【悪神アンラ・マンユ(アーリマン)】善に対する完全なる悪【モンスターレビュー第89回】

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ゾロアスター教における悪の総大将。
それがアンラ・マンユです。

善の創造神アフラ・マズダの生むものに対し、常に逆張りをするのがアンラ・マンユ。
世界を破滅させること。
それが悪の化身アンラ・マンユにとってのすべてなのである。

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもアンラ・マンユとはなんぞや?

アンラ・マンユとは、ゾロアスター教における破壊神であり、悪の軍勢の総大将のことです。

ゾロアスター教とは

キリスト教よりも2000年ほど古くに存在した宗教です。
炎を神聖視し、崇拝の対象としたため「拝火教」と呼ばれます。
オリエント地域に散らばる神話、宗教などを開祖ザラスシュトラ(ゾロアスター)により、整理統合されたものであります。
特徴は徹底した勧善懲悪。
善悪二元論」を軸とした思想は、善の光明神アフラ・マズダと、悪の暗黒神アンラ・マンユ(アーリマン)の攻防を伝えますが、必ず最後は「善」たる「光」が勝利するとしています。

アンラ・マンユはペルシア北方の暗黒の山に住んでいます。
「ドルージョ・デマーン」と呼ばれる地獄の最下層で、辺り一面漆黒の闇、強烈な暑さと寒さが繰り返し襲い、しかも耐え難い悪臭に包まれている。
さらにここでは時間の流れが遅くなり、1日が1000年の長さに感じられるという。

アンラは「破壊」、マンユは「霊魂」を意味します。
他にアンリ・マンユ、アングラ・マインユ、アフリマン、アーリマンなどと呼ばれます。

アンラ・マンユは悪の軍勢を率い、光の神アフラ・マズダと死闘を演じているのです。
その死闘とは常に、アフラ・マズダが創造したものと反対のものを作り、破壊することにあります。

アフラ・マズダが「光の世界」を創れば、アンラ・マンユは「暗闇」を創る。
アフラ・マズダが「神聖な生き物」として「犬」や「牛」を創れば、アンラ・マンユは「悪しき生き物」として「蛇」「蠅」「サソリ」「獅子」そして「カエル」を創ります。
他にも「病」や「冬」、「無知」や「無秩序」など。
悪や災いと呼べるあらゆるものはアンラ・マンユが生みだしたとされます。

元々アンラ・マンユは砂漠の精霊の一人にすぎませんでした。
それがゾロアスター教創立時に悪の軍勢の頂点に据えられました。
アケメネス朝ペルシア(前550~前330)からパルティア時代(前248~前224)にかけて、当初のゾロアスター教創世神話では、最高神であるアフラ・マズダにより創られた双子の霊の片割れでした。

すなわち、聖霊スプンタ・マンユと悪霊アンラ・マンユです。

双子がお互いの存在に気付いたとき、スプンタ・マンユは「」や「生命」を司ることを選びました。
するとアンラ・マンユはその反対の「死」や「闇」を選びました。
こうして双子は相容れず、数千年に及ぶ戦いを始めるのです。

ですがこの戦いはいつも幾度となく現れる「救済者」によって、スプンタ・マンユの勝利に終わります。

これが開設当初の創世神話でしたが、ゾロアスター教も長い年月を経て、ササン朝ペルシア時代(224~651)になると次第に創造神アフラ・マズダとスプンタ・マンユが同一視されていきます。
そして光の善神アフラ・マズダと悪の破壊神アンラ・マンユの対決という形にシフトしていきました。

滅びの美学なのか

アンラ・マンユは常に負ける事が確定しています。

しかし、だからといって光の創造神が完全勝利を収めている訳ではありません。
世界を創造するとき、常にアンラ・マンユは邪魔をします。
そこでアフラ・マズダはアンラ・マンユに呪文をかけ、3000年もの長き間封印することに成功します。

その間に地上に楽園を築きましたが、復活したアンラ・マンユが上述の様々な「厄災」を解き放ち、楽園を汚染します。
さらに地上の人間たちに「猜疑心」や「疫病」「貧困」「堕落」「嫉妬」などを植え付けたのです。

そして「死」です

「死」は最大の悪のパワーを帯びているとされました。
「死」とはその悪の力に負けた結果と思われたのです。
光の創造神が作りたもうた「生命」の活動を停止させるほどの悪のパワー。
その力は死後も死体周りに滞留し続けると思われました。
特に熱心なゾロアスター教徒が死んだ場合、それは常人ではとても手に負えない悪の力によるものとされ、特別修業を積んだ者以外近付く事すら許されなかったと言います。

そして人間は生前、アンラ・マンユの放った「悪」とどれだけ戦ったかを死後に審判されます。
悪の誘惑に負けた者は「地獄」へ落とされるのです。
その地獄もアンラ・マンユが創りました。

アンラ・マンユは空を引き裂き「夜」を生みます。
大地に大穴を開け、地の底に「地獄」を広げます。
そこに悪霊や邪神の群れが流れ込み、地獄に落ちた罪人をいたぶるのです。

アンラ・マンユ率いる悪の軍勢

アンラ・マンユは光の軍勢と戦うために配下となる邪神群を生み出しています。
その筆頭はアジ・ダハーカ
「三頭、三口、六眼の悪竜」で、アフラ・マズダの創りしものをことごとく破壊することを至上命題にしています。

その他に幹部クラスが6人います。
それぞれ悪の要素を司りますが、それに対抗する形でアフラ・マズダも6人の部下をぶつけてきます。
以下がその顔触れです。

六大悪魔(ダエーワ)

アカ・マナフ「邪念」の象徴。六大悪魔筆頭。
ドゥルジ「虚偽」の象徴。混乱を生む女悪魔。
タローマティ「背教」の象徴。心の中に潜む女悪魔。
サルワ「無秩序」の象徴。
タルウィ「灼熱」の象徴。砂漠や熱病を表す女悪魔。
ザリチュ「渇き」の象徴。干ばつや日照りを表す女悪魔。

六大天使

ウォフ・マナフ「善性」の象徴。六大天使筆頭。
アシャ・ヴァヒシュタ「真実」の象徴。猛々しき火の天使。
アールマティ「献身」の象徴。大地を治める地母天使。
クシャスラ「統治」の象徴。金属の天使。
ハルワタート「救済」の象徴。水の女天使。
アムルタート「生命」の象徴。木々の女天使

意外にも女悪魔が4人、女天使が3人もいます。
大地の天使、水の天使、木々の天使といった「生命」に直結する類は世界中で「女神」に割り振られる傾向があるようです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

「善悪二元論」をテーマにした「ゾロアスター教」において、「光」はもちろんのこと、「悪」もまた必要不可欠な存在でした。
最早我々現代人にとっては語り尽くされたテーマかもしれませんが、「光あるところに影はある」「悪役なくしてヒーローなし」そういった議論は遥か昔から投げかけられていたようです。

人間の愚かしさを縛める面もありましょうが、同時に人間の善性を信じる向きもうかがえます。
だからこそ、最後は必ず「光」が勝利をおさめるように教えられているのだと思います。

どうかみなさんも「悪」には屈しませんように。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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