首が多い怪物と言えば何が思い浮かぶでしょうか?
いっぱいいるとは思いますが、こんな名前を思い浮かべたりはしませんか?
それはヒュドラです。
ギリシャ神話で1番有名なドラゴンと言えば、おそらくこのヒュドラではないかと思われます。
ドラゴンといえばトカゲ、爬虫類を連想しますが、ギリシャ神話では蛇の方がドラゴンを表す形容詞として多用されている印象です。
というわけで、今や「多頭」の代名詞とも言えるヒュドラについて調べてみました。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもヒュドラとはなんぞや?
ヒュドラとはギリシャ神話に登場する、たくさんの首を持つ大蛇の事です。
ヒュドラ(hydra)、またはヒドラは、ギリシャ語で「水蛇」を意味します。
英語読みでは「ハイドラ」。
ゲームとかで水系の事をハイドロと使われている例があったりもしますよね。
ヒュドラは多数の首を持ち、その数は基本的には9つ。
しかし説によっては5から数百ととりとめがありません。
恐ろしいことにその首は、切り落としてもその断面から新たに2つに増えて生えてくると言われます。
だから首の数には諸説あるんですね。
全長は10メートルほど。
4本の短い足に鎖のごとく堅い鱗。
色は灰色がかった茶色で、泥の中を這いずると保護色となる。
目は琥珀色かオレンジ色で、黄ばんだギザギザの歯が並び肉食です。
そしてヒュドラのもっとも恐ろしい点は、再生する首ではなく、体内に流れる猛毒です。
触れただけで肉体を腐らせ、神ですら地獄の苦しみを味わうとされます。
このような怪物を生んだのはギリシャ神話最強のラスボスである魔獣テュポーンとエキドナです。
そしてこのような恐ろしい怪物を退治した英雄こそ、かのヘラクレスなのです。
ヘラクレス2番目の戦い
ヒュドラのエピソードで最も有名なのは、英雄ヘラクレスの成し遂げた十二の功業の二つ目、「レルネーのヒュドラ退治」でありましょう。
アルゴスの南7キロ地点、レルネー地方のアミュモネ河の水源近く、すずかけの木の下にある洞穴に棲むヒュドラ退治を命じられたヘラクレスは、甥のイオラオスを従者に伴いやって来ます。
周囲はヒュドラの吐く猛毒のため草木は枯れ、生物の姿もありません。
いや、よく見るとそこらの沼地に蟹がいるのを確認できます。
ヒュドラの棲む沼地にあるあるなのですが、何故か蟹だけはヒュドラの毒に耐性があるようなのです。
洞穴から這い出てきたヒュドラに対しヘラクレスは戦闘を始めます。
ネメア谷の獅子の皮で作った防具と、息を止めながらの接敵で毒をかわしつつ、切り落とした首の断面にはイオラオスに松明の火で焼かせて再生を防ぎます。
しかし最後に残った中央の首だけは斬れません。
その首だけは不死なのです。
そこで深く掘った穴にヒュドラを落とすとその上から大きな石で押し潰してしまいました。
しかし見事にヒュドラを退治したヘラクレスですが、この戦いはイオラオスに手伝わせたために理不尽にもミッション失敗を言い渡されてしまいましたとさ。
星座になった蛇とカニ
ちなみにこのヒュドラはこの後、天に上り「うみへび座」という星座になりました。
ギリシャ神話あるあるですね。
3月上旬、南の空に横たわる巨大な星座です。
うみへび座は頭がひとつしかありませんが、これは最後に残ったヒュドラの不死の首なのだといいます。
頭部分はかに座の南から始まり、全ての星が昇りきるまでに7時間もかかります。
そのかに座ですが、その蟹こそがヘラクレスとヒュドラの足下でわちゃわちゃと逃げ惑っていた蟹です。
戦闘の最中、ヘラクレスに踏み潰された蟹が天に上り星座になりました。
んー、デスマスクさんさあ~。
必殺ヒュドラアロー
ヒュドラの恐ろしさは体内に蓄えられた猛毒です。
ヘラクレスは退治したヒュドラの肝臓に用意した矢じりを浸し、毒矢をこさえます。
これが今後ヘラクレスの必殺の武器となります。
しかし悲劇も生み出します。
例えば多くの勇者を教育し、自身もその教えに携わった師匠、ケンタウロスの賢者ケイローンにこの矢を誤射してしまい、彼の命を奪ってしまいました。
そしてヘラクレス自身もまた、この毒の餌食となるのです。
全ての難業を終え、その後も数多の活躍を見せたヘラクレスは、新たな妻ディアネイラと大きな河を渡ろうとした時です。
先にヘラクレスが渡り、妻を河にいた渡し守のケンタウロスに頼みました。
しかしてそのケンタウロスは中洲まで辿り着くとおもむろにディアネイラに襲いかかったのです。
させじとヘラクレスの毒矢がケンタウロスに命中します。
実は彼はケイローンが殺された時、その現場にいたのです。
仇を討つためにこの時を虎視眈々と狙っていたわけです。
彼は死に際にディアネイラに囁きます。
「ヘラクレスはいずれ他の女に心変わりする。その時オレの血を奴の衣服に染み込ませろ。心を繋ぎ止めておける」
そして時は流れ、ある戦争が終わるとヘラクレスはひとりの女奴隷をつれて帰還します。
ディアネイラは不安に陥りヘラクレスの下着に採っておいたケンタウロスの血を染み込ませて履かせたのです。
途端、ヘラクレスは悶え苦しみだします。
そして気付くのです。
これはヒュドラの毒だ。もう絶対に助からない、と。
こうしてヘラクレスは自ら燃え盛る炎に飛び込み「人間」としての生涯を終えたのです。
ギリシャ神話最大の英雄を死に至らしめたのは、紛れもなくヒュドラの毒なのでした。
ちなみに死後天界に上り晴れて神として列せられました。
女神ヘラとも和解し、ヘベという新しい妻も娶っています……おおディアネイラ。
ヒュドラの出てくる作品
『BASTARD!! 暗黒の破壊神』
メタ=リカーナの街に進軍するヒドラ。
城の地下宝物庫からよみがえったD.Sのゴーレムとガチンコバトルを見せてくれます。
『ドラゴンクエスト3』
3にて五つ首のヒドラ、キングヒドラが登場。
キングヒドラは大魔王ゾーマの側近にして勇者の父オルテガを亡き者にした強敵です。
『ドラゴンズドグマ』
ハイドラの名で登場。
物語序盤で戦うことになるのですが、ファーストコンタクトはその迫力に圧倒されました。
ドラゴンというよりまんま大蛇ですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ちなみになんですが、我が敬愛する特撮監督レイ・ハリーハウゼンは『アルゴ探検隊の冒険』にて金羊の毛皮を守るヒュドラを登場させています。
このヒュドラ、首の数が7本なのですが、これは9本でなく2本減らすことで撮影の手間を省いたのだそうです。
当時はCGなどなく人形のコマ撮りですからね。
情熱がなきゃあ出来ませんよね。
興味がおありの方は是非鑑賞してみてください。
そして負けないぐらいの傑作を自身でも生み出しましょう。
それではまた!