【嘆きの妖精バンシー】彼女に泣かれるのは名誉の証【モンスターレビュー第16回】

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夜、家の外から女の泣き声が聞こえてくる。
そんな時はご用心。
あなたの屋敷へ訃報を伝えに現れた妖精さんかもしれません。

彼女の名はバンシー。

夜、家の前に現れて、さめざめと泣く女
なんだかホラーな感じがしますが、バンシーは決してアンデッド(死人)ではありません。
みんな大好き妖精なんです。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもバンシーとは何ぞや?

バンシーはアイルランドの妖精です。
妖精と言えばアイルランドです。覚えておきましょう。
近隣のスコットランド、ウェールズ、イングランドもそうですね。
要するにイギリスです。
イギリスと言えばケルト神話の舞台ですよ。

ケルト神話とは、ローマ時代勃興以前のヨーロッパ中西部で隆盛したケルトの人々の神話です。
ローマ帝国、キリスト教に飲み込まれ、ケルト神話は西の島国ブリテンから主にアイルランドに残るのみとなりました。ダーナ神族や英雄クー・フーリン、アーサー王の物語などが含まれます。

さて、バンシーとはゲール(アイルランド)語で「妖精の女」という意味です。
妖精全般を指すかのような名前ですよね。
シーが妖精です。
シーがつく妖精、結構思いつきませんか?
ケット・シーとか。リャナンシーとか。ピクシーもそうですね。

バンシーの見た目はいろいろあるのですが、以下の点が共通していることが多いです。

  • 髪は長い(白髪という説もあり)
  • 泣きはらしているので目が赤い(充血というより赤く輝く感じ)
  • 緑色の服の上に灰色のコート、あるいはマントを羽織る

ただし喪服だったり白いベールを被っていたりとパターンは様々です。

もう少し外見の話をすると、ただ立っているだけでなく、空を飛んで現れたり、棺を乗せた首なし馬の引く二輪馬車に乗って現れたりもするらしいです。
こういう馬車の事を「コシュタ・バワー」と呼ぶそうです。

バンシーは何故泣くのか


バンシーが夜、家の前で泣くのにはもちろん理由があります。

バンシーが泣きながら現れた家では、「必ず死人が出る」のです。

しかし安心してください。
バンシーは誰の家にでも現れるわけではありません。
バンシーが現れるのは由緒ある名家のみです。
由緒ある人物の「」だからこそ、予見に現れるのです。

しかし悲しむことはありません。
バンシーが現れるという事は由緒ある名家だと認められた証です。
家人や当人はむしろ「誉れ」であると捉えるそうです。

バンシーが夜現れ、家の前で泣いている場合、おおむね近々家人の誰かが亡くなります。
しかし亡くなる本人に伝える泣き方はしません。
家人の誰かに伝わるように泣きます。
家人が遠い地に旅行に出ていても関係ありません。
アメリカだろうがアフリカだろうが、バンシーはそこに現れるそうです。

さらにバンシーが大量に現れることが稀にあります。
大抵はひとりのバンシーが泣いているのですが、大勢のバンシーが現れることもあるそうです。
多ければ多いほど、名誉ある、偉人や勇者といった者が亡くなることを示唆しているのだとか。

ここでひとつ、勘違いはしないでください。
バンシーはあくまで死を予見するのみです。
決してバンシーが自ら手を下すという事はありません。
死因は必ず別にあります。
そういうわけでバンシーが誰かに危害を加えるという事は通常あまり考えられません。

バンシーの特殊能力


バンシーは「泣く」と言っても悲しみのあまりさめざめと泣く、というのではありません。

「金切り声」を上げるがごとく絶叫するそうです。深夜に。

これを「バンシーボイス」と言います。
聞いたらショックで麻痺ぐらいはするかもしれませんね。

先ほど危害を加えるようなことはない、と書きましたが、なにしろ絶叫を上げて泣くぐらいです。
ヒステリックになってツメによるひっかき攻撃ぐらいはあり得ましょう。
運悪く引っ搔かれればこれまた麻痺というステータス異常ぐらいあり得ますね。イメージ的に。

以上はゲーム的なモンスターとして考えた場合の一例です。
他にもエナジードレインや精霊召喚ぐらい使いこなしそうですよね。

実はバンシーは「死人の着物を洗濯する」という意外な一面もあります。
川のほとりで洗濯する様を目撃したという話があるのです。
日本にも三途の川の奪衣婆(だつえば)という存在が語られますが、死装束という概念に何かしら繋げたがるのですかね。

実は幸運ももたらすバンシー


バンシーは(特に創作界隈では)わりと美しく描かれたりもしますが、その逆もあります。
スコットランドでは醜いものとして考えられてきました。

  • 鼻の穴が一つ!
  • 前歯が出っ張ってる!
  • 乳房がだらりと垂れ下がっている!

山姥みたいなイメージでしょうか。
この恐ろし気な山姥のその乳房を吸うことが出来ますか?
それが出来る者は「勇者」と称えられ、山姥バンシーが「3つの願い」を聞いてくれるというご褒美がもらえるそうです。
ついでに誰が亡くなるのか、その名を教えてもらえるのと、詩人としての才能まで授かれるそうです。

よっぽど恐ろし気な姿をしているのでしょうね。滅多にその乳房を吸えないぐらいに。

まとめ

  • バンシーはアイルランド地方の妖精
  • 夜、家の前で泣いていると家人の誰かの死を予見している
  • 泣き方は絶叫に近い。バンシーボイスという。
  • 由緒ある家の前にしか現れない。

いかがだったでしょうか。

バンシーで思いつくのは『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』。
ユニコーンガンダムの二号機にあたる黒いガンダムが「バンシィ」と呼ばれます。
白いユニコーンに対して黒い塗装のバンシィですが、実はデザインのモチーフは獅子だそうです。

バンシーとはいわゆる「泣き女」かと思います。
位や身分の高い者が亡くなった時に、集まって泣くのが仕事であった人たちです。
葬儀を盛り上げるために妖精バンシーに見立てたのが「泣き女」なのか。
逆にこの風習が幻想文化として「妖精バンシー」を生み出したのか。
しかし悲しむことではない。
バンシーが泣くのはあなたが認められたからなのだ、と。
誉れに思う事なのだと。
死を前向きに受け入れようとする人々の信念が透けて見えるようではありませんか。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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