【トロイア戦争終戦】誰も勝者はいない【サーガレビュー第4回】

ギリシャ神話終盤の大イベントであるトロイア戦争の流れです。
前編【トロイア戦争開戦】では英雄が集結するまでをご紹介させていただきました。

<前編の記事はこちら>
【トロイア戦争開戦】西洋文学最古参叙事詩【サーガレビュー第3回】

今回はいざ決戦です。
特に英雄アキレウスの戦績に焦点をあて、全体をなぞっていきたいと思います。

是非最後までお付き合いくださいませ。

目次

嫁を生贄にされた


総大将アガメムノンの元、トロイアへ向けて一千を越える大船団の準備が整っても、風が止み、なかなか出港できずにいました。

そこで予言者カルカスの受けた神託は、アガメムノンの娘、イピゲネイアを女神アルテミス生け贄として捧げる事でした。
そこで娘に結婚式をさせると偽り、婿としてアキレウスも呼び出します。

娘を嫁にくれるというので、いそいそと出掛けてみれば、なんと実は結婚は嘘。
生け贄の儀式が始まってしまうのです。
イピゲネイアの母であるクリュタイムネストラは止めるよう懇願し、アキレウスも自分の名を利用されたことでイイ気がしません。

結局娘は生け贄にされ、見事に風が吹き、船は出航されました。

<関連記事>
【王女イピゲネイア】生け贄にされた花嫁【ヒロインレビュー第19回】

捕虜の娘の奪い合い


トロイアへ上陸したギリシャ軍は海辺に野営地を建設します。
そしてトロイア城下に広がるスカマンドロス平原での戦いに明け暮れるのです。

そして10年の月日が流れます。

この間ギリシャ軍の侵攻により周辺の国々は侵略され、食料や家畜、金や女が略奪されていました。
そしてこの事でまたアガメムノンとアキレウスの間に溝が生まれます

ホメロスの『イリアス』はここから幕を開けます。

トロイアには太陽神アポロンを奉る神殿があります。
その神殿ももちろんギリシャ軍の略奪対象でした。
アガメムノンは神官の娘クリュセイスを捕らえ、自らの戦利品としていました。
身代金を払うという父親も追い返し、この暴挙にトロイアの守護神アポロンは怒り罰を下します。

ギリシャ軍の陣営に疫病が蔓延したのです。

予言者カルカスの進言でアガメムノンは渋々クリュセイスを父親に返します。
そしてここでまた違った暴挙を見せてくれます。
代わりにアキレウスが捕虜としていた同じく神官の娘プリセイスを強引に奪い取ってしまったのです。
この理不尽に愛想が尽きたアキレウスはこの後戦場へ出ることをボイコットしてしまいます。

結果、ギリシャは大幅な戦力ダウン、兵の士気低下と連敗を喫し始めます

実はこの時アキレウスの母である海の女神テティスゼウスにあるお願いをしていました。
ゼウスはこの戦争では中立の立場を表明していたのだが、トロイアに暫く加担して欲しいと頼んだのです。
ギリシャがやられればやられるほど、アキレウスの存在が強く求められる。
アガメムノンにそれをわからせるためでした。

親友のパトロクロス


トロイアは老王プリアモスの元、長男のヘクトル王子が獅子奮迅の活躍を見せ、連勝を重ねていく。

戦争のきっかけとなったパリス王子は残念ながら戦いに関しては素人で、勇気も技量も伴っていなかった。
ヘレネの元夫メネラオスとの一騎討ちもしたが逃げ帰ってきた程です。

それでもギリシャは危機的状況に追い込まれており、ついにアガメムノンは非を認め、アキレウスに謝罪と金銀の贈り物を送りました。

しかし一度へそを曲げたアキレウスはなかなか戦線に復帰することはなく、その間にもギリシャ軍は死傷者の数を増やしていきました。
この窮状に立ち上がった若者がいた。
アキレウスの親友パトロクロスである。

パトロクロスは普段アキレウスが身に付けている鎧冑を装備して、兵を率い前線へと向かった。

遠目にアキレウスが戻ったと知れ渡ると味方からは喝采が、敵からは畏怖の叫びが広がる。
パトロクロスの狙い通り、浮き足だったトロイア軍に対し、士気の回復したギリシャ軍が猛追を開始。
戦局が一気にひっくり返ろうとしていた。

だが、そのパトロクロスの前に立ちはだかった者がいる。
トロイアのヘクトル王子である。
ヘクトルはパトロクロスをアキレウスだと思い、一騎討ちに出たのだ。
ヘクトルはトロイア最強の勇者。
しかもアポロンの庇護を受けている。
若いパトロクロスでは相手にならなかった。

彼は一撃で敗れ、絶命してしまったのだった。

ヘクトルVSアキレウス


親友パトロクロスの死はすぐにアキレウスにも伝わった。
彼は意固地になっていた自分を責め、仇討ちに出る。
久方ぶりのアキレウス参戦。
この時のため、テティスが鍛冶の神ヘパイストスに頼み造らせた新しい武具に身を包み、今度こそ本物の英雄が戦場に現れたのだ。

するとまたしても形成が逆転。
今まで押していたトロイア軍がアキレウスを恐れ、逃げ出してしまった。
次々と城内へと撤退するトロイアの兵たち。
そして城門が固く閉ざされた。

そこにただひとり、踏みとどまる者がいた。

ヘクトール!
アキレウスッ

ヘクトルが、アキレウスが、お互いの姿を認め戦意を高める。
両軍の最強同士による一騎討ちである。

正直に言えば、ここまでトロイアがギリシャの攻撃を凌いでこれたのはこのヘクトルに依るところが大きい。
彼は神官や王が神にすがるのとは違い、現実的観点から物事を見極め、作戦を立案、実行していた。
そのため兵たちの信頼も厚く、聡明なこの勇者を慕う者は多かった。

後世、中世ヨーロッパにおいて、「九偉人」のひとりに数えられ、マケドニアのアレクサンドロスや、ローマのカエサルと並び称された程です。

ちなみにフランスのトランプでは◆Jのモデルとされています。
フランスのトランプは絵札全てモデルの人物が設定されてます。さらにフランスではジャック(J)はvulets(V)と表記され、意味は同じく従者です。

二人の戦いは苛烈を極めたが、ついに決着します。
ゼウスが二人の命を「運命の秤」にかけると、ヘクトルの方が下がりました。
その瞬間アキレウスの槍がヘクトルを貫きます。

勝敗が決するとアキレウスはヘクトルの亡骸を戦車の後ろに繋ぎ、辺り一帯引き摺りながら凱旋します。
ヘクトルの父母、妻、そしてトロイアの兵士から民に至るまで、胸が張り裂けんばかり嘆き悲しみました。

ヘクトルの屍はそのまま幾日もアキレウスの陣地に放置されています。
ある晩、アキレウスの陣屋にひとりの老人が訪れました。
身分を隠し、トロイアの老王プリアモスがヘクトルの亡骸を返して欲しいとやって来たのです。
ひざまづき、アキレウスの手に口付けをします。
息子を殺した相手の手にキスをする。
これ程の屈辱があろうか。
アキレウスはプリアモスのこの行動に心を打たれ、遺体を返すと共に葬儀の行われる12日間停戦を約束したのです。

ここでホメロスの『イリアス』は終わります。



続くアキレウスの快進撃


しかしトロイア戦争はまだ続きます。

ヘクトル亡きあとトロイアにはもう戦う術はないかと思われました。
しかし援軍が訪れます。

アマゾン(アマゾネス)の女王ペンテシレイアが一軍を率いトロイアに加勢に現れたのです。
よもやの援軍に浮き足立つギリシャ軍でしたが、アキレウスの手によってペンテシレイアは討たれます。
ただアキレウスもこの女王を気に入ってしまったようで、自らの手で殺してしまった事を深く後悔しました。

このペンテシレイアとアキレウスの恋模様を描いた戯曲『ペンテジレーア』がドイツの劇作家ハインリヒ・フォン・クライストにより発表されています。
スピンオフ的なね。

アマゾン軍を退けても次にエチオピア勢を率いたメムノンが現れます。
彼の母は暁の女神エオス。
大暴れするものの、これまたアキレウスに討たれてしまいました。

唯一の弱点、アキレス腱


こうしていよいよトロイア陥落に現実味を帯始めたころ。
トロイアのスカイアイ門までアキレウスが攻め入っていた。
そのアキレウスに向かい、アポロンの庇護を受けたパリスの射った矢がかかとに命中!
それでアキレウスは倒れてしまったのだ。

アキレウス唯一の弱点はかかと。

母テティスがアキレウスに不死身の肉体を与えるため、冥界のステュクス川に浸けたとき、かかとを持って水中に入れていたのだ。
その為かかとだけが濡れなかった。

もちろんアキレス腱の語源なのは言うまでもありませんね。

ヘクトル同様、アキレウスの葬儀の間(17日間)も停戦となりました。

トロイの木馬作戦


両軍ともにエースを失い、そしてヘレネを寝取ったパリスもこの世を去る。
ヘラクレスの矢という神器を持った、ピロクテテスという者にやられたのだ。

泥沼化していく(していた?)戦争に決着をつけようと、ギリシャ軍のオデュッセウスが一計を講じます。

それが「トロイの木馬」。

ある朝、ギリシャ軍が陣地を引き払い撤収してしまいます。
海岸線には巨大な木馬だけが残されていた。

故国への無事帰還を祈念して。女神アテナに捧ぐ

その一文を見てトロイアは戦争の勝利を喜んだ。
しかしこれは罠だ。
それを見抜いたのは二人。

神官のラオコオンは木馬はギリシャの奸計であると注意するも、突然海から大蛇が現れ、ラオコオンと二人の息子を絞め殺してしまった。

そしてもうひとり、予知能力を持ったカッサンドラも木馬を城内に入れてはいけないと警告する。
しかしアポロンの罰を受けている彼女の言葉は誰の耳にも届かない。

こうして戦勝祝いに木馬が城内に運び込まれた。

勝利の美酒に酔いしれたトロイア。
10年かかった戦争が、今日勝利で終わったのだ。
飲む酒もさぞかし旨かったことでしょう。
ものの見事に国中が寝静まったころ、木馬の中からオデュッセウス率いる50人のギリシャ兵が現れる
難攻不落のトロイアの城門が内側から開けられ、撤退したと見せかけていたギリシャ軍がそれを合図になだれ込んでくる。

寝込みを襲われたトロイアはあっという間に陥落してしまったのだ。

終戦。それぞれのその後


トロイアを攻略したギリシャは莫大な戦利品を獲得。
意気揚々と故国へ帰路に着いた。
しかしその勝利は空しいもの。
大半の者は航海の途中で難破したりを遭難が相次ぎ、故郷の大地を踏むことが出来ずに終わった。

オデュッセウス

特にトロイの木馬を発案したオデュッセウスは、その後10年も放浪することになる。
その間、巨人や怪物、魔女に襲われながら故郷を目指す、もうひとつのサーガの主人公となる。
ホメロスの『オデュッセイア』とはその物語である。
<関連記事>
【オデュッセウス】ギリシャ神話最後の英雄【ヒーローレビュー第9回】

アガメムノン

総大将アガメムノンにも悲劇が待っている。
彼はカッサンドラを戦利品としてミュケナイに持ち帰った。
カッサンドラは「自分を連れて帰れば二人とも死ぬ運命にある」と言ったが、もちろん聞き入れられることはない。
そうして国へ戻った途端、待ち構えていた妻のクリュタイムネストラとその愛人、アイギストスにより、二人揃って暗殺されてしまった。

アンドロマケ

戦利品として持ち帰られた者としては、ヘクトルの妻アンドロマケもいる。
彼女を持ち帰ったのはなんとアキレウスの息子ネオプトレモス
色々あって彼の子孫にはあのアレクサンドロス大王がいることになる。
よってアレクサンドロス大王はアキレウスの血筋ということになります。
神話としては、ですよ。

ヘレネ

戦争のきっかけとなった美女ヘレネはどうしたでしょう?
ヘレネは元夫でアガメムノンの弟であるメネラオスに連れられスパルタへと戻ります。
で、王妃として末永く安寧に暮らしました
メネラオスはヘレネの美しさに抗えず、結局全部水に流しちゃったみたいです。

アイネイアス

そして最後にもうひとり。
彼の名はアイネイアス。
愛と美の女神アフロディーテの子で、トロイアの若者です。
彼は難民を連れ落城するトロイアから脱出。
放浪の末に漂着した地で、王の娘と結ばれることに。
時は流れ、彼の子孫として狼に育てられる双子が誕生する。
ロムルスとレムス。
やがて彼らはローマを建国することとなるのです

ちなみにこの話しはギリシャ神話ではなく、ローマ神話の区分になります。
よって、正しくはアフロディーテではなく、ウェヌス(英名ヴィーナス)ということになります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

この戦争は神話の出来事とされていましたが、実際にモデルとなった戦争があったのだろうと言われています。
神話では増えすぎた人間を減らそうと画策したゼウス、とされていますが、事実、この戦争の数十年後にはミュケナイ文明も崩壊し、ゼウスの思惑通りとなりました。

ギリシャ神話的にはこの後、エピローグ的にオデュッセウスの恋と怪物退治の冒険物語『オデュッセイア』をもって、一応の終劇となります。
<関連記事>
【オデュッセウス】ギリシャ神話最後の英雄【ヒーローレビュー第9回】

そこでも有名モンスターや有名なエピソードがありますので、ぜひご覧くださいませ。

それではまた!

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この記事を書いた人

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