ギリシャ神話というものがあり、ゼウスという神がいる。
これほど有名なキャラクターもそういないですよね。
けどじゃあゼウスとはどんな神でどんなことをしたのかご存知でしょうか?
今回はギリシャ神話の主人公、全能の神ゼウスをかいつまんでご紹介させていただきます。
ギリシャ神話の入門用にもちょうどいいと思います。
今回も皆様の創作の参考になるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
ギリシャ神話全体についてはこちらの記事からどうぞ!
□【ザ・神話オブ神話】5分でわかるギリシャ神話の世界【サーガレビュー第1回】
そもそもゼウスとはなんぞや?
ゼウスとは、ギリシャ神話における主神であり、多くの神、英雄が登場するエピソード集において、中心となる純然たる主役です。
オリュンポス山の宮殿にて神々の頂点に立つ最高神。
その名は「天空」を表す「dyeus」から来ており、気候、特に雷を司る天空神です。
ローマ神話ではユピテル、英名ジュピターとして、太陽系で1番大きな惑星である木星にその名が付けられています。
ハデス、ポセイドン、ヘスティア、デメテル、ヘラといった神々を兄姉に持つ6人兄弟の末っ子で、父は農耕神クロノス、母は女神レア。
一般的に山羊の皮鎧に白髪白髯、手にはイカヅチを発する神器「雷霆(らいてい)」と知恵を司る鷲を止まらせた姿をしています。
大きな戦を3度指揮しており、武神としての側面がある一方、非常に好色で多くの女性と関係を持ち、多くの子供が英雄として誕生しています。
しかしそんなゼウスも始めから好き放題できる身分ではありませんでした。
むしろ過酷といえる誕生秘話を抱えています。
ゼウス誕生
父であるクロノスは、横暴な初代の王ウラノスの男性器を切り落とし、その座を奪い取りました。
しかしクロノス自身もやがて生まれてくる子に王座を奪われるのではないかと疑心暗鬼に陥ります。
そしてとち狂ったクロノスは、妻のレアが生む子供たちを生まれたその場で丸呑みにしてしまうのです。
それが5度繰り返され、嘆き悲しんだレアはクロノスの母である大地母神ガイアに相談します。
そこで6番目の子供、ゼウスが生まれた時に大きな石を産着にくるんでクロノスに渡したのです。
しっかりと確認せずにその石を呑み込んだクロノスはすっかり安心してしまい、ゼウスは密かにクレタ島のニンフ(妖精)たちによって育てられました。
ティタノマキア ティタン神族との戦い
成長したゼウスは知恵の女神メティスの煎じた嘔吐薬をクロノスに飲ませ、先に丸呑みされたデメテル、ヘスティア、ヘラ、ハデス、ポセイドンを吐き出させます。
しっかりとクロノスの腹の中で成長していた兄姉と協力し、オリュンポス山にてクロノスに反旗を翻します。
対するクロノスは許すまじ、とティタン神族を率いてオトリュス山に布陣しました。
こうしてティタン神族との戦い、「ティタノマキア」が開戦します。
しかし不死である神同士の戦いは10年もの膠着状態に陥ります。
10年も戦局が動かないことでゼウスは祖母である大地母神ガイアの助言に従い、奈落のタルタロスから単眼の巨人サイクロプスと50頭100手の巨人ヘカトンケイルを解放し味方につけます。
彼らは先々代の支配者ウラノスとガイアの子でしたが、その醜い形相のため奈落に幽閉されていたのでした。
意外にも手先が器用で鍛冶技術に長けたサイクロプスにより、オリュンポス勢の装備品が強化されました。
「雷霆」もそのひとつ。
自在に雷を操るこの神器を得てゼウスは無敵の戦闘力を手に入れます。
巨岩を雨のように投げ続けるヘカトンケイルの活躍もあって、ついにこの戦いはゼウスたちの勝利で幕を閉じました。
<関連記事>
□神格レベルから蛮人にまで落ちぶれた! 一つ目巨人サイクロプス【モンスターレビュー第14回】
□100の腕と50の頭! この世に3人しかいない巨人ヘカトンケイル【モンスターレビュー第9回】
無類の女好きゼウス
天界をゼウス、海をポセイドン、地下の冥府をハデスが治め、最高責任者の地位にはゼウスが就くことで安寧がもたらされました。
しかしゼウスにはひとつ、困った性分があったのです。
それは無類の女好きから来る浮気性でした。
古代ギリシャは一夫一婦制で、王であっても後宮やハーレムなどは持たないのが普通でした。
正妻として姉でもある女神ヘラを迎えておきながら、そんなことにはお構いなしに神だろうが妖精だろうが人間だろうが、美女であれば片っ端から手を出すのです。
それも正攻法で口説けないとなれば、動物に化けたり、雨や雲に変じて近付いたりと手段を選びません。
以下は主なゼウスの愛人関係とその子供です。
ザッとご説明させていただきます。
・アレス(軍神。オリュンポス12神のひとり)
・ヘパイストス(鍛冶の神。オリュンポス12神のひとり)
・へべ(青春の女神。ヘラクレス最後の妻)
・エイレイテュイア(出生を司る女神)
・エリス(アレスの双子の妹とする説もあるが、夜の女神ニュクスが単身で生んだとする説もある)
・ペルセポネ(冥界の女王。ハデスの妻)
・ペルセウス(メデューサを退治した)
・ミノス(クレタ島の王。冥界の裁判官)
・ラダマンテュス(楽園エリュシオンの統治者)
・サルペドン(トロイア戦争の英雄)
・ゼトス
・アムピオン
・エパポス(エジプト王)
ゼウスの浮気に対してヘラの嫉妬は凄まじく、相手の女や子供は激しい呪いを受けたり、あるいは殺されたりします。
それに対しゼウスは後ろめたさからか、ヘラを止めることはできず、こっそりと支援や手助けをする程度しかできないようです。
中でも最も憎まれたのが英雄ヘラクレスでしょう。
その名は「ヘラの栄光」という意味ですが、そんな名前を付けるから煽ってるみたいに受け取られたんじゃないですかね。
ちなみにヘラが最も可愛がったのが青春の女神へべでして、最後はヘラクレスにへべを妻に迎えさせることで和解したとあります。
<関連記事>
□【正妻ヘラ】最恐の鬼嫁はジューンブライド【ヒロインレビュー第5回】
□超英雄ヘラクレスの生涯を知っていますか?【ヒーローレビュー第1回】
ガイアの反乱
ギガントマキア ギガンテスとの戦い
このように色に更けるやりたい放題なゼウスに今度は大地母神ガイアがキレます。
ゼウスは打ち負かしたティタン神族に対し苛烈な懲罰を与え続けました。
ティタン神族もガイアの子たちです。
再三にわたる減刑の要望も聞き入れられず、ゼウス自身は日々享楽に更ける。
堪忍袋の緒がキレたガイアは新たなる敵「ギガンテス」を生み出したのです。
下半身が蛇である巨人ギガンテス(複数形。単数形はギガント)には、ある秘密がありました。
「神の攻撃無効化」というチートなスキルです。
一切のダメージを神からは喰らわないという能力ですが、しかしゼウスはこの日のためにあらかじめ英雄を育てていました。
ヘラクレスです。
無駄に女遊びをしていたのではありません。
せっせと奥の手をこさえていたのです。まあ、後付けぽいですが。
人間であるヘラクレスの攻撃は有効で、ギガンテスはあえなく敗れ去ります。
しかしガイアも諦めません。
最終手段として、自ら奈落のタルタロスそのものと交わることで最凶の怪物テュポーンを生み出したのです。
<関連記事>
□【テュポーン】ギリシャ神話の最凶ラスボス【モンスターレビュー第59回】
テュポーンはタイフーン(typhoon)、いわゆる台風の語源となった存在。
そのおまりの恐ろしさにオリュンポスの神々も動物の姿を借りて遠くエジプトまで逃げ出します。
だがゼウスはひとり踏みとどまり、テュポーンと戦いました。
激しい戦いではありましたが、無念、ゼウスは手足の腱を奪われ身動きできないままデルポイ近くのコリュキオン洞窟に閉じ込められてしまいます。
そのゼウスを救ったのは神々の伝令役ヘルメスでした。
牧神パンと共に腱を取り戻しゼウスを救出します。
そこが転機でした。
一転、攻勢に出るとゼウスの雷がテュポーンの炎に競り勝ちます。
そうしてテュポーンをシチリア島のエトナ火山に封じる形で戦いは終わりました。
さすがのガイアもこれ以後は大人しくなり、ゼウスの治世は磐石のものとなったのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
一定の年代より上の世代にとって、ゼウスはなかなかに馴染みのある神だと思うんです。
ビックリマンですね。
1個30円(当時)のチョコ菓子についてくるおまけシール。
その第1弾のヘッドがスーパーゼウス。
まさしく今回ご紹介したゼウスがモデルでしたね。
まあビックリマンは天使vs.悪魔がテーマであるためにスーパーゼウスも天使という括りにはなりますが。
どうでしょう。
(西洋的な)神といえば一般的なゼウスのデザインを思い浮かべるのがセオリーとは思えませんか?
それだけ普遍的な、定番を生み出した偉大な存在でもあると思います。
ギリシャ神話はローマ帝国によりキリスト教が国教と定められた後、千年近く忘れ去られていた文化です。
それが中世のルネッサンス期に大復活し、日本に入ってきたのは20世紀初頭という。
長い人類の歴史から見たらほんのつい最近じゃないですか。
それでこれだけ浸透しているゼウスというキャラクター。
創作を志すならこれぐらい強烈なキャラを生み出したいものですよね。
それではまた!
ただし内容はアレンジの加わった英雄ペルセウスの物語ですがね。