【トロイア戦争開戦】西洋文学最古参叙事詩【サーガレビュー第3回】

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ギリシャ神話終盤の大イベント。

トロイア戦争とは、スパルタを盟主としたギリシャ連合vs小アジアのトロイア王国が、10年の歳月を明け暮れた戦争の事です。

最後は有名な「トロイの木馬」作戦にてギリシャ側の勝利に終わります。

今回はこのトロイア戦争の一連の流れを大まかに記したいと思います。

トロイア戦争以前の神話についてはこちら。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもトロイア戦争は史実なのか?


もちろん、神々が加担した部分は元ネタのある創作でありましょう。

ギリシャ神話の主な資料となる紀元前8世紀の詩人ホメロスの著書『イリアス』は「トロイア戦争」を描いた叙事詩です。
しかしながらこの『イリアス』は、戦争の終盤、主に英雄アキレウスの活躍を描いたものでしかなく、彼の死や戦争終結に関する部分以前で終わってしまいます。

ではアキレウス没後から先の物語はというと、これは各種の口承を元に紀元後3世紀あたり、小アジアはスミュルナの詩人クイントゥスがまとめた「トロイア戦記」によります。

ギリシャ神話は紀元前2000年ごろクルタ島でミノス文明が興り、前1400年ごろにはミュケナイ人によるミュケナイ文明が興り、と、神々の物語はおおよそこの間の出来事を原型として書かれたのではないかとされます。
続く前1250年ごろにトロイア戦争と呼ばれる戦争が実際にあったのだと思われます。

もしくは1700年から1200年にかけて繰り返し起きた様々な戦争をまとめた説、または完全なる架空戦記説もあるにはあります。

神話ではトロイア戦争は増えすぎた人間を間引きするために、ゼウスが仕組んだ戦争という事になっています。
事実、前1200年ごろにはミュケナイ文明は崩壊しています。
ゼウスの目論見は達成されたと言えましょう。

さて、実際この戦争は本当にあったのでしょうか?
この都市の実在を信じた実業家にして考古学者ハインリヒ・シュリーマンは、事業で成功を収めると40代で私財を投じ、トロイアの遺跡発掘に乗り出します。
その結果、ホメロスの伝えたトロイアよりも更に1000年も古い都市部を発見。
その後も発掘は継続され、9層になる都市遺構が発見されました。
その中の上層第7市こそ、ホメロスの伝えたトロイアであると考えられ、実存が認められたのです。

戦争が始まるまで

ゼウスの思惑


人類は死滅した第三世代「青銅の種族の時代」を経て、第四世代「英雄の種族の時代」も隆盛を極めていた。
パンドラにより、第三世代は終焉を迎え、英雄が多く活躍した第四世代が活況を迎えていたのだ。

しかしゼウスは憂慮していた。

この英雄という種族の時代も人が増えすぎた。
このまま人々が増え続けては重みで大地(ガイア)も沈んでしまう。

そこでゼウスの2番目の妻であり、今は離婚して秘書として働く、法と正義の女神テミスと相談し一計を案じます。
それは海の女神テティスとプティアの王ペレウスという、女神と人間の結婚でした。

そもテティスは大変美しく、また優しい性格の女神で、ゼウスやポセイドンも求愛していた程ですが、「彼女の生む子は必ず父を越える」という予言のため、誰もが躊躇して手を出せずにいました。
しかしいずれは誰かの子を生む。
もしそれが名のある神の子であったらば、神界の勢力図は一変してしまう恐れがある。
それを未然に防ぐため、ゼウスはあえて強権をふるい、テティスを人間と結ばせることにしたのです。

そしてそれを人間の「間引き」にも利用しようと考えました。

結婚式には大勢の神々が招待されました。
盛大に催される披露宴。
神話に語り継がれる立派な結婚式です。
しかしその式にひとりだけ、呼ばれなかった人がいます。
争いと不和の女神エリスでした。

エリスは恥をかかされたと知り、式場をメチャクチャにしてやろうと画策します。
そして外から会場に一文を添えた「黄金の林檎」を投げ入れたのです。

もっとも美しい者へ

これを目にした三人の女神が自分の事だと言い争いを始めます。
いわゆる三美神というもので、結婚の女神ヘラ知恵と戦の女神アテナ愛と美の女神アフロディーテです。

三人の壮絶な喧嘩により式はメチャクチャ。
誰が一番美しいか決めてください、とゼウスに詰め寄ります。
そこでゼウスは言いました。

トロイアの王子パリスに決めてもらおう

自身への矛先をそらし、全てパリスに丸投げしたのです。
三美神はこぞってトロイアへと向かいました。

そもそもこの結婚式を企てたのはゼウスとテミスです。
招待客の選別も、パリス王子の指名もゼウスです。
ここまで彼の計画通りに話しは進んでいます。

カッサンドラの予言


さて一方、パリス王子のいるトロイアは、小アジアに位置する堅牢な城塞都市でした。

この国を治める老王プリアモスには長男のヘクトル、次男のパリス、長女のカッサンドラがいます。
このカッサンドラはまた美しいと評判で、トロイアの守護神である太陽神アポロンは彼女をとても気に入っていました。
ある時アポロンは彼女を喜ばせようと思い、なんと「予知能力」を授けてやろうと言い出します。

カッサンドラにアポロンの光が射します。

ほら、どうだい? 素敵な能力だろう? 喜んでくれたかい

しかし、能力を授かった瞬間、カッサンドラの脳裏には、自分に失望したアポロンに見捨てられる、落ちぶれた自分の姿が見えてしまいました。

イヤです!

瞬間的に拒否の言葉を発したことでアボロンは気分を害してしまい、彼女を罰します。

なんと恩知らずな。罰として、お前の言うことはもう誰も信じないようにしてやる!

ザ・理不尽!
断っておきますが、アボロンは古代ギリシャ人気No.1のスーパースターですので。

こうして無理やり授かった能力により、カッサンドラには様々な予知が見えます。
危険を回避するよう助言を与えたりもしたでしょう。
しかし誰も彼女の言葉を真に受けません。
アポロンがそういう罰を与えたからです。
スパルタへ外交に赴くというパリスにも「行ってはならない」と伝えますが聞いてはくれず。
それがトロイア滅亡の引き金になることを知りつつも、彼女はただじっと待つことしか出来ないのです。

パリスの審判


さて、パリスの元にお騒がせ、三美神が到着します。
誰が一番美しいか、自分を選ばせようと各々がパリスに好条件を言い渡します。

ヘラは「地上で最高の権力を与えよう」と言います。
アテナは「どんな戦にも負けない勇者にしよう」と言います。
そしてアフロディーテは「地上で1番の美女を与えよう」と言いました。

あなたがパリスならどれを選びますか?
パリスは回りくどいのがイヤだったんでしょうね。
手っ取り早く「美女」が欲しかったんです。
かくして選ばれたのはアフロディーテでした。

喜んだアフロディーテは約束通り、パリスに美女を与えるため、ギリシャはスパルタ国へと彼を誘います。

アフロディーテがパリスにあげようと決めたのは、スパルタの王妃ヘレネでした。

ヘレネは白鳥に化けたゼウスがスパルタの王妃レダと交わり生まれた卵から誕生したと言う逸話があります。
ゼウスが浮気して生ませたのです。
ですがレダの旦那である国王テュンダレオスはしっかりとヘレネを養育しました。
ゼウスの子だとは知らなかったのか、ゼウスの子だから大切にしたのか。

やがて成長したヘレネの美しさはまさに地上いちと謳われるほどでした。
求婚者は絶えず、誰が選ばれても殺気だつ事は明らか。
そこでその中のひとり、イタケの王オデュッセウスが提案します。

ヘレネが誰を選んでも恨みっこなしだ。選ばれた者を祝福し、そいつが困った時には諸君、ここにいる全員が手助けすることを誓え。出来ない者は資格がない。すぐにこの場を去るのだ

さすがオデュッセウスですね。後の主人公的存在です。
この提案にみな納得し、誓いを立てます。
そしてヘレネが選んだのは、ミュケナイ国の王弟メネラオスでした。
メネラオスはめでたくヘレネと結婚し、スパルタへ婿養子に入り王となります。

そうした経緯の中でパリスがやって来ました。
アフロディーテは愛の神エロスの金の矢でヘレネを射ちます。
パリスに惚れさせたのです。

僕と来てくれるね? ヘレネ
はい

そしてパリスは颯爽とヘレネをトロイアへと連れ去ってしまったのでした。

これにキレたのはメネラオスです。当然でしょうけど。
兄であるミュケナイの王アガメムノンに助けを求めます。
元々トロイアを狙っていたアガメムノンは、オデュッセウスの提案した誓いをたてに、ギリシャ中に出兵を促します。
こうしてアガメムノンを総大将とした大ギリシャ連合軍がトロイア王国へ、さらわれた王妃を取り戻すための大遠征を開始するのです。

ゼウスの思惑などとは知りもせずに。

エチエンヌ・ジョラ 「パリスの審判」

英雄集結

行きたくないオデュッセウス

アガメムノンの大号令で、多くのギリシャ兵(推定五万)が集まりました。
ですが中には出兵を逃れようとする者もいました。
ヘレネの誓いを提案したオデュッセウスもそのひとりです。

彼は妻ペネロペとの間に子を授かったばかり。
間抜けな男が妻を寝取られたからといって、遠征なんてしたくない
というのが彼の本音でした。

そこで彼が考えた策が、迎えに現れた使者の前で狂人のふりをして逃れるという
彼、この物語終盤の主人公なんですけどね……。

結局そんな事で誤魔化せる訳もなく、渋々参戦することに。
誤魔化そうとした罰でしょうか。
もうひとり、参戦が遅れてる者を迎えに行くよう言いつけられます。

それがホメロスの『イリアス』における主人公、英雄アキレウスです。

女装したアキレウス


アキレウスとは、冒頭で話題にした「海の女神」テティスと英雄ペレウスの子です。
えっと、何年経ってるんだろう?

アキレウスは見事に「無敵の英雄」として育っていました。
実はその強さには秘密があります。
自らは不死なれど、不死ではない我が子の身を案じた女神テティスは、アキレウスが幼少の折り、冥界に流れるステュクス川に浸からせる事で、身体は鎧のように頑強、不死身の肉体を持つ戦士となれたのです。

だが予言の力を持つテティスには不安がありました。

この子は戦場で命を落とす

なのでテティスはアキレウスをスキュロス島のリュコメデス王の元で、女装させ女官として仕えさせることで出兵を逃れさせようとしました。

そこへオデュッセウスが現れます。
見事な女装でオデュッセウスには女官たちの誰がアキレウスか見分けがつきません。
そこで旅の商人に扮し女官たちに向けて商売の真似事を始めます。
みなが装身具や化粧品に目を奪われる中、ひとりだけこっそり片隅に置かれた武具に興味津々の大女がいました。

「アキレウスだな?」
「見事だ。俺の正体を見破るとは」
「…………ここにいても名は残せんぞ」
「ああ。行こう」

こうしてアキレウスの参戦も決まりました。

ピエトロ・パオリーニ 「リュコメデスの娘たちの間のアキレウス」 (1625-1630)

二分した神々


この戦争はオリュンポスの神々も両軍に分かれて参戦します。

まずトロイア王国に味方したのはアフロディーテです。
彼女はパリスにイイ思いをさせてもらったので当然でしょう。
そしてそのアフロディーテの愛人である軍神アレス
さらにトロイアの元々の守護神アポロンに、双子の妹アルテミスです。

対するギリシャ側にはまずパリスに選ばれず、いまだに根に持っているヘラとアテナ。
鍛冶の神ヘパイストスも、妻であるアフロディーテの愛人に居座るアレスを嫌いギリシャ側に。
それから先代のトロイア王ラオメドンに城壁建設を手助けしたのに報酬が未払いのままだという理由で恨みを持つ海神ポセイドンがつきます。

ゼウスは中立です。

こうしてトロイア王国の地に両軍が勢揃いしました。

紀元前1250年。
ギリシャ神話クライマックスのトロイア戦争が始まります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

次回、【トロイア戦争終戦】の記事予告。

・大将と英雄の反目
・親友の死
・ヘクトルvsアキレウス
・アキレウス快進撃
・アキレス腱
・トロイの木馬

そしてそれぞれのその後
・アガメムノン
・カッサンドラ
・ヘレネ
・アイネイアス
・オデュッセウス

もちろん英雄アキレウスの活躍もご紹介したいと思います。

<後編はこちらからどうぞ>

賛否ありますがこちらの映画が基礎知識を持って観ると面白いと思います。
トロイア戦争を描いた『イリアス』では、主にアキレウスの活躍を中心に、10年続いた戦争の終盤、49日間の攻防が描かれています。

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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