ケンタウロスはご存知でしょうか?
上半身がヒトのそれ。
下半身が馬の四つ足という種族です。
雄々しい戦士のイメージが先行しているかとも思います。
人間と馬が合体した種族ですが、「獣性」「野生」の象徴として紋章の図柄に採用される程の存在です。
しかしキリスト教では「傲慢」「情欲」という象徴の元、悪魔に分類されています。
そして大本のギリシャ神話ではどういった扱いか。
これがなかなかに、悪役染みてるんですよね。
今回はモンスターとしてはほぼ全人類に認知されている、半人半馬のモンスター、ケンタウロスを調べてみました。
意外な扱いだったり、それでも謎な部分が多々あったりと、創作に使うにもアレンジし放題といった具合です。
ファンタジーに興味がありましたら、基礎知識として十分面白いと思います。
創作の参考に、読書やゲームを楽しむ味付けにご活用ください。
どうぞ皆様のファンタジーライフのために、ご照覧あれ。
ギリシャ神話全体についてはこちらの記事からどうぞ!
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そもそもケンタウロスとはなんぞや?
ケンタウロスとはギリシャ神話に登場する半人半馬の種族です。
・性格は粗暴でとても好色
・弓、槍、棍棒を得意武器とする
・中には知性ある人物も存在する
ケンタウロスとは「槍を持つもの」という意味のケンタウロから来ています。
英語読みでは「セントール」といい、こちらの呼び名で創作に登場する事もありますね。
例えば、まさかのリメイクが発売されたアクションゲーム『アクトレイザー』の1面ボスは甲冑に馬脚のその名もセントールでした。
通常イメージする半人半馬をケンタウロスといい、ヒトと馬の比率の異なる者を「ヒポケンタウロス」、また、馬ではなくロバの足を持つ「オノケンタウロス」という種族もいます。
ヒポは「馬」です。ヒポグリフのヒポも馬です。あれはグリフォンと馬の間の子ですから。
先にケンタウロスのメタ的な誕生秘話をご紹介させていただくと、モデルとなったのは「スキタイ人」ではなかろうか、という説があります。
スキタイ人とは、紀元前6世紀頃、黒海、カスピ海周辺に現れた、世界最古の遊牧騎馬民族です。
神話的にはヘラクレスと怪物ラミアの子孫というエピソードもあります
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ギリシャは平地が少なく、騎兵よりも楯と長槍を構え密集陣形を組む「ファランクス」が猛威を振るうなど、重装歩兵がメインとして発達しました。
そのため馬を駈り戦場に臨む侵略者スキタイ人をケンタウロスという敵対種族に見立てたという説があります。
確証ではないようですが、面白いお話かなと。
このような出自からケンタウロスはあまり好意的な存在とは描かれていません。
雲から生まれた経緯
ケンタウロスの祖先はイクシオンという名のテッサリア王です。
彼は軍神アレスの血をひくだけあり、なんと婚約者の父親ディオネウスを殺してしまった人類初の身内殺しという汚名を持っている人物です。
誰も彼の言うことを聞かなくなり、不憫に思ったかゼウスが酒の席に招待します。
しかしそこで不遜なイクシオンは、ゼウスの正妻である女神ヘラを気に入ります。
「あの女、オレに色目使ってよぉ」
イクシオンはヘラが自分の物になると吹聴してまわるのです。
怒ったゼウスとヘラは雲をヘラそっくりの人形に仕立てイクシオンの元へ向かわせます。
人形と知らずその雲と交わるとケンタウロスが生まれたというのです。
イクシオンといえば『ファイナルファンタジーX』の雷系召喚獣がイクシオン。
姿は馬の幻獣でしたね。
ゼウスの武器は雷、イクシオンから生まれたケンタウロス。元ネタはこれですかね?
酒の席での失敗
粗暴なイクシオンから生まれたので、ケンタウロスは基本粗暴で好色です。
そんなある日、人間のラピタイ族の王ペイリトオスの結婚式に呼ばれました。
その席でケンタウロスは初めて酒を口にします。
飲んだ事なかったんです。
案の定、ベロベロに酔っ払った彼らのうちの一人、エウリュトスというケンタウロスが、あるまじき事に花嫁を襲いだしたのです。好色だから。
それに続けと他の酔ったケンタウロスたちも次々女を襲いだしました。
で、結局ぶちギレたラピタイ族と戦争になり、こっぴどくボコボコにされ負けました。
ケンタウロスのイメージ変わりましたか?
賢者ケイローン
しかしながら全てのケンタウロスがこのような問題児ばかりではありません。
知性と教養を備えた者もいます。
それが賢者ケイローンです。
ケイローンは前述のイクシオンではなく、別の両親から生まれました。
ゼウスと同じ、クロノスを父に持つのです。
クロノスが妻であるレアの目を盗んで、美しいニンフのピリュラーともうけたのがケイローンです。
なぜケンタウロスが生まれたかというと、レアにバレないようクロノスは馬に化けてピリュラーと交わったからです。
ピリュラー可哀想ですね。
さて、ケイローンはあらゆる武術、そして音楽、さらには医学に長けています。
中でも弓矢は太陽神アポロンに学んだ神級です。
知恵者でもある彼には多くの英雄が弟子入りしています。
一部を挙げると、
アルゴー船のイアソン。
医術の神と呼ばれるアスクレピオス。
双子座になったカストルとポリュデウケス。
そしてヘラクレスです。
このように偉大なケンタウロスであるケイローンですが、その命を奪われたのはヘラクレスによってでした。
「12の功業」「12の難業」等と言われる、ヘラクレスの贖罪の戦い。
そのひとつ、エリュマントスの大猪狩りの際、ヘラクレスはケンタウロスのポロスという青年と知り合いました。
気分がよくなったヘラクレスは酒が欲しくなり、ケンタウロスたちの共有財産である酒に手を出したのです。
すると他のケンタウロスと揉め事に発展。
ヘルクレスは必殺ヒュドラの毒矢で次々ケンタウロスを葬ります。
慌てて逃げたケンタウロスを追ってぺリオン山へ向かうとそこはケイローンの住処でした。
なんということでしょう。
関係ないケイローンに流れ矢が当たり、ケイローンは苦しみだします。
神から生まれたケイローンは不死なので死ねないのですが、ゼウスに頼み不死を返上。そしてゼウスにより星座にしてもらいました。
それが射手座です。
ちなみにケンタウルス座というものもあり、こちらはヒュドラの毒矢を物珍しそうに眺めていたら足に傷をおい死んでしまったポロスの事なのでした。
ヘラクレスは現代でも英雄と呼ばれたかなあ。
英雄に復讐を果たす
とはいえそのヘラクレスもケンタウロスの謀略により人としての生涯を終えます。
妻と幼い息子を連れて川を渡ろうとした時、自身は息子を背負い、妻はそこにいた渡し守に頼んだのです。
その渡し守はケンタウロスで、かつてのヘラクレスとのいざこざの際にもいたのです。
逃げ仰せ、復讐の時を狙っていたのです。
ヘラクレスと子供が先に渡ると、待ってましたと妻に襲いかかります。
「愚か者め! ヒュドラの毒矢を喰らうがいい」
ヘラクレスの矢にケンタウロスは倒れます。
しかし死の間際に妻に囁いたのです。
「ヘラクレスほどの英雄が、いつまでもあんたを見ていると思うか?」
「なんという戯れ言を」
「聞け。オレの血は媚薬の効果がある。奴が他の女を連れてきたら、オレの血を奴に刷り込め」
その後、ヘラクレスは戦争からひとりの女奴隷を連れ帰ります。
それを見て妻はヘラクレスの下着に隠していた血を付け渡したのです。
こうしてヒュドラの毒が染み込んだ、ケンタウロスの血に触れたヘラクレスも最期を向かえましたとさ。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
ケンタウロスというともう少し理知的な戦士として描かれることが多い気もします。
『シャイニングフォース』シリーズではケンタウロスがパラディン的なデザインで多く登場しますよね。
しかしギリシャ神話ではそのようなタイプは稀。
多くは蛮族のような描かれ方をされます。
それともうひとつ。
アイキャッチにまで女性型ケンタウロスの画像を載せておいてなんですが、神話では女ケンタウロスというのは見かけないようです。
実際人間の女に発情してますし、結構謎な部分も多い種族だと思いますね。
それではまた!
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