【蛇女ラミア】不眠不休で男を惑わす悲しき怪物【モンスターレビュー第18回】

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赤子をさらい食べてしまう、下半身が大蛇の女怪物。
美しくも恐ろしいこの女怪こそがラミア

しかしですね、「美しい女の怪物は、必ず悲しい過去を持っているそういうものなのです

当然、このラミアもです。
悲しいことにこのラミア、最初から詰んでいたのです

ラミアはファンタジー系のゲームではメジャーなモンスターでしょう。
大抵の作品では物語中盤にエンカウントする雑魚モンスター的な扱いで、バージョン違いも多く見られますね。
しかしこのラミア、多くの要素を併せ持つため、単にラミアという個体だけでなく、吸血鬼や夢魔といった特性までも与えられた「多才なモンスター」なのです。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもラミアとはなんぞや?

ラミア、あるいはレイミアとは「貪欲な」という意味の「ラミュロス」という言葉が語源のようです。
美しい女の上半身に大蛇の下半身
まれに猫と牛の足を持つともいわれますが、こちらはだいぶマイナーな例でしょう。

  • 子供をさらって食す
  • 相手を誘惑し精を搾り取る
  • 目玉が取り外せる!

坑道や特徴を上げてみるとなんとも恐ろしい怪物だと思わされますね。

ラミアは元々はリビュアという国の女王でした。
今で言うアフリカ北端のリビアです。
近くには地中海を挟んでギリシャがあります。
そこには我らが全能の神ゼウスが居られます。
そう、ラミアもまたギリシャ神話の怪物なのです。

ラミアの生まれた訳

美しい女がいると知れば見境ないのが我らがゼウスです。
ラミアもしっかりと愛人として、ゼウスと多くの子をもうけることとなりました。
そもそも全能の神ゼウスから求愛されて断れる女はそうはいないでしょう。
拒絶したら報復されるかもしれませんしね。

しかし受け入れても報われないのがギリシャ神話です。

ゼウスの正妻である女神ヘラは嫉妬心の強い女性です。
ゼウスの愛人であるラミアを快く思わず、彼女に復讐をします。

結果、ラミアは上述の通りの怪物に変じてしまうわけなのですが。
この復讐の仕方が色々諸説あるのでかいつまんでご紹介しましょう。

ヘラに呪いをかけられた説

ラミアを許せなかった女神ヘラは、ラミアに呪いをかけて自分の子供を貪り食うように仕向けます。
我が子を食べてしまうという呪いに嘆き悲しんだ彼女は、やがて怪物へと変貌を遂げてしまいます。

ヘラに子供を殺された説

ラミアを許せなかった女神ヘラは、ラミアの子供を皆殺しにしてしまいます。
そしてラミア自身も怪物へと造り変えてしまったのです。

どちらの説も似てるようで若干違いますよね。
しかしこれ以外の部分はわりと似通っていて、ラミアはその後、

  • 赤子をさらっては食い殺すようになった
  • ヘラに眠れない呪いをかけられた
  • 不憫に思ったゼウスが目玉を自由に取り外せるようにしてやった
  • 目玉を外している間は落ち着いていられる
  • 唯一生き残った娘がいたが、その娘スキュラも怪物に変えられてしまった

といった部分は共通しています。
ちなみに5番の怪物スキュラも上半身は美しい女性ですが下半身は怪物という悲しい存在です。

さらに異説として、ラミアの起源はアダムの最初の妻リリスであるという説まであります。
アダムとイブのあのアダムです。
もはやギリシャ神話から飛び出して『旧約聖書』の世界にまで入り込んでいます。
この説ではリリスの下半身は蛇であり、アダムに裏切られた恨みから赤子をさらうようになったと言われます。
考えてみればイブに知恵の実を食べるようそそのかしたのも「」ですし、なにかと結び付けたがるようですね。
しかし成立した時系列としてはギリシャ神話の方が古いような気もします。
とはいえ神話も宗教も全くのゼロから生まれるわけではなく、地域の伝承が混然一体となって醸成されるものなので、数百年の誤差などあってないようなものと考えます。

変化していく中世のラミア

さて、ラミアは時代の移り変わりとともに様々な解釈が追加されていきます。
その際たるものが「吸血鬼」です。
ラミアは「森に潜み、夜になると人間を襲い生き血を啜る」という吸血鬼設定が定着します。

他にも「人間を誘惑し精を搾り取るエンプーサという怪物と同一視されます。夢魔の一種です。
エンプーサは『ドラゴンクエスト』シリーズなどにも登場するモンスターで、フラダンスしてるようなデザインをされてましたが、元ネタはパレスチナからギリシャに伝わった怪物の事です。
犬や牛に化けることもできて(ラミアの下半身は牛の足説も上記の通り)、ユダヤ人は彼女たちを「リリム」と呼びました。

また、ラミアの語源が「貪欲な」ということから、中世ヨーロッパでは魔女のことをラミアと呼びました

子供をさらう謂れから、親がしつけのために「ラミアに食べられちゃうよ」的な𠮟り文句にも使っていたそうです。
こうなると日本で言う「鬼」クラスにメジャーな扱いと言えませんか?

英雄ヘラクレスとの恋

ギリシャ神話で一番の英雄と言えば栄光のヘラクレスです。
十二個の無理難題に応えた彼の「十二の功業」のひとつに「ゲリュオーンの牛」を持ち帰るというミッションがあります。
見事その牛をゲットしたヘラクレスですが、ヘラの策謀によりその牛を逃がしてしまいます。
牛を追ってヘラクレスは「スキュティア」という砂漠にまで来ます。
そこで牛を保護したという下半身蛇女に会い、あれやこれやとあって同棲することになります。
付き合ってくれないなら牛も返してあげない、と言われたためです。

渋々始めた同棲ですが、しっかりと三人の息子を身籠らせます
満足した蛇女に牛は返してもらえましたが、三人の子供をどうすればいいか。
蛇女にそう尋ねられたヘラクレスは、弓と帯を差し出し、自分のようにうまくこの弓を扱えた者にこの国を任せる、と言って去ります。
いや、勝手に王とか決めないでよ、と民は思うでしょうが。

さて、弓をうまく扱えたのは三男のスキュテスで、彼がこの国を治めることになります。
これが紀元前9世紀ごろから紀元後の4世紀ごろまで、この地で猛威を振るった遊牧騎馬民族スキタイの始祖となります。

このエピソードに登場する「蛇女」がラミアなんですが、実はラミア以外にもこれと同じエピソードを持つモンスターがいます。
半蛇の怪物エキドナです。

別個体のモンスターとされてますが、逸話に関しては混同されているようです。
おそらく元ネタは同じなのでしょう。神話にはよくあることです。
ですが当ブログでもたびたび言及しておりますが、ファンタジー創作界隈において「名前が違えば別モンスター」の法則があります。
ラミアとエキドナはすでに立派に独立した存在なのです。

ラミアの出てくる作品

枚挙に暇がない!
ここでは最も印象的なラミアをご紹介します。

『ファイナルファンタジーII』

なんといってもFFの2です。
帝国の大戦艦から救出した反乱軍の王女ヒルダ。
その後、自室に引きこもり様子が変になります。
主人公フリオニール(名前変更可)ひとりだけを呼び出し、誘惑してくるのです。
正体はラミアクイーンでしたが、仲間の女海賊レイラの機転で事なきを得ます。
その後、本物のヒルダ王女は帝国の闘技会の賞品として囚われたままであることが判明、救出に向かいます。
それも罠ですけどね。

『ゴールデン・チャイルド』

エディ・マーフィー主演、1986年アメリカ映画です。
行方不明の子供を捜索することを生業とする主人公の元に、チベットからある女性が訪れます。
千年に一度生まれる、世界の幸福を守るゴールデンチャイルドが悪魔にさらわれたので協力してほしいというのです。
最初はオカルトを信じない主人公でしたが、自身が捜索中の女の子がなんらかの儀式の生贄とされたことがわかり……
この映画で味方側の預言者がいます。カーラというその女性が下半身蛇(龍?)なのです。
コメディでありホラーでありアクションでありチベット。
とても面白い作品でした。

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『ブレスオブファイア』

カプコン初の本格オリジナルRPGです。
亜人ばかりの登場人物で繰り広げる異色のゲームですが、
1作目から仲間キャラである下半身蛇の大魔道士ディースが登場します。
基本主人公リュウとヒロインのニーナという名前だけ同じのスターシステム制度で、各作品ごと単体で完結するのですが、2作目だけ1作目の500年後という設定で、同一人物のディースを仲間にすることが出来ます。
このゲームも強くオススメです。

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まとめ

いかがだったでしょうか。

ラミア単体だけでも神話から伝承からと多くの逸話がありますが、現代の創作においては列挙しきれないほどのアレンジが広がっています。
単にラミアというだけでなく、上位種のラミアクイーンとかマザーラミアとかね。

蛇女という個性が印象強く、下半身蛇ならラミアと即答できるのも強みですかね。

まだまだラミアにもアレンジできる箇所がありそうです。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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