではその中でも特に登場頻度の高くメジャーなものを幾つか挙げてみたいと思います。
また、それらは基本複数形で呼ばれますが、一部単数形も表記させていただきます。
木に住むニンフはドリュアデス。
単数形だとドリアードですが、これが最も有名かもしれませんね。
ゲームなど木の精霊のように扱われることが多いです。
海はネレイデスとオケアニデスの二つの勢力に分かれています。
ネレイスに仕えるニンフとオケアノスに仕えるニンフです。
ちなみにオケアニデスは50人いると明記されていまして、それぞれ楽器の演奏に長けているとか。
反対にネレイスの娘はアムピトリテで、夫はあの海神ポセイドンです。
・山や洞窟はオレアデス。単数形だとオレイアス。
・森はアルセイデス。単数形だとアルセイス。
・林はウレオロイ、またはアウロニアデス。
・谷はナパイアイ。
正直ギリシャ語ってわかりにくいですね。
ニンフはそれぞれ特色があります。
・海のニンフは下半身が魚で楽器の演奏がうまい
・泉のニンフは予知能力を持つ
等々あります。
ニンフは神ではないので不死ではありません。
ただニンフ個人個人に寿命があるのではなく、守護する対象が滅びた時がそのニンフの力尽きる時なのです。
樹木であればその木が枯れた時。
町や国を守護するニンフならその町や国が滅びた時です。
しかし海などといった永遠に近いものを守護するニンフは「ほぼ不死」と言って差し支えないでしょう。
生まれた場所ガチャみたいなもんです。
まとめ
「踊るニンフたち」ポール・シャバス
いかがだったでしょうか。
ニンフたちは総じて純真無垢です。
彼女たちに人を騙すつもりはなく、それ故に彼女らが伝える予言や予知には偽りはない、と見て覚悟するべきでしょう。
またニンフォマニアという言葉があります。
女性側が多くの男性と性を交わす奔放な様を表す言葉なのですが、その言葉の語源はもちろんニンフから来ています。
よくファンタジーの創作において、ヒロイン級の扱いを受けるエルフやエンジェルといった種族がありますが、よりその役目に近い役割を与えられているのはニンフなのではないかと私は思います。
それではまた!
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