かのアレクサンドロス大王は、槍の穂先に乗せた餌で8匹のグリフォンを釣り上げ、自らの戦車を牽かせ大空を飛んだと言われます。
上半身が鷲、下半身が獅子というこの魔獣は、その昔、実在すると言われてきました。
それにつけても大王の伝説は盛りすぎだと思います
ということで、今回はまたまたメジャーな怪物、グリフォンについて調べてみました。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもグリフォンとはなんぞや?
グリフォンとは頭部から前足にかけては鷲、胴体と後ろ足が獅子、そして大きな翼を持つモンスターです。
- 鷲とライオンの間から生まれたとされます。
- 体色は全体的に茶系と言われますが、瞳は赤、首周りは蒼い毛並み、翼も青色か白色という目撃例もあります。
- 身体の大きさは2.5メートルほど、翼は広げると幅7.5メートルほどになるそうです。
- 鋭い爪やくちばしで相手を引き裂くことができます。
- 強い力で牛や馬などの家畜を鷲掴みにしてしまいます。
- 高度数千メートルからでも得物を識別できる目があります。
肉食ですが実は大の馬嫌い。
あまり人間を襲うことはないのですが、乗馬中に遭遇すると馬を襲うために乗り手の人間も巻き添えを食らう事があります。
助かりたかったら愛馬を見捨てて、自分だけ避難することを推奨します。
名前の由来はギリシャ語のグリュプスからで、意味は「曲がったくちばし」。
一般的に「グリフォン」と呼ばれますが、これはフランス語読みです。
英語では「グリフィン」。
ラテン語では「グリプス」。
英語読みで統一したい場合はグリフィンとするのがいいでしょう。
語源はギリシャ語ですが、グリフォンの発祥はインドから中東にかけてです。
『旧約聖書』に登場するグリフォンは、身体が牛で蛇の尾があります。
アジアではトサカがあり、ギリシャではタテガミがあります。
各地を変遷する間に姿が少しずつ変化していきました。
同様に役割も変わります。
主に宝物庫の番人としての役割を担いましたが、ギリシャに伝わる頃には神々の戦車(チャリオット)を牽く役をしていました。
その存在は紀元前3300年ごろにはすでに確認されています。
時代が経ち、中世になるとヨーロッパにおいて王侯貴族たちが紋章に採用するケースが増えました。
ドラゴンに並んで非常に人気があったモチーフのようです。
「王」「知識」のシンボルとされました。
創作においてはグリフォンは敵モンスターとして、主に宝物庫の番人などで登場します。
または騎乗用モンスターとしての扱いも見受けられます。
大まかな概要についてはこの辺りでしょうか。
グリフォンの存在感
その歴史は数多いるモンスターの中でもかなり古く、紀元前3300年には原型とされる姿が古代メソポタミアにて描かれていました。
例えば有名モンスターであるスライムなどは1953年に刊行された『スライム(邦題:沼の怪)』という小説が起源です。
雑魚戦闘員として便利に扱われるオークも『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』が起源ですしね。
ハッキリとしたグリフォンの姿絵は紀元前17~18世紀のインドにて、タペストリーに描かれたものが確認できているそうです。
さらに紀元前15~16世紀には小アジア(現トルコ近辺)に伝わり、建物の中に印章として見出せます。
紀元前14世紀にはギリシャにて、文章として書き記されているに至ります。
詩人アリステアスが詩の中に書いたグリフォンは、ひとつ目の民族アリマスポイ人との戦いです。
実はグリフォンは黄金を護る宝物庫の番人としての役割を与えられていました。
その黄金を狙うアリマスポイ人と日夜戦い続けているのです。
このことはヘロドトスの著書『歴史』にも書かれています。
ギリシャ神話の世界観では世界の東の果てはコーカサス山脈という場所であるとされています。
グリフォンはこの山脈に棲み、黄金を護っています。
東には遊牧騎馬民族スキタイ人がいました。
彼らは現在のウクライナ南部にいたとされ、祖先はあの英雄ヘラクレスだとされます。
スキタイ人は早くから黄金を加工する技術を持っていたそうで、グリフォンとアリマスポイ人のエピソードのベースとなったのかもしれません
中東では主に宝物庫の番人をしていましたが、ギリシャ神話に流れてくると一転、太陽神アポロンや復讐の女神ネメシスなど、神々の戦車(チャリオット)を牽く聖獣としての役割を担います。
とはいえ酒と葡萄の神ディオニュソスの酒蔵を護る番人としての一面もありました。
そしてここがこのモンスターの重要なポイントですが、戦車を牽くという事は、同じ役目を担う「馬」とはライバル関係という事になります。
そのためグリフォンは馬に対して強烈な敵対心を持ちます。
グリフォンは肉食ですが、特に牡馬を狙います。
幸いなことに人間を食べようとはしませんが、乗馬中に遭遇した場合は見境がありません。
助かりたければ愛馬を乗り捨て自分だけでも逃げることをお勧めします。
ただし、その馬が牝馬であった場合、グリフォンはその牝馬を孕ませようとします。
グリフォンと牝馬の間からはヒポグリフという頭は鷲、身体は馬というモンスターが生まれます。
こちらはグリフォンほど気性が荒くはなく御しやすいとされます。
それでも父親の影響でしょうか、好物は馬肉だそうです
ギリシャでは戦車を牽く聖獣でしたが、グリフォンは各地を変遷する間に様々な役割を担ってきました。
- バビロニア創世記では地母神ティアマトが生んだ11の魔獣のひとつ(ウム・ダグルチュ?)とされました。
- エジプトではスフィンクスの一種で、鷲ではなく隼(ハヤブサ)の頭を持つヒエラコスフィンクスと呼ばれました。
- 『旧約聖書』創世記ではエデンの番人とされ、智天使ケルビムが獅子でなく牛の身体のグリフォンとされました。
- ダンテの『神曲』にも楽園で神秘的な行列の先頭を行く馬車を牽いていたのが4匹のグリフォンでした。
そして中世においては地上の王ライオンと、空の王ワシの組み合わせが、ドラゴンをもしのぐ強さの象徴とされ、貴族たちの紋章として大変人気を博したというわけです。
グリフォンに乗ろう
グリフォンは騎乗用として訓練することも想定できます。
熟練した魔獣使い(ビーストテイマー)ならではの所業と言えます。
グリフォンはおよそ2年で成育するとされますが、ヒナに近いうちから接することでより可能とされます。
生まれる前のグリフォンの卵は市場に出回ることもあります。
ですが生まれたてのヒナドリである方が高価で取引されるため、通常孵化してから軒先に並べられることが多いです。
ですので卵の状態で売られていた場合、それが本物であるのか見極める確かな目が必要になります。
この点でもビーストテイマーの目利きが必要となり、かつ実際に騎乗用として調教するのは大変難しいため、ご自分でなさるのはあまりお勧め出来ません。
多少高くついても名うてのビーストテイマーを雇う事です。
高額なグリフォンを飼おうというあなたなら、調教師としてビーストテイマーを雇うぐらい訳ないでしょう。
というように、一般人にはなかなかに敷居の高い事であるため、グリフォンに騎乗できるのは神かそれに近い者に限られるというわけです。
例えば『BASTARD 暗黒の破壊神』に登場する雷帝アーシェス・ネイはグリフォンに騎乗してましたね。
ああいうキャラクターでもない限り分不相応というものです。
まとめ
- 頭は鷲、身体は獅子の聖獣
- 黄金を護る宝物庫の番人
- 神々の戦車を牽く
- 牡馬は食べるが雌馬は違う食べ方をする
- 貴族の紋章としても人気が高い
いかがだったでしょうか。
グリフォンの扱いで変わったところと言えば意外にも『ドラゴンクエスト』です。
ゲームボーイアドバンスで発売された『ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート』では、ラダトーム城の地下にグリフィンクスという黄金に輝く守護神像との戦闘があります。
はげしい炎や、なんと勇者専用の呪文ギガデインを使う強敵です。
「黄金」「スフィンクスを思わせる名称」と、何気に原典をにおわせる設定ですよね。
オリジナル要素の強い印象を持たせるドラクエシリーズ、当ブログでもさんざん言及していますが、実は原典になぞらえた設定の宝庫なのですドラクエは。
他に少し気になると言えば『ベルセルク』というマンガに登場するグリフィスというキャラクターです。
このマンガはガッツとグリフィスという二人の英雄の物語なのですが、グリフィスという名はグリフォンを連想させますよね。
ラテン語ではグリプスですし。
貴族らが好んだグリフォンですから、名前としても悪くない。
ただこのグリフィスは物語では「鷹」と呼ばれるのです。
率いた部隊も「鷹の団」。築いた王国の名も「ファルコニア」です。
鷲じゃないんですよね。
まあどうでもいいことか。
以上です。
それではまた!