赤子をさらい食べてしまう。
口許を鮮血で赤く染める美女!
しかもよく見ると下半身は大蛇のそれ!
美しくも恐ろしいこの女怪こそがラミア。
しかし覚えておいてください。
美しい女の怪物は、必ず悲しい過去を持っているのだということを。
もちろん、このラミアもね。
悲しいことにこのラミア、最初から詰んでいたのです。
ファンタジー系のゲームではメジャー級なモンスターがこのラミアです。
大抵の作品では物語中盤にエンカウントする雑魚モンスター的な扱いで、バージョン違いも多く見られますね。
しかしこのラミア、多くの要素を併せ持つため、単にラミアという個体だけでなく、吸血鬼や夢魔といった特性も与えられた多才なモンスターなのです。
その辺を踏まえて、今日も一緒に創作ネタを学んでいきましょう!
そもそもラミアとはなんぞや?
ラミア、あるいはレイミアとは「貪欲な」という意味のラミュロスという言葉が語源のようです。
美しい女の上半身に大蛇の下半身。
まれに猫と牛の足を持つともいわれます。こっちはだいぶマイナーでしょうけどね。
・相手を誘惑し精を搾り取る
・目玉が取り外せる!
なんとも恐ろしい怪物ですね。
ラミアは元々はリビュアという国の女王でした。
今で言うリビアですかね。
近くには地中海を挟んでギリシャがあります。
そこには我らが全能の神ゼウスが居られます。
そう、ラミアもまたギリシャ神話の怪物なのです。
ギリシャ神話全体についてはこちらの記事からどうぞ!
□【ザ・神話オブ神話】5分でわかるギリシャ神話の世界【サーガレビュー第1回】
ラミアの生まれた訳
美しい女がいると知れば見境ないゼウスの事。
ラミアもしっかりと愛人として、多くの子をもうけることとなりました。
全能の神ゼウスから求愛されて断れる女はそうはいないでしょう。
拒絶したら報復されるかもしれませんしね。
しかし受け入れても報われないのがギリシャ神話です。
ゼウスの正妻である女神ヘラは嫉妬心の強い女性です。
ゼウスの愛人であるラミアを快く思わず、彼女に復讐をします。
この復讐が色々諸説あるのでかいつまんでご紹介。
ヘラに呪いをかけられた説
我が子を食べてしまうという呪いに嘆き悲しんだ彼女は、やがて怪物へと変貌を遂げてしまいます。
ヘラに子供を殺された説
そしてラミア自身も怪物へと造り変えてしまったのです。
どちらの説も似てるようで若干違いますよね。
しかしこれ以外の部分はわりと似通っていて、ラミアはその後、
・ヘラに眠れない呪いをかけられた
・不憫に思ったゼウスが目玉を自由に取り外せるようにしてやった
・目玉を外している間は落ち着いていられる
・唯一生き残った娘がいたが、その娘スキュラも怪物に変えられてしまった
といった部分は共通しています。
さらに異説として、ラミアの起源はアダムの最初の妻リリスであるという説。
アダムとイブのあのアダムです。
この説ではリリスの下半身は蛇であり、アダムに裏切られた恨みから赤子をさらうようになったと言われます。
考えてみればイブに知恵の実を食べるようそそのかしたのも「蛇」ですし、なにかと結び付けたがるようですね。
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□【夜の女リリス】一筋縄ではいかない強い女【モンスターレビュー第75回】
変化していく中世のラミア
さてラミアは時代の移り変わりとともに様々な解釈が追加されていきます。
際たるものが「吸血鬼」です。
ラミアは森に潜み、夜になると人間を襲い生き血を啜るのです。吸血鬼ですね。
もしくは人間を誘惑し精を搾り取るエンプーサと同一視されます。夢魔です。
エンプーサはドラクエなどではフラダンスしてるようなデザインのモンスターでしたが、パレスチナからギリシャに伝わった怪物の事です。
犬や牛に化けることもできて(ラミアの下半身は牛の足説も上記の通り)、ユダヤ人は彼女たちを「リリム」と呼びました。
また、ラミアの語源が「貪欲な」ということで、中世ヨーロッパでは魔女の事をラミアと呼びました。
子供をさらう謂れから、親がしつけのために「ラミアに食べられちゃうよ」的な𠮟り文句に使ってもいたそうです。
けっこうメジャーじゃないですか? ラミア。
英雄ヘラクレスとの恋
ギリシャ神話の英雄と言えば栄光のヘラクレスです。
彼の「十二の功業」のひとつに「ゲリュオーンの牛」を持ち帰るというのがあります。
見事ゲットしたヘラクレスですが、ヘラの策謀によりその牛を逃がしてしまいます。
牛を追ってヘラクレスはスキュティアという砂漠にまで来ます。
そこで牛を保護したという下半身蛇女に会い、同棲します!
付き合ってくれないと牛を返さないと言われたためです。
渋々始めた同棲ですが、しっかりと三人の息子を身籠らせます!
満足した蛇女に牛を返してもらいましたが、三人の子供をどうすればいいかと聞かれたヘラクレスは、弓と帯を差し出し、自分のようにうまく扱えた者にこの国を任せる、と言って去ります。
民意などガン無視です。
そして見事三男のスキュテスがこの国を治めることになり、これが紀元前9世紀ごろから紀元後の4世紀ごろまで、この地で猛威を振るった遊牧騎馬民族スキタイの始祖となります。
ただこのエピソード、実はラミア以外にも同じエピソードとして語られるモンスターがいます。
同じように半蛇の怪物エキドナです。
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別個体のモンスターとされてますが、逸話に関しては混同されているようです。
ラミアの出てくる作品
枚挙に暇がない!
ここでは最も印象的なラミアをご紹介します。
『ファイナルファンタジーII』
帝国の大戦艦から救出した反乱軍の王女ヒルダ。
その後、自室に引きこもり様子が変になります。
主人公フリオニール(名前変更可)ひとりだけを呼び出し、誘惑してくるのです。
正体はラミアクイーンでしたが、仲間の女海賊レイラの機転で事なきを得ます。
その後、本物のヒルダ王女は帝国の闘技会の賞品として囚われたままであることが判明、救出に向かいます。
罠ですけど。
『ゴールデン・チャイルド』
行方不明の子供を捜索することを生業とする主人公の元に、チベットからある女性が訪れます。
千年に一度生まれる、世界の幸福を守るゴールデンチャイルドが悪魔にさらわれたので協力してほしいというのです。
オカルトを最初は信じない主人公でしたが、自身が捜索中の女の子がなんらかの儀式の生贄とされたことがわかり……
この映画で味方側の預言者がいるのですが、カーラという女性が下半身蛇(龍?)なのです。
コメディでありホラーでありアクションでありチベット。
とても面白い作品でした。
『ブレスオブファイア』
亜人ばかりの登場人物で繰り広げる異色のゲームですが、
1作目から仲間キャラである下半身蛇の大魔道士ディースが登場します。
基本主人公リュウとヒロインのニーナという名前だけ同じのスターシステム制度で、各作品ごと単体で完結するのですが、2作目だけ同一人物のディースを仲間にすることが出来ます。
このゲームも強くおススメです。
そのほかの登場例
まとめ
いかがだったでしょうか。
ラミア単体だけでも神話から伝承からと多くの逸話がありますが、現代の創作においては列挙しきれないほどのアレンジが広がっています。
単にラミアというだけでなく、上位種のラミアクイーンであるとかね。
蛇女という個性が印象強く、下半身蛇ならラミアと即答できるのも強みですかね。
まだまだラミアにもアレンジできる箇所がありそうです。
あなたの創作で新たなラミアを創造してみませんか?
その時は是非教えてくださいね。
それではまた!