ティアマト。またはティアマット。
古代バビロニアの地母神であるこのモンスターをご存知ですか?
おそらく多くの人がティアマトと聞いて思い浮かべるのはドラゴンの姿じゃないでしょうか?
それは半分正解です。
実はティアマトはバビロニアにおいて創造の女神と言われる存在。
多くの神々を生んだのです。
そしてその神々と争い、敗れました。
調べてみたところ、想像以上にレベルが高いモンスターでした。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもティアマトとはなんぞや?
- 女神でありドラゴンであり大抵ボスクラス扱いである
- 世界最古の神話シュメール神話を改変したバビロニア神話(含めてメソポタミア神話という)における最初の神
- 『ファイナルファンタジーI』では風のカオスとして四天王最後のボス
- 『デビルサマナーソウルハッカーズ』ではダークサマナーであるナオミが戦ったラスボス手前の大ボス
- 「海」を神格化した女神であると言われる
こんなところでしょうか。
ティアマトは男神アプスーと共に神々を生み出しました。
日本神話のイザナギとイザナミみたいなもんです。
そうして次々と若い神々が生まれるにつれ、この世は喧騒に包まれるようになりました。
それに嫌気がさしたアプスーは、神々を粛清しようとするも、逆に殺されてしまいました。
怒ったティアマトは11の怪物を生み出すと神々に復讐を始めます。
それを止め、最高神に昇り詰めるのがマルドゥークという神なのです。
と、以上がティアマトに関する概要となります。
創造叙事詩『エヌマ・エリシュ』
『エヌマ・エリシュ』とはバビロニアの創造神話が書かれた7枚の粘土板です。
この粘土板のおかげでバビロニア神話以前のシュメール神話も推し量れたと言えます。
というのも、世界最古の神話と言われるシュメール神話は、その後アッカド神話、バビロニア神話と上書きされていくからです。
大まかなストーリーはあまり変わらないと言われますが、神々の名前は変更されていたりします。
『エヌマ・エリシュ』
天地の区別もない混沌とした空間に、「真水」であるアプスーと、「塩水」であるティアマトが漂っていました。
真水と塩水が激しく混ざり合うと、原初の神ラフムとラハムが生まれました。
その二人からアンシャルとキシャルが生まれ、さらにこの二人から天空神アヌなどの主要な神々が生まれました。
まあ途中の神の名前はあまり重要ではないです。
男神アプスーは「真水」、女神ティアマトは「塩水」、つまり海を神格化しています。
水から生命が生まれたとされる説をこの神話でも踏襲しているのです。
さて、神々が多くなると喧騒も増し、静かに過ごしたいアプスーはイラ立ちを隠さなくなります。
そこで彼らを皆殺しにしてしまおうとティアマトに呼びかけますが、そんな馬鹿なことはない、とティアマトも突っぱねます。
しかしここで天空神アヌに並ぶ三大神のひとり、水と知恵の神エアが計画に気付き、逆にアプスーとその子であり従者でもある霧のムンムを殺してしまいました。
さらにその亡骸の上に家を建て、妻を住まわせたのです。
なにやってんだエア……
さすがに、さすがに夫を殺され、家まで建てられては黙って見過ごせない。
温厚なティアマトもキレてしまい、怒りで戦闘形態であるドラゴンモードを発露させます。
はい。ここでドラゴンの登場です。
ティアマトは最初からドラゴンであるとか、動物や蛇、鳥の合わさったキメラ的な外見であったとか色々言われます。
ですが怒りでバトルフォームに変身、それが大海に身をくねらせるドラゴンの姿である、というのはとっても創作力が効いててカッコいいと思いませんか?
新たに生み出した11の怪物
ティアマトは神々に復讐するため、新たに11の怪物を生み出します。
列挙しますね。知っているモンスターがいるでしょうか。
- ムシュマッヘ(7つの頭を持つ大蛇)
- ウシュムガル(凶暴な竜)
- ムシュフシュ(サソリの尾を持つ竜。後に聖獣となる)
- ウガルルム(巨大な獅子)
- ウリディンム(狂犬のような獅子人間)
- ウム・ダブルチュ(獅子の体に鷲の頭を持つ嵐の魔物)
- ラハム(海魔、原初の神とは別?)
- ギルタブリル(サソリの尾を持つ人間)
- クサリク(有翼の雄牛)
- バシュム(角の生えた毒蛇)
- クルール(雄の人魚)
ちょっとマイナー過ぎひんか?
英雄神マルドゥクの戦い
さらにティアマトはアプスーとの間の子であり、2番目の夫としたキングーに「天の書板」を与え指揮官に任じます。
「天の書板(トゥプシマティ)」とは主神と同等の力を得るマジックアイテムです。
無敵の象徴みたいな扱いを受けてます。
以前「ズー」の記事でも少し触れました。
いざ戦いが始まるとティアマトの猛攻の前に神々は恐れおののく。
次々とティアマトに丸飲みにされていき、アヌもエアも敗北を重ねます。
メソポタミア神話の神々は何かあるとすぐに緊急会議を開くことが多いのですが、今回もそうです。
誰かティアマトを討ち取れる者はおらんか、と緊急会議が催されます。
そこで名乗りを上げたのが都市神であり農業の神でもあったマルドゥクです。
マルドゥクは事の発端である水と知恵の神エアの息子でした。
彼はティアマトを討ち取ったら自らを最高神にすることを条件に討伐に向かいます。
マルドゥクは「7つの風と洪水」で武装し「嵐の戦車」に乗り込みます。
何それカッコいい!
そして捕縛用の巨大な網を持つとティアマト率いる怪物軍団の前へと出たのです。
さあ戦闘開始です!
・1ターン目 マルドゥクは【挑発】のアビリティを使った
他の怪物に手出しをさせぬよう、まずはティアマトを挑発します。
・2ターン目 マルドゥクは【捕縛用の網】を使った
前へと出てきたティアマトを捕縛用の網で絡めとります
・3ターン目 マルドゥクは【悪風(イムフラ)】の呪文を唱えた
突風がティアマトに襲い掛かります
・4ターン目 ティアマトはその悪風(イムフラ)を飲み込みだした
だんだんと大きく腹が膨れていきます
・5ターン目 マルドゥクは【悪風(イムフラ)】を唱え続けた
ティアマトは口を閉じることが出来ない
・6ターン目 マルドゥクは弓矢で攻撃した
ティアマトの口から腹の中に矢が飛び込み心臓を突き刺した
ティアマトは倒れた
怪物たちは逃げ出した
以上が戦いの流れです。
その後マルドゥクはティアマトの身体を解体します。
ティアマト、大地になる
マルドゥクはティアマトの身体を二つに裂きました。
そしてそれらは天空と大地になります。
両目はそれぞれチグリス川とユーフラテス川の源流になりました。
唾は雲に、胸は山になりました。
生えていた尾は天の川になりました。
そのあとで逃げたキングーも倒し、その血と骨から私たち人間を作りました。
この功績をたたえ、マルドゥクは要望通り、最高神として君臨したのです。
以上が『エヌマ・エリシュ』の大まかな内容なのですが、この神話が成立したのはおよそ紀元前18世紀ごろ。
「目には目を、歯には歯を」で有名な法典を作ったバビロニア王ハンムラビ治世下のころだそうです。
ティアマトが出てくる作品
『ファイナルファンタジー』
FFの1作目は地水火風4つのカオスというボス的が存在します。
その4つ目、「浮遊城」の主が「風のカオス」ことティアマットです。
おそらく私個人的に初ティアマトでした。
FFでは「ティアマット」と表記されます。
海を司る神ですが、FFでは風です。
マルドゥクの風にやられたから風のカオスなんですかね?
関係ないんですけど、『FF1』のリメイク作品には一言言いたい事がありまして。
ティアマットのいる「浮遊城」のデザインを中世の城風にするのやめてください。
バックを青色で統一するのもやめてください。
原作FC版は背景黒です。ダンジョンも灰色です。天野喜孝氏のイメージイラストも宇宙空間を思わせます。
あそこは古代人の打ち上げた「人工衛星」なんです。それを「浮遊城」と呼んでいるのです。
単に城が浮いているイメージじゃないんですよ。
ついでに言うとオープニングの橋を渡ったグラフィックもFC版のように黒いシルエットと緑の空にしてください。
叙情感が段違いです。
それ以外はDS版もPS版もPSP版もOkです。WS版は未プレイです。
ピクセルリマスター版はPS4版が出たらセールに来たら買います。
『デビルサマナーソウルハッカーズ』
終盤、3回目のビジョンクエストにて、ダークサマナーのナオミが戦う相手がティアマトです。
ここではアプスーかティアマト、どちらかと戦えばOKで、どちらを倒したかでその後のラスボスの耐性が変化する仕組みでした。
『女神異聞録ペルソナ』と並び、悪魔絵師、金子一馬先生が最も脂の乗っていた時代の作品だと思っています。
ティアマトのデザインもサイケ感が漂っています。
ただこの頃の私はティアマトをただのドラゴンの一種だとしか思っていなかったので、終盤の強ボス感を感じられず拍子抜けしちゃってました。
アプスーに至っては誰ですか? でしたしね。
ソウルハッカーズは他にも高レベルの悪魔がいるのですが、知識のなかった頃なので、ルシファー以外みんな雑魚って思ってました。
もう本当にスイマセン。
まとめ
いかがだったでしょうか。
世界最古と言われるシュメール神話を造り変えて生まれたバビロニア神話。
その創造の女神であり、ラスボスであるというだけでかなりの高レベルだと思いませんか?
『旧約聖書』よりもずっと前の時代ですよ。
実績に反してティアマトのイメージは少し軽く見られている風潮が感じられます。
そんな風潮を是非あなたの創作力で吹き飛ばしてみませんか?
みなさんの創作力を発揮して新たなティアマトを生み出してみてください。
それではまた!