海の女神テティスはトロイア戦争の英雄アキレウスの母です。
そしてそのトロイア戦争を勃発させた原因のひとりでもあります。
しかしこのテティス、ザ・女神、とでも言わんばかりの女神オブ女神かもしれません。
言いすぎたかも。
今回も皆さまの創作の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもテティスとはなんぞや?
テティスとはギリシャ神話における海の女神、あるいは海のニンフである。
変身能力や予言の力を持つとされます。
テティスは海神ネレウスの娘とされ、女神であったり、ニンフであったりと記述がバラけます。
基本は女神であると思われますが。
大変心優しい女神で、例えば「醜い」という理由でヘラに海に投げ捨てられた幼子、後の鍛冶の神ヘパイストスを保護し育てたり、ポセイドンやアテナ等に反乱を受けピンチに陥ったゼウスに唯一味方に付き助けたり。
正直テティスの悪いエピソードが聞こえてきません。
しかも大変美しい女神らしく、ゼウスだけでなくポセイドンからも求愛されていたとか。
しかしテティスにはある予言が付きまとっていました。
テティスの子は父の地位を脅かす存在となる。
これを聞きゼウスもポセイドンも手を引きました。
しかしもし下手に力のある神がテティスに子を生ませたらゼウスを脅かす存在となるやもしれぬ。
そこでゼウスはテティスに人間と結婚することを勧めます。
相手はギリシャ中の英雄が乗り込んだアルゴ船の勇者のひとり、ペレウスでした。
はじめ人間との結婚を渋ったテティスでしたが、乗り気なペレウスの熱意にほだされ承知することに。
その結婚式は盛大に行われましたが、ただひとり招待されなかった不和の女神エリスにより式はメチャクチャにされてしまいます。
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それでもテティスとペレウスの間に無事子供も生まれ、その子はアキレウスと名付けられました。
英雄になることを約束された子の誕生です。
最大の弱点を指す
生まれた元気な赤子はアキレウス。英雄として育ちます。
しかし予言の力を持つテティスは不吉な想いに駆られます。
「この子は戦争で命を落とす」
それを防ぐため、テティスは赤ん坊のアキレウスを連れ、ハデスの治める冥界へと向かいます。
そして五本の川のひとつ、ステュクス川にアキレウスの全身を浸けたのです。
すると全身は鎧のように頑強となり、アキレウスは不死身の肉体を手に入れたのです。
それでも不安が拭いきれないテティスは、英雄として育ったアキレウスを戦場へ出したがりません。
トロイアとの戦争のため、ギリシャ中の英雄が呼び集められますが、アキレウスは一向に現れず、探しても見つからないのです。
それもそのはず。
アキレウスはテティスの命でスキュロス島のリュコメデス王の元で女装して女官として過ごしていたのです。
しかしやはりアキレウスは英雄。
戦場への想いは強く、後れ馳せながらトロイア戦争へと参戦しました。
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10年に及ぶこの戦はギリシャとトロイアに対し神々も両軍に分かれ支援していました。
ただしゼウスだけは中立を保っています。
ある時テティスはゼウスに頼みごとをします。
「ゼウス様。少しばかりトロイアにお味方していただけませんか」
「それではギリシャが劣勢となるぞ」
「それでよいのです。そうなればギリシャの兵たちもアキレウスの存在の大きさを噛み締めることでしょう」
実は一時期アキレウスはギリシャの総大将アガメムノンといさかいを起こし、戦争をサボっていたのです。
そんなときにギリシャが劣勢となればアキレウス待望論の必要性が増す。
そういう親心だったのです。
結局その後戦線に復帰したアキレウスの活躍でギリシャ側に勝利が傾きますが、アキレウス自身は敵の放った矢を踵(かかと)に受け、絶命します。
実は全身不死身のアキレウスでしたが、唯一、足の踵だけは違ったのです。
何故ならテティスは赤子をステュクス川に浸ける際、踵を掴んでいたからです。
でないと溺れたり流されたりしちゃいますからね。
この事から物事の「弱点」を指し示す言葉として、「アキレス腱」の語源となりました。
まとめ
・結婚式にエリスを呼ばなかったため、結果的にトロイア戦争が始まることになった
いかがだったでしょうか。
テティスは美しく、また保護者としての面が強い優しい女神です。
ヘパイストスを保護したこともそうですが、アキレウスに対する過保護な面もまた印象が強く、海の女神らしい「母」の面を全面に出した女神かもしれません。
しかし時系列はどうなっているのか?
実はテティスの結婚式をエリスがぶち壊したことで、アフロディーテがトロイアの王子パリスに美女ヘレネを与える流れになります。
その結果10年に及ぶトロイア戦争が勃発するのですが、パリスの兄ヘクトールとライバル関係になるのがアキレウスなんです。
アキレウスいつ生まれてるんですかね?
結婚式当時すでに10歳ぐらいなんでしょうか?
それとも戦争が始まるまで、パリス王子がアフロディーテを選んでからも長い長い時間が立っているのか?
この辺はアキレウス本人の記事を作ることでしっかりリサーチしてみたいと思います。
それではまた!