『ドラゴンクエスト』に登場する「いっかくうさぎ」って、可愛いですよね。
ユニコーンのように角を生やしたウサギ。
あれってドラクエオリジナルなんでしょうか?
いいえ、そうではありません。
古今東西、実在の動物をモチーフにしたモンスターデザインはたくさん見かけますよね。
しかし大抵多くみられるのはヘビやライオン、コウモリやサソリなど。
実に獰猛で危険なモチーフが用いられるものではありませんか?
という事は、あまりモチーフに選ばれない動物もまた多いはずなんです。
「獰猛」「危険」といったイメージからかけ離れたものなど特に。
そう。「可愛い」とかね。
可愛い動物と言えばウサギです。
ウサギ型モンスターって、実は多いようで少ないです。
ウサギ型モンスターと聞いて往年のベテランゲーマーならまず「ボーパルバニー」が思い浮かぶでしょう。
思い浮かばない方は往年のベテランゲーマーではない、ということです。
しかし今回取り上げるウサギ型モンスターは「アルミラージ」です。
アルミラージって、ご存知ですか?
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
アルミラージの出てくる作品
アルミラージと聞いて思い浮かぶのはもうこれしかありません。
すでに伝説と化しているファミコン用RPG。
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』
ドラクエ3は言わずもがな、国民的RPGの地位を確立した不朽の名作です。
私も最期に遊ぶゲームは? と聞かれたらコレを選びます。
ドラクエの功績はRPGの普及だけではありません。
日本のファンタジー黎明期、広く一般層に「剣と魔法の世界」を認知させたことが最大の功績です。
「勇者」や「魔王」という概念を常識として定着させたことは、今考えても途轍もない偉業ではないでしょうか?
今日、SFやミステリー、ホラーというジャンルよりも「ファンタジー」の強さが目立つのもドラクエのおかげ。
日本人にゴーレムやスライムやキメラやドラゴンを浸透させたのもドラクエ。
いいですか?
ドラクエという基盤の上に、今の日本のファンタジー文化は存在しているのですよ。
ええ、私はドラクエ信者です。
しかしながら、そのドラクエの背負ったものが一般層への普及であることから、ドラクエにはあまりコアなファンタジー要素は入れられないという制約もついて回ることに。
ドラクエでは「はがねのつるぎ」であって、「ブロードソード」とは言わないのです。
「くさりかたびら」であって、「チェインメイル」とは言わないのです。
まあ、年々この足枷は緩くなってはきてますが。
モンスターについてもそれが言えます。
初期の1や2では神話などから起こされたモンスターが多くを占めますが、3辺りからネタが尽きたのか、その傾向は縮小します。
その証拠に3では動物型のモンスターが多く新登場します。
「あにまるゾンビ」や「あばれざる」、「ぐんたいガニ」や「おおありくい」「おおがらす」「グリズリー」。
そして「いっかくうさぎ」。
この一角兎の色違いで登場するのが「アルミラージ」です。
そしてこのアルミラージはドラクエオリジナルモンスターではございません。
ドラクエはたまに原典がマイナーなモンスターをブッ込んでくることがありますが、このアルミラージもその典型例です。
「トロール」や「ヒドラ」ならまだしも、アルミラージです。
他ではほとんど見かけません。
このアルミラージ、ご存知ですか?
そもそもアルミラージとはなんぞや?
アルミラージは一般のウサギよりひとまわりも身体の大きい獰猛な肉食ウサギです。
額にらせん状の黒いツノを持ち、人間を含む獲物を突き刺し貪り食う恐ろしい怪物です。
インド洋に浮かぶ「ジャジラト・アル=ティニン島」という島に生息しているらしいです。
なんとインドのモンスターなんですね。
ただこの島が実際どの島を指すのかは不明だそうです。
13世紀のアラビアの学者ザカリーヤー・イブン・ムハンマド・アルカズウィーニーが書いた『被造物の驚異と万物の珍奇』という書によると、この島にはあのアレキサンダー大王が訪れ、島民のために一肌脱いだ逸話が残されているそうです。
3行でまとめると以下のような話。
この島には恐ろしい竜がおり、毎日二頭の牛を寄越せと脅され島民は困っていました。
アレキサンダー大王は竜に硫黄とかぎ針を飲ませ、火をつけて退治しました。
島民はお礼にアルミラージをあげました。
ってアルミラージを退治するお話ではないのね!
プレゼントされたんだ。
実際はアルミラージは家畜を襲う害獣で、特徴的な黒いツノも皮膚病に感染し、額にできた腫瘍である、というのが定説です。
角に見える程なのですね。
さらに獰猛なアルミラージは「魔女の手にかかれば無力化できる」という事のようで、これはつまり現地の魔女と呼ばれる存在がおそらく薬剤師的な立場にあり、害獣駆除にも一役買っていたという事かもしれません。。
アルミラージについてはだいたいこれぐらいです。
何故ドラクエ3で採用されたのか?
そんなこと、堀井雄二先生にしかわかりません。
たまたまネットもないその当時にこのモンスターを知り得て採用したのかもしれない。
可愛いモンスターがウリのドラクエだからこそ、ウサギ型モンスターなんて真っ先に思いついたのかもしれない。
ここからは推測ですが、やはり冒頭に書かせていただいた「ボ-パルバニー」が引き金ではないかと。
ボーパルバニーとは「ウィザードリィ」の序盤に出てくる首狩りウサギのことです。
このゲームでは敵も味方も即死クリティカルである「くびをはねられた」が存在します。
ボーパルバニーは序盤で遭遇するのでわりとプレイ経験のあるゲーマーなら記憶に残りやすいモンスターです。
となるとウサギ型モンスターという、今では希少なジャンルも当時ならつい入れたくなる要素であったのではないでしょうか?
当然「ウィザードリィ」は当時のRPGマニアなら誰もがプレイしていたのですからね。
そしてドラクエ3の最初のエリアである「アリアハン」ではアルミラージは上位レベルの敵モンスターとして君臨しています。
眠りの呪文「ラリホー」を集団でかけてくるのですから、その存在はボーパルバニー並みに厄介なものでした。
まあちょっとレベル上げればどっちもすぐに怖くなくなりますが。
しかし間違いなく記憶には残りましたね。
まとめ
- アルミラージはインドのモンスター
- アレキサンダー大王が竜退治のお礼にプレゼントされた
- 額の角に見えるのは腫瘍
いかがだったでしょうか。
今回はだいぶマイナーなモンスターのため、情報も少なく申し訳ありません。
しかしこういう雑魚敵としてしか登場しないモンスターも出来るだけ拾って、みなさんに多くお届けしたいと思っております。
しかし思うにウサギ型モンスターというものは減少傾向にあると思うのですが、その原因はおそらく「ウサミミ」にあると踏んでいます。
ウサギをモンスター化するなら兎耳の可愛いキャラに仕立ててしまうのがウケがいいと思いませんか?
それではまた!
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