多くのモンスターがいるなかで、割と有名で割と知られていない、そんなモンスターのひとつが今回ご紹介するこのヒポグリフではないでしょうか。
でももしかしたら、あの近世の英雄ナポレオン・ボナパルトの辞書にはこの魔獣の記載があったかもしれません。
ファンタジーの知識があれば、より楽しい!
今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもヒポグリフとはなんぞや?
ヒポグリフとは、鷲の頭と足、馬の胴体に羽根の生えた飛行生物です。
体色は馬らしく茶系が一般的ですが黒に近い灰色や、赤に近い茶色もあり得ます。
概念としては合成魔獣キメラの一種に思えますが、歴とした哺乳動物です。
その誕生には条件があり、それはグリフォンが牝馬を孕ませ生ませること。
そのグリフォンとは鷲の頭に獅子の身体をした魔獣のことです。
そもそもヒポグリフとはラテン語で馬を表す「ヒポ(Hippo)」とグリフォンを合わせた名前です。
よって正確にはヒポグリフは馬の胴体に鷲ではなくグリフォンの頭部ということになりましょうか。
どっちみち鷲の頭なんですけどね。
文字として文献に出てくるのは古代ローマの詩人ウェルギリウス(紀元前70年から紀元前19年)が著した『アエネーイス』。
「それは不可能だ」という意味で「グリフォンと馬を交配させる」という表現をしました。
ちょっと分かりにくいですね。
『アエネーイス』とはトロイアの英雄アイネイアスを主人公とした叙事詩です。
アイネイアスはローマ神話の美の女神ウェヌス(英語読みでヴィーナス。ギリシャ神話のアフロディーテと同一)の息子で、トロイア陥落後、避難民を連れてイタリアへと逃れます。
そしてローマ建国の祖となる人物です。
実はグリフォンは大の馬嫌いで、あまり人間は襲わないのですが馬を見つけると乗っている人間もお構いなしに馬を襲います。
そんなグリフォンが馬を殺さずに子を生ませるなんて事が起きようはずもない。よってヒポグリフなんて存在しない。という視点からヒポグリフを不可能の存在としています。
いや、前提としてグリフォンならいるのかという話にもなりましょうが。
ともあれヒポグリフ=不可能という成句となりました。
てことでもしかしたらナポレオンの辞書には「不可能」という文字はなくても代わりに「ヒポグリフ」とならあるかもしれませんね、というくだらない引きでした。
その稀少生、というか不可能の存在であるためか、創作の世界でも意外とマイナーな部類になります。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
最も有名なヒポグリフといえば『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』に登場したバックビークでしょうか。
ハグリッドが魔法生物飼育学の授業でやらかしてしまった話です。
ハリーがバックビークに乗って空を駆け回りますが、あれはハグリッドがちゃんと手懐けていたから。
ヒポグリフは騎乗用にしつけることができる魔獣なのです。
ですが劇中でもあったように、実は凶暴な面も併せ持ちます。
安易にからかおうと近寄ったドラコ・マルフォイが大怪我を負ってしまいましたよね。
ヒポグリフは身体は草食の馬ですが、頭部は肉食の鷲、というかグリフォンなので基本は魔獣です。
人間に懐いていないヒポグリフは大変危険な生物なので安易に近付かないようにしましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
相容れないはずの生物同士がくっついた魔獣であるヒポグリフ。
存在しえない合成獣としては他にもミルメコレオなんかがいますね。
あちらは獅子の上半身に蟻の下半身というファンタジー界随一の奇形モンスターでした。
ヒポグリフは肉食と草食という違いを乗り越えて普通に生存できますが、ミルメコレオはそうはいきません。とっても哀れなモンスターとして描かれていました。
さてヒポグリフは身体が馬なんですが、どうやら馬肉が大好物という基本設定があるそうです。
とことん変わったモンスターですが、皆さんの創作にぜひ役立ててみてくださいね。
それではまた!