【キマイラ(キメラ)】合成魔獣の代名詞【モンスターレビュー第62回】

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いろんな動物がごちゃ混ぜに合体した様をキメラ的な、とか言いますよね。
でもこれには元ネタとなった神話上の怪物がちゃんといるんです。

キマイラはご存知ですか?

キマイラといえばゲームなどでは中堅どころの雑魚モンスターみたいに思ってませんか?
キメラといえば複数の動物の合成されたものみたいに思ってませんか?

今回はキマイラについてまとめてみました

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもキマイラとはなんぞや?

キマイラとは、ギリシャ神話に登場する三身一体の怪物です。

ギリシャ神話をまとめあげた紀元前8世紀の叙事詩人ホメロスの『イリアス』によると、前半分は獅子、中部は牡山羊、後方に大蛇とあります。
その記述を元に紀元前5世紀に製造された銅像があるのですが、それでは獅子と牡山羊の頭が生えた前半分は獅子、後ろは牡山羊、尾は大蛇、という風にリファインされています。

このデザインが現在のゲームや小説等で使われるキマイラのスタンダードと言えます。

さらにRPGの元祖『ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)』以降、三つ目の首としてドラゴンの頭部と、さらにドラゴンの羽根を備えたものも同じくらいよく見かけるようになりましたね。

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ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(Wizards of the Coast)

まとめると、

  • 紀元前8世紀、ホメロスの『イリアス』時点では「獅子」の頭
  • 紀元前5世紀の銅像では「獅子と牡山羊」の頭
  • 紀元後20世紀の『D&D』では「獅子と牡山羊とドラゴン」の頭

と、このような流れですね。

さて、複数の動物が合成された魔物はギリシャ神話やそれ以外の伝説でもよく見かけるのですが、いまや「キマイラ」もしくは「キメラ」とは正に「合成獣」の総称、または代名詞として認知されています。

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キマイラの生まれた背景


キマイラという言葉の意味は「牡山羊」なのだそうです。

キマイラ(chimaera)またはキメラ、フランス語ではシメール等とも言います。

個人的にはキメラよりキマイラの方がファンタジーぽくて好きです。
キメラだとなんか特撮風というかSF味がありません?
個人の感想ですけど。

キマイラは古代ギリシャに伝わる以前にヒッタイトで作られた聖獣でした。

ヒッタイトとはギリシャ人によるミュケナイ文化より以前、メソポタミアを支配していた民族です。
この地には世界最古の神話があるのですが、征服する民族が変わる度に、内容も少しずつ上書きされていったため、時期により◯◯神話と呼び方が変わります。

聖獣としてのキマイラは3つの季節を表しており、獅子が春、山羊は夏、蛇が冬でした。
(ドラゴンに関しては上述の通り、20世紀まで関わりがありません。)

しかしギリシャ神話に輸入されるとキマイラは怪物テュポーンエキドナの子供とされます。
他にも兄弟としてヒュドラケルベロスもこの二人から生まれました。

ちなみにキマイラを差すときは基「彼女」と言います。
性別はメスなんですね。
まあ、牡山羊含んでますけども。

キマイラの生息地はリュキア王国(現在のトルコ周辺)パセリスの街すぐそばにそびえるパセリス火山です。
この山はもともと麓に大蛇が多く、中腹には山羊がおり、山頂付近は獅子の縄張りであったと伝わります。
この辺の生息分布からキマイラという三身一体の怪物が生まれたのでしょうか。

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キマイラを退治した英雄ベレロポン


キマイラは上記リュキア王国のこれまた近辺であるカリア国王アミソダスに飼われていました。


ヒトに飼われしものだったんですね。
キマイラは口からを吐き、街や森を焼き尽くす恐ろしい怪物ですが、アミソダス王は隣国リュキア国内にこのキマイラを度々放していました。

リュキア国王イオバテスとカリア国王アミソダスの仲が悪かったせいです。

しかしこのキマイラはベレロポンという英雄によって退治されます。

ベレロポンとは実は海神ポセイドンの血を引くと噂される人物です。
彼は幼少期に殺人を犯した罪で故郷を追われ、アルゴスの王宮に預けられていました。
しかしそこでも問題児ぶりを発揮し追放されます。
そうして今はリュキア国王イオバテスに預けられていました。
そのイオバテスにアルゴスの王から秘密裏にベレロポンを暗殺しちゃってくれと頼まれます。

よっぽどの問題児ぶりだったのですかねぇ。

さりとて預かった人物を表だって殺すわけにもいかず、そこでキマイラ退治をベレロポンに頼むことにします。
それで殺られれば仕方ない。
倒してくれたらそれはラッキーというわけです。

ベレロポンは二つ返事で承諾し、予言者にキマイラ攻略法を聞きに行きます。
そこで得たお告げは「天馬ペガサスに乗れ」というものでした。

しかしペガサスは暴れ馬として有名で、誰でも乗れるものではありません。
そこで戦の女神アテナにお伺いを立てると、英雄が大好きなアテナは「黄金の手綱」というアイテムを貸してくれます。
この手綱を使えばペガサスは言うことを聞くというのです。

このペガサスの逸話はそのままそっくり『ドラゴンクエストVI 幻の大地』に輸入されてますね。
森の暴れ馬ファルシオンを主人公とハッサンが捕まえ旅の馬車を牽かせるのが最初のミッションですが、終盤「てんまのたづな」というアイテムを使うことでこの馬がペガサスになるのです。
ドラクエは意外と神話ネタに忠実なんですよ。

ベレロポンは言われた通り、早速ペガサスを乗りこなしキマイラの元へと向かいます。
必勝法としては「キマイラのファイアブレスが届かない空中から何本も矢を射かける」という戦法です。

※繰り返しますが、キマイラにドラゴンの頭と翼が生えるのは20世紀に発売された『D&D』以降の話です。

キマイラが弱り始めた頃、その口の中に目掛けて鉛の玉を放り込み、ベレロポンは「勝負ッ」とキマイラに接近します!
近付くベレロポンにキマイラは得意の炎を吐き出しますが、その炎により口内の鉛玉が溶け、内蔵を焼き払ってしまったのです。
一瞬にして鉛玉を熔解させるほどの炎を吐き出していたのですね。
キマイラのファイアブレスは要注意です。そしてそれが仇にもなった。

こうしてベレロポンの勝利に終わりましたが、ペガサスを手に入れて調子に乗った彼が神々により手痛い仕打ちを受けるのはまた別のお話。

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まとめ

ギュスターヴ・モロー 「キマイラ」 (1867)

いかがだったでしょうか。

キマイラというと様々な動物を組み合わせた魔獣というイメージをお持ちの方も多いと思います。
それは決して間違ってはいません。
けど別にキマイラが合成魔獣なのではありません。
合成魔獣のことをキマイラと呼ばせてもらっているんです。

ややこしいな。

今ではオリジナルのキマイラ、キメラを出すために、この元々のキマイラがあまり活躍できていない気もします。

そんななか、『ドラゴンズドグマ』は最初からキマイラがキマイラしてて初見から心奪われましたね。
なんとなくですが、あのゲームのシンボル的なモンスターとまで思います。
『2』が開発中だと噂されています。楽しみですね。

他にも個人的には夢枕獏先生の『キマイラ吼シリーズ』は夢中で読んでいました。
発表から40年! 結局完結してませんが、目処が立てば最初からもう一度読み直したいと思いますね。
昔は本屋の棚に朝日ソノラマ文庫のこのキマイラシリーズがズラッと並んでたんですよ。どこ行っても。
そのせいかキマイラというモンスターに謎の愛着があるんですよね。
ちなみに当時の挿絵は天野喜孝氏でした。売れてる小説は洋の東西を問わず天野氏ばかりでした。

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ということで今回はここまで。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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