世の中には実に多くの怪物、モンスターが存在します。
当然彼らひとりひとりにも親がいます。
いま、日本は少子化にあえいでいるのが実情です。
平成から令和にかけて、日本における出生率は年々右肩下がり。
2020年に発生したコロナ禍によって少子化はさらに10年加速したとまで言われています。
というわけで、本日ご紹介するのは多くの怪物の母として、大家族を築いたとされるモンスターのエキドナです。
今現在でも我々冒険者を悩ませ、創作者を楽しませる数多の怪物どもを産み落としたとされるエキドナ。
そんな彼女について今回は調べてみました。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもエキドナとはなんぞや?
エキドナはギリシャ神話に登場する下半身が大蛇のモンスターです
上半身が人間の美女、下半身が大蛇という恐ろしい姿をしています。
そもそもエキドナとはギリシャ語で「まむし」を意味します。猛毒の蛇です。
では何故エキドナの下半身は大蛇なのか?
答えはエキドナの祖母があの有名な顔を見た者を石に変えてしまう怪物メデューサだからです。
メデューサは自分の美しい髪を自慢したばっかりに、戦と知恵の女神アテナに呪われ、髪の毛が生きた無数の蛇という怪物に変えられてしまった女です。
そのメデューサの息子(息子がいたのも驚きですが)クリュサオルの娘、それがエキドナなのです。
クリュサオルはメデューサの息子ではありますが、実際はメデューサが腹を痛めて生んだというのではありません。
メデューサが英雄ペルセウスに首を刎ねられた際、飛び散った血が海に流れ、海を支配する海神ポセイドンと交わったその血から生まれたとされてます。(実はメデューサとポセイドンは昔付き合っていて、アテナはポセイドンが嫌いだったのでなおさらメデューサは目を付けられていました。)
クリュサオルは黄金の剣を持って生まれたと言われ、カリロエという女神との間にエキドナをもうけました。
ちなみにエキドナの出自はわりと曖昧で、メデューサの孫という以外にも以下の説があります。
- 「大地母神ガイアと奈落のタルタロス(場所?)の子」
- 「ガイアの子のポルキュートスと女神ケート―との子」
といった具合に明らかではありません。
原作者の誰も決定権がなかったのでしょうね。
さてエキドナですが、彼女はなんとギリシャ神話の中でもラスボス級の怪物テュポーンと結婚し多くの怪物を生むことになります。
が、そこにもまた曖昧な点がいくつか見受けられるのです。
エキドナの生んだ怪物たち
エキドナはテュポーンとの間にたくさんの怪物を産み落としました。
テュポーン(Typhoon)は台風(タイフーン)の語源となった程で、ギリシャ神話ではゼウスを凌ぐ最凶のモンスターです。
それではエキドナの生んだ怪物たちを列挙して見てみましょう。
- 冥界の番犬ケルベロス
- 黄金の林檎を守るラドン
- ネメアの獅子
- プロメテウスの内臓をついばむワシ
- コルキスで金羊の毛皮を守る龍
- 下半身が獣である美女スキュラ
- ゲリュオンの怪犬オルトロス
- レルネーの水蛇ヒュドラ
- 獅子と山羊の頭に蛇の尾キマイラ
- 人頭に獅子の胴、鷲の翼スフィンクス
さらにエキドナはあの英雄ヘラクレスとも子をもうけており、その子孫が遊牧騎馬民族スキタイ人とされています。
んん?
お気づきでしょうか?
上記のリスト内にある怪物スキュラの母は、このブログでも以前紹介した半蛇の怪物ラミアであるはず。
もうひとつ、英雄ヘラクレスとの間に生まれたとされる騎馬民族スキタイ人の祖先もラミアが生んだはず。
ラミアの記事内でもそう言及しました。
ラミアとエキドナが混同されてるようですね。
エキドナとラミア
エキドナもラミアも下半身が大蛇である美人モンスターという点は同じですね
どちらもギリシャ神話で語られる存在ではありますが、しかしこの二人には明確な違いがあります。
「出自」です。
- ラミアはリビュア王国(現リビア)の王女でしたが、ゼウスの正妻女神ヘラの嫉妬を買い怪物にされました。
- エキドナはギリシャの植民地となった黒海周辺に元々いた怪物です。
見た目が似ているためかラミアの逸話が実はあれエキドナなんだよね、て感じにされたのでしょうか。
そのためスキュラにしろスキタイ人にしろ、生んだのはラミアかエキドナか正直ハッキリしません。
ちなみになんですが、子のひとりスキュラは個別記事でも書きましたが、実は他にも海神ポセイドンの娘説や魔術の女神ヘカテの娘説、魔女キルケ―に嫉妬されて薬で怪物にされたニンフ説などなど。
色々な説があってどれを取り上げればいいのやら。
この辺りは多くの創作物でも様々にアレンジされていますね。下半身が大蛇という怪物自体、結構な数が存在しますしね。
エキドナの最期
エキドナは小アジア(現トルコあたり)にあるアリマ地方の火山帯に住んでいたとされます。
ギリシャの叙事詩人ホメロスは「テュポエウスの住処」と名付けましたが、それが何処かは判明してません。
トルコへ旅行に行く際はどうかお気をつけください。
と言ってもエキドナはもういません。
彼女は決して不死の怪物ではなく、多くの書物にてヘラの息子、百の目を持つ巨人アルゴスに殺されたとされています。
ギリシャ南部のペロポネソスという地で家畜を盗み食いして寝入ったところを襲撃されたらしいです。
なんというか、もうね。
まとめ
- エキドナは下半身大蛇の美人モンスター
- テュポーンと共に多くの怪物を産み落とした母なるモンスター
- トルコ辺りの火山に棲んでいたモンスター
- 百目巨人アルゴスに殺された
いかがだったでしょうか。
ギリシャ神話全体についてはこちらの記事からどうぞ!
怪物の母として知られるギリシャ神話のエキドナですが、わりとマイナーに近い気がします。
ゲームなどでも終盤にエンカウントするモンスター扱いだと思いますが、明確にシナリオに絡む機会も少ないのではないでしょうか?
それだけに創作ネタとしては参考にもなるかと思います。
モンスターの生まれたわけ、というテーマだけでも一本シナリオが書けると思いますしね。
それではまた!