あなたは今まで、なにひとつ、罪など犯していないと胸を張って言えますか?
ヒトは皆、必ず何かの罪を背負って生きています。
罪とは犯罪や法律ばかりではありません。
食べ過ぎ(暴食)、エッチ(姦淫)、他人に当たり散らす(憤怒)。
胸に手を当ててみてください。
いざ、神の御前に跪いた時、あなたは心から無罪を証明することが出来るでしょうか?
いやしませんよ、そんな人。
今回のテーマはエンジェルです。
エンジェル、日本語で天使のこと、ご存知ですか?
弓と矢を持ったキューピッドのことではありませんよ。(あれはギリシャ神話の神です)
エンジェルとは絶対的な正義、故に無慈悲な神の軍団です。
絶対無敵の光の軍勢、皆様の創作の参考になるかと思います。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもエンジェルとはなんぞや?
エンジェルとは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教における天使、すなわち神の威光を示す霊的存在のことです。
語源はユダヤ人の使うヘブライ語「マラーク(伝令の意)」をギリシャ語に訳した「アンゲロス」の英語読みが「エンジェル」なのです。
そう、伝令です。
エンジェルとは神の意志を天から地上に伝える伝令の役目を負った者たちです。
これを「天からの使い」=「天使」と日本語訳した人のセンスは素晴らしい!
一般に見る天使のイメージとは、
- 頭部に光る天使の輪
- 白い清楚な衣
- 白鳥を思わせる優雅な羽根
- 美しく中性的な顔立ち
と言ったところでしょうか。
天使とは主に『旧約聖書』『新約聖書』『コーラン』他、数多の聖書の外典、偽典に登場します。
なのでユダヤ教、キリスト教、イスラム教が出典です。
多神教でなく唯一神を崇める単神教であるため、「神以外の超存在」が必要とされたためでもあります。
天使の発祥は中東のイスラエルです。
中東と言われると意外と思われるかもしれませんね。
天使とは『旧約聖書』を書いたユダヤ人の生み出した概念です。
そのため天使(あるいは悪魔も)は『旧約聖書』が書かれた紀元前6~3世紀ごろ、ユダヤ人の住んでいたイスラエル周辺の「ゾロアスター教」や「エジプト神話」、「バビロニア神話」などの影響が見てとれます。
そしてユダヤ教からキリスト教に変わるにつれ、「ギリシャ神話」の影響も受け、現在の天使のイメージが出来上がったようです。
ギリシャっぽいでしょ。天使の衣装。
天使の姿形
天地創造において、神は最初の7日間で世界を創りました。
天使は神が「炎」から作り、人間は神が「土」から作りました。
神は自分にそっくりな姿に創った人間を側に置こうとしましたが、天使たちが「人間は不完全な生物だ」と猛反発したため、地上の一角に置かれました(エデンの園)。
天使の身体と性別
天使たちは天界では実体を持たないエーテル体(天体の世界を構成する原質)で存在しており、地上へ赴く時だけ物質化し、人間に似た姿となります。
頭部で光る天使の輪は後光を表します。
男女の別はなく、すべからく中性的な美貌の主として描かれます。
ただしこれには異論も多く、「受胎告知」などで知られる、かのガブリエルは女性の天使とされるのが一般的です。
背中の羽根について
時代により捉え方が違うのが、天使のアイデンティティとも言える背中の羽根です。
そもそもより高次で霊的な超存在である天使に羽根は必要ないのです。
天の神と地上を行き来するのに空を飛ぶイメージはなるほどと思いますが、例えば東洋の神々や天女なども空を飛ぶが羽根は描写されません。
ドラゴンに羽根はあっても龍にはないのも一緒です。
元々古来より霊的な超存在に羽根を描く習慣はあったようですが、それが西洋では文化としてより大きく発展したのでしょう。
4~6世紀にかけて、翼を持つ天使が芸術作品として多く描かれるようになりました。
最初の頃は光の羽のようなものだったのが、かのレオナルド・ダ・ヴィンチがリアルな鳥の羽根で描いたことが現在のイメージの元であるという話も聞きます。
新たな解釈を常識として定着させるのが本物の天才と言えますでしょう。
天使の位階(セラフィム・ヒエラルキア)
天使についての研究は11世紀ごろ、中世の時代になってから盛んに行われるようになりました。
意外と思われるかもしれませんが、実は聖書自体にはあまり天使は登場しません。
ミカエル、ガブリエル、ラファエルの三人ぐらいです。
そのため聖書には組み込まれなかった外典、偽典をかき集め、天使の役割や組織図、生態などが神学者の間で論じられました。
そうしたなか、主に参考にされたのが、5世紀ごろの神学者、偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた九つの天使階級、いわゆるセラフィム・ヒエラルキアです。
これは現在でもよく参照されるものなので、この際皆さんも覚えてしまいましょうね。
□上級三隊
第一の位階 「 熾天使セラフィム (単数形はセラフ) 」
「燃える」という意味を持つ。
六枚の羽根を持ち二枚で顔、二枚で足を隠し、残りの二枚で飛翔する。
聖歌「サンクトゥス」(聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな~)と刻まれた旗、または燃える剣を所持する。
第二の位階 「 智天使ケルビム (単数形はケルブ) 」
「仲裁」という意味を持つ。
四枚の羽根、四つの腕と顔を持ち、輝く車輪に乗っている。
武器は稲妻。
第三の位階 「 座天使スローンズ (単数形はソロネ) 」
「玉座」または「車輪」という意味を持つ。
神の玉座、または戦車を運ぶ役割。
□中級三隊
第四の位階 「 主天使ドミニオンズ 」
「統治」「支配」
神の言葉、威光を知らしめる役割。
第五の位階 「 力天使ヴァーチューズ 」
「高潔」「美徳」
地上に実現象としての奇蹟をもたらす。英雄を導く役割。
第六の位階 「 能天使パワーズ 」
常に戦闘形態、臨戦態勢を維持する。
絶対悪と戦うことがメインミッション。
□下級三隊
第七の位階 「 権天使プリンシパリティズ 」
「国家」「指導者」を守護、監視する役割。
第八の位階 「 大天使アークエンジェルズ 」
人間界に直接介入する天使。
第九の位階 「 天使エンジェルズ 」
一般兵
このうち直接地上に降りて神の代行者となるのは八位アークエンジェルズと九位エンジェルズまでと言われます。
この位階は現在でも天使の階級としてメジャーな程に浸透していますが、問題も孕んでいます。
実はこの階級が制定される以前から「大天使」とされる例えばミカエルやガブリエルなどが居たわけです。
その大天使が第八位に位置付けられてしまったから大変です。
ここをなんとかこじつけなくてはなりません。
まとまらない天使学
このような階級を偽ディオニシウスが定める以前から、より上位の天使、大天使という概念は存在しました。
しかしその「大天使」を第八位にしてしまったため、いろいろと齟齬(そご)が生じたわけです。
特に最強最高であるはずの天使長ミカエルは、あろうことか大天使です。
しかしこのセラフィム・ヒエラルキアはすでに浸透していたため、あらゆるこじつけが行われました。
さあ中世の創作者たちの腕の見せ所です。
- 天使長ミカエルは大天使であり、一位の熾天使でもある兼任説。
- 天使長ミカエルは大天使時代に反逆者ルシファーを討ったことで一位の熾天使に昇格した説。
- そもそも大天使より上位は神により近い位置に存在するため、我々には知覚すら出来ない。よってミカエルより強いのはまだいるよ説。
他にも色々ありそうですけどね。
そういった喧々諤々な試みのなか、データとして色々まとめられたものもあります。
それが天界の構成であったり、天使の総数です。
一応全天使の数は 20,165,572人 と決まりました。約二千万人。
が、安心してください。もちろん異論もあります。
- 人ひとりにつき二人の守護天使がつくので、常に人口の2倍の数がいる説。
- 草一本、砂一粒にも天使が守護するので数えきれない説。
結局まとまらないんですね。
四大天使
なかなかまとまらない天使学ですが、ちゃんとまとまっているものももちろんあります。
それが最強の四大天使のメンツです。
この四大天使だけは概ねユダヤ教でもキリスト教でも一致しています。
四大天使とは以下の四人です。
- 東は「火」のミカエル
- 北は「水」のガブリエル
- 西は「風」のラファエル
- 南は「地」のウリエル
この中で実は『旧約聖書』『新約聖書』に登場する天使はミカエル、ガブリエル、ラファエルの三人のみです。
ではなぜウリエルが満場一致で四人目に選ばれたのか?
それは聖書には正式採用されなかった多くの外典、偽典において、ウリエルが突出した存在であったためと思われます。
七人の大天使
四大天使とは別に七大天使という括りもあります。
が、こちらはメンツに関して諸説入り交じり状態。
まず上記の四大天使は確定として、残り三席。
ラグエル、ラミエル、サリエル、メタトロン、カマエル、ハニエル、サラカエルといった面々が候補です。
当然のことながらこの選考基準にも異論が噴出。
時代によって入れ替わりが起きてます。
そもそも彼らのような個人名を持つ天使は「大天使」とされていたのに、第八の位階の呼称にされたことで大天使の数が膨大に膨れ上がってしまいました。(下位の天使ほど人口が多い)
一応天使の資料として最も有力な外典『エノク書』(大丈夫だ、問題ない)によると七大天使とは、
ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル、ラグエル、サラカエル、レミエルとされています。
レミエルなんてさっきの候補に出てないじゃん!
御前天使
このように七大天使は論争の的になるため、「御前(みまえ)天使」と呼称を改め、人数も七人にこだわらない、という措置がなされました。
なんか順位を決めない徒競走みたいだね。
17世紀の作家ミルトンもこの御前天使を十二人設定しています。
ミカエル、メタトロン、スリエル、サンダルフォン、アスタンファエウス、サラカエル、ファヌエル、イェフォエル、ザクザガエル、ウリエル、イェフェフィア、アカトリエルです。
なんとガブリエルが外されています。
一説によるとガブリエルは女性とされることから外されたという見解も成されています。
ラファエルもいないけどね。
この御前天使とは、要するに神の側に立つことを許された天使たちということです。
それにしてもなぜ八位の大天使を並べるのでしょうか。
第一位の熾天使セラフィムは、神に反逆した者たち(ルシファーやベルゼバブなど)が数多く出たため遠ざけられたという説が。
思うに上位の位階の天使ほど、その姿が異形であるために、人間に近い(それは要するに「神」に近い)完璧なプロポーションのミカエルたちを側に置きたがったのかもしれませんね。
エンジェルの出てくる作品
『BASTARD!! 暗黒の破壊神』
「罪と罰編」で突如現れた天使軍団には度肝抜かされました。
天使について、黙示録について、すごく興味を持った瞬間でした。
時代は世紀末でこういうネタが何かと敏感だったのも合わさりました。
なんといっても天使のデザインがM78星雲の光の国ぽかったのが面白かった。
そうか、ウルトラマンって天使だったんだ。てね。
『新世紀エヴァンゲリオン』
同じく世紀末思想を逆手にとって大ヒットしたTVアニメ。
こちらも敵は「使徒」と呼ばれる天使たち。
人類はエヴァに乗って抵抗を試みるというね。
ほんと、完結してよかった。
『真・女神転生』
ゲームからはこちら。
常に毎回九つの位階から全ての天使が登場します。
やはり「デビルサマナー」からのエンジェルが好きです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
これが天使についての大まかな概要です。
彼らは絶対悪を許さない正義の執行者です。
間違えてはならないのは、決して全ての人間の味方ではないということです。
そのことを肝に銘じ、日々良き人間であるよう努めるといいでしょう。
個別の天使についてはまた機会があれば取り上げたいと思います。
それではまた!
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