【バジリスク】そして蛇から鶏へ【モンスターレビュー第50回】

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その姿を見たものは死ぬ。
リビアの砂漠に棲息する小さな蛇はバジリスク
ギリシャ語で「小さな王」を意味する冠状のトサカを持った恐ろしい怪物だ。

バジリスクはご存知ですか?
数年前にアニメにまでなった忍者マンガがありましたが、それではありません。
冒頭でお伝えしたような、悪魔のような蛇のことです。

このお方、実は古代から中世にかけて名前も姿も変化していきます。
それは今でもお馴染みのモンスターなのですが。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもバジリスクとはなんぞや?

西暦77年、ローマの博物学者こと大プリニウスの著した『博物誌』によれば、

  • アフリカはリビアの東、キレナイカ地方の砂漠に棲息する
  • 頭部に白い王冠のような形をした印がある蛇。
  • 体長24センチメートル、上体を起こして前進する。
  • 藪を枯らし、草を焼き、石を砕く息を吐く。
  • 即死級の毒を持っており、槍で突いてもその槍を伝い持ち手にまで毒が感染する。
  • 名前の由来はギリシャ語で「小さな王」バジリスコス

このように紹介されていました。
体長24センチメートルというので、あまり大きな動物ではないですね。
しかし人間にとっても危険生物ではあります。

バジリスクといえば石化の印象がありますが、元々は「毒」です。
飛ぶ鳥すらも落としたとされるほど強力な毒のブレスを吐き出します。
その規格外の恐ろしさからあのメデューサを思い起こされ、バジリスクも石化(のように見えるほどの即死攻撃)持ち、というイメージが定着しました。

面白い説としては、砂漠が広がるのは石化ブレスを持つバジリスクのせいだとする話もあるとか。

また恐ろしさは誇張され、ブレスどころか邪眼による視線だけで人を死においやるとまでされました

こんな恐ろしいモンスターはどのように生まれてくるのでしょうか?

  • バジリスクは雄鶏が生んだ卵から孵化すると言われます。
  • もしくは鳥の卵を蛇が温めるとバジリスクとして生まれるとされます。
  • もしくは地中に数百年埋もれたワニの卵から生まれるとされます。

人間にはその誕生を止めることは出来そうにないですね。
ちなみにプリニウスの言うバジリスクとは、コブラのことではないか? と言われています。

対バジリスクの対処法


なんとも出会いたくないバジリスクではありますが、意外にも弱点は多いです。

なんと天敵と呼べる動物がいます。
それはイタチです。
イタチの匂いが苦手らしく、イタチの巣穴にバジリスクを放り込むと、イタチは死んでしまいますがバジリスクも死んでしまうそうです。相打ち。

また毒から邪眼による即死攻撃持ちとされたバジリスクですが、こちらも前述のメデューサ同様、視線を反射してやれば自滅してしまいます。

キリスト教圏ではバジリスクは悪魔的扱いであり、彫刻などで水晶の壺を構え戦う騎士の像があったりします。
そしてなんとあのマケドニアの英雄アレクサンドロス大王も、盾に嵌めた鏡で反射してバジリスクを退治したという逸話があるそうです。

また原因は不明ですが、雄鶏の鳴き声が苦手とされます。
「コケコッコー」って叫べば難を逃れられるかもしれませんね。

中世で蛇から鶏に変化


バジリスクは蛇だとお伝えしてきましたが、一説によれば「八本足のトカゲ」であるともされます。

『博物誌』の頃は小さな蛇と言えたバジリスクですが、中世にもなると「メデューサのような石化」や「毒の息から邪眼」といった、逸話がより恐ろしい存在へと誇張されていきます。
ただそうなるとその存在に懐疑的な人物も現れます。

スペインの外交官で詩人でもあるケペードは、なぜそれほど恐ろしい怪物の話が広まるのか疑問に思います。
そんな危険な怪物を目撃した者が生きているはずがないし、死んだのなら伝わることもない」
要するに存在しないものだ、と主張し始めたのです。

さて、バジリスクは文献などで紹介されていったわけですが、イギリスなどでバジリスクは「バジリコック(basilicok)」と表記され、この「cok」から雄鶏が強くイメージされました。

だってそうですよね。
バジリスクが生まれるのに「雄鶏が生んだ卵から」というものや、「弱点に雄鶏の鳴き声」というものがありましたよね。

この辺りの「存在するはずがない」とする主張や、「バジリコックという何やら雄鶏に関する正体不明さ」などが混同し、バジリスクという小さな蛇から架空の新たなモンスターが創造されていきました。

もうおわかりですよね。
それは「コカトリス」という、雄鶏と蛇が合体したかのような「石化」の代名詞的なモンスターのことなのです。

『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』

赤いトサカを持ったヘビ。そのままの名前「とさかへび」は典型的なバジリスクのイメージです。
馬車が手に入るホフマンのいた宿屋のある砂漠でエンカウントします。ちゃんと砂漠ですね。


「とさかへび」というネーミングも実にドラクエ的だけれど、実はドラクエってわりと原典に忠実なデザインがされているんですよね。ブロードソードではなく「はがねのつるぎ」とする辺りが国民的RPGにのしあがった1つの要因でもありますし、オシャレな感じは置いていくのも仕方がない。
「バシリスク」という名称もドラクエ2ですでに使用してますしね。
ドラクエは1と2に神話的モンスター名をだいぶ消費してしまいましたし、逆に今となっては味わい深いとも思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

どっちかというと雑魚モンスター扱いが多いですが、実在したら災害級に報道されること間違いなしな石化モンスターですよね。
そして同じく石化がアイデンティティのメデューサが与えた影響までありました。
さらにこいつから派生するコカトリス。

調べたら調べただけ面倒な奴ですよ。

しかしこうやってモンスターは創造されていくというひとつの例でもありますね。

皆さんの創作に役立つヒントにでもなりましょうか。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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