【愛と美の女神イシュタル】まさに人類最古のヒロイン!【ヒロインレビュー第1回】

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世界最古の神話であるメソポタミア神話。
そこで最高の女神とあらば、そりゃあ世界中に拡散されるでしょうね!

どんなジャンルでも元祖は偉大。
ゼロから1を生み出すのは、1を百にするより困難。

そこで今回は「愛と美の女神」の元祖とも言える、メソポタミアの女神イシュタルを取り上げたいと思います。
彼女はオリエント地域にて絶大な人気を誇る女神です。
最大のヒロインと言ってもイイぐらい。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもイシュタルとはなんぞや?

イシュタルとは、アッカド神話、バビロニア神話に登場する愛と美の女神です。

ちょっと待って!
さっきメソポタミア神話って言わなかった?

はい。その通りです。
ここで少しこの地域の神話について補足させてください。

主に中東全域を差すオリエント地域の神話をメソポタミア神話、またはオリエント神話と言います。
この地で最初に都市国家を築いたのがシュメール人です。
彼らの神話を「シュメール神話」といい、厳密にはこれが世界最古の神話とされます。

そのシュメール人はアッカド人に滅ぼされ、アッカド神話が生まれます。
そのアッカドは北のアッシリアと南のバビロニアに分かれます。

その都度神話は書き換えられるのですが、言語による神の名称こそ変化するも、大まかなストーリーは受け継がれたのです。
さらに周辺のカナン神話やウガリット神話等も含めて便宜上? 「メソポタミア神話」と言います。

イシュタルは最初のシュメール神話では「女神イナンナ」とされます。
そのイナンナが、シュメールからアッカドに書き換えられる際に、イシュタルとして継投した感じです。

ではイシュタルについて話を戻しましょう。

イシュタルとは

  • 愛と美の女神」である。愛とは性愛の事である
  • 豊穣の女神」である。子を成すことは実りを豊かにすることである。
  • 戦の女神」である。気性が激しいのである

彼女の性格を表す3つの称号です。

父は月の神シン、もしくは天空神アヌ。

古代都市ウルクの都市神として奉られていました。
金星を模した図形をシンボルとし、ライオンを伴います。
手には「シタ」と「ミトゥム」という二つの武器(メイス)を持ち、恐ろしいことに相手を勃起不全にする特殊能力持ちです。
少年誌では使えないかな、この能力。

古代バビロニアでは男女の性交は聖なる儀式と尊ばれました。
実際イシュタル神殿では巫女による奉仕が行われ、各地から貢ぎ物を持参した信者が多かったそうです。
さらに一般の女性にもある義務が化せられます。
それは生涯に一度、イシュタル神殿で見知らぬ男に抱かれなければならないというものです。

現代の倫理観では受け入れられませんよね。
事実、後のキリスト教徒にバビロニアは「背徳の都」と呼ばれ蔑まれました。

でもまあ、これでイシュタルが絶大な人気を博した理由がお分かりになられたかと思います。
ちなみに彼女は娼婦の守護者とされていました。

イシュタルの『冥界下り』


イシュタルの伝説で最も有名なのがこの冥界下りです。

姉であり冥界の女王であるエレキシュガルに会いに行くことにしたイシュタル。
しかし姉の元へ辿り着くには七つの城塞を越えねばならない。
その城塞を越える度にイシュタルはひとつずつ身に付けているものを剥ぎ取られていきます
宝冠、耳飾り、首飾り、胸飾り、腰帯、腕輪と足輪、そして最後に腰布まで獲られ、エリキシュガルの元へ着いた時には装備なしになっていました。
しかしそのあまりに見事なプロポーションにエレキシュガルは嫉妬してしまい、イシュタルを冥界に閉じ込めてしまいます。
豊穣の神が戻らないので、地上では作物が実らず、愛の女神が戻らないので、地上ではあらゆる生殖行動が行われなくなってしまいました

これは不味いと神々は緊急ミーティングを開き、イシュタルを救出することになります。

なんと世界最古のヒロインは「囚われの姫」属性なのです。

ちなみにメソポタミアの神々は事あるごとに会議を開きます。
会議好きです。

そしてひとりの男神が派遣されることになります。
イシュタルの120人いる愛人のひとり、ドゥムジです。
彼が身代わりとなりエレキシュガルに殺され、イシュタルは地上へと戻ることが出来ました。
その後死んだドゥムジも冥界の住人となりましたが、一年の半分は地上へと戻ることを許されました。

これは作物の実る周期を表したとされています。

『冥界下り』ゴアバージョン

『冥界下り』は人気だったらしく、いくつものバリエーションが存在します。
当時は司祭などが文字の読めない聴衆のために講談のように読み聞かせていたので、盛り上りを気にして時には過激な展開を披露したりしました。

中でもシュメール語で書かれた『冥界下り』は一部過激な内容になってます。

シュメール語なので、もしくはこちらの方が初期バージョンかもしれません。
だとすると後の世では過激なため修正されたのかもしれない。
表現規制はいつの世も変わらないようだ。

戦の女神」イシュタルと「冥界の女王」エレキシュガルの戦いが勃発した。
冥界へと攻め寄せるイシュタルだが、途中の七つの城塞を攻略する際にひとつずつ装備を剥ぎ取られていった。
宝冠、耳飾り、首飾り、胸飾り、腰帯、腕輪と足輪、そして最後に腰布まで。
エレキシュガルの元へ着いた時には防御力ゼロの装備なしになってしまっていた。
これでは勝つことは難しく、イシュタルは敵の虜となってしまう。
不当な裁判にかけられ死刑判決を受けると、イシュタルは支柱に吊るされ死んでしまった

すると地上では作物が実らず、あらゆる生殖行為も出来なくなり、種の存続に関わる事態となってしまった。
これは人間だけの問題ではない。
全ての動植物の問題であった。
そこで水と知恵の神エアによって、イシュタルの亡骸に「生命の水」と「生命の食物」を与え蘇生させることにした。

だがこれに怒ったのがエレキシュガルだ。
何度でもイシュタルを付け狙ってやると高らかに宣言するのである。
そこで身代わりとして、イシュタルのである男神ドゥムジを「殺して」冥界に差し出すことで決着がついた。

ドゥムジはイシュタルの危機に何もせず、酒や宴会に興じていたため、イシュタルの怒りを買い、彼女に指名されたのでした。

以上が『冥界下り』のあらましです。

実はこのエピソードにとても似たのがギリシャ神話にもあります。
大地の女神ペルセポネ冥界の王ハデスに拉致されたため、地上で作物が育たなくなるというお話です。
ゼウスの命で地上へペルセポネを返す際、最後にと食べさせたザクロは冥界の食べ物でした。
それを食したことでペルセポネは冥界の住人となってしまい、一年の半分は冥界で暮らさねばならなくなりました。
これは作物の実る周期を表した逸話です。

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古代ギリシャでは「海」は「青色」ではなくワイン色と言う。 なぜなら古代ギリシャ語には「海」も「青」も表す単語がないからだ! なぜなのか?

イシュタルでも失恋


ここまで愛に関して無敵を誇るイシュタルですが、彼女ですら失恋はします

彼女がフラれた相手はあの英雄王ギルガメシュです。
英雄王ギルガメシュの噂を聞き着けたイシュタルは、彼に猛烈なアプローチで迫ります。
しかしギルガメシュはイシュタルに120人もの愛人がいること、その誰もが悲惨な末路をたどっている事を知っていました。
そこで彼は「ひとりでも心の底から尽くしたことがお前にあるのか?」と言い放ち交際を断ります。

プライドを傷つけられたとイシュタルは激怒し、地上に怪物、天の雄牛グガランナを解き放ちます。
しかしギルガメシュは親友のエンキドゥと協力してその雄牛も倒してしまいました。

イシュタル悔しい!

しかしここで理不尽にも、天の雄牛を殺してしまった二人に神罰を加えねばならないという、神々の会議が開かれてしまいます。
結論としてどちらかに死んでもらおうとなり、英雄王ギルガメシュにはまだやるべき事があるからと、エンキドゥが死ぬことが決定されてしまいます。

なんというか、付き合ってもフッても悲惨な末路が待ってるんですね。
女って怖い。

拡散されるイシュタル


元々最古の神話シュメール神話の女神イナンナから変化したイシュタルですが、イシュタル自身も周辺地域の神話に名を代えて拡散されます。

ウガリットやカナーンでは「アシュタロテ
プリギュアでは「キュベレー
アッシリアでは「ミリッタ

そしてギリシャ神話では有名な「アフロディーテ
ローマ神話では「ウェヌス」これは英語読みにするとヴィーナスのことです。

ね、有名でしょ!

イシュタルは愛と美の女神という称号の原形なのです。
故に最大最強のヒロインなんですよ。

イシュタルが出てくる作品

『バビロニアン・キャッスル・サーガ』

いわゆるナムコの『ドルアーガの塔』をはじめとするシリーズ作品。
主人公はバビロン王国の王子ギル(ギルガメス)。
悪魔ドルアーガを封印していたのは女神イシター(イシュタル)ですね。
ちなみにヒロインのカイはイシタ―神殿の巫女という事なので、やはりご奉仕を……。
日本のRPG黎明期を彩る作品が、最古の神話をインスパイアしているという部分に得も言われぬ感動がありますね。
ないですか?

『真・女神転生デビルサマナー』

ラスボスのイナルナ姫はイシュタルのシュメール版であるイナンナから来ているようです。
またパートナーのレイ・レイホゥは「攻撃型」「支援型」「回復型」の3種から一つを選べるのですが、その方法は神下ろし。
アマテラス、ガブリエル、イシュタルからプレイヤーが選ぶことになります。
しかし回復型のイシュタルを選ぶと苦労するのでオススメは出来ません。
支援型のガブリエルがオススメ。

まとめ


いかがだったでしょうか。

冒頭でゼロから1を生み出すのは困難、とか言いながらイシュタルにも前身と言えるシュメール版のイナンナがいるじゃないか、とツッコミが来そうですが。
すいません。
イナンナよりイシュタルの方が惹きが強いと判断して、少し大げさに書きました。
でも名前は変わってますが根幹はそのままであり、支配者によって歴史や神話は改竄されるのは常ですから。
ただゲームの世界では同じキャラでも名前が違ければそれは別のキャラ、という免罪符があるのも事実。
いやゲームに限りませんね。
バハムートベヒーモスを考えれば、それは太古の昔から成されてきたこととご理解いただけるでしょう。

ですので皆さんもバンバンご自身の創作でイシュタルをアレンジしちゃいましょう!

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~
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