なぜ狼女はいないのか?
狼男。ウェアウルフ。ワーウルフ。
様々な呼び名を持つ彼ら。
もっと大きなくくり、種族で言えばライカンスロープ、またはリカントロープ。
満月の晩に人から狼に変身する彼らを古来より多くの人々が恐れました。
例えばホラーなモンスターとして有名なキャラを上げるとすれば「吸血鬼ドラキュラ伯爵」「フランケンシュタイン博士の怪物」そしてこの「狼男」ではないでしょうか。
しかし伯爵と怪物は個人を指すのに狼男だけは種族を指していますよね。
狼男とは一体何なのでしょうか?
そして今回のタイトルにある通り。
なぜ赤ずきんちゃんの敵は狼だったのか?
グリム童話の『赤ずきん』を皆さんはご存知でしょうか?
赤ずきんちゃんがおばあさんの家へ行くとおばあさんは狼に食われた後でした。
狼はおばあさんに変装して赤ずきんをだまし、食べてしまいます。
結局は通りがかりの猟師に助け出されてめでたしめでたし。
これでおしまいですが、なぜ狼なんでしょう?
普通にこれ、狼男ですよね?
熊でも悪魔でもいいじゃないですか。
なんで狼? なんでしゃべれるの?
そんな疑問を感じたことがある人も結構多いのではないでしょうか?
かくいう私もそのひとり。
気になったのでちょっと調べてみました。
そうしたらアレ、これはもしかして、という驚愕の真実が!
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもワーウルフとはなんぞや?
令和のわが国で一般的に知られるワーウルフとは、
- 満月を見ると狼男に変身する
- 噛まれると感染する?
- 銀の弾丸でしか倒せない?
- 狼以外の動物に変身するパターンも多い
といったところでしょうか。
そうなんです。
とくにヨーロッパでは人狼伝説として名高いのですが、獣に変身する設定は世界各地に見られます。
アフリカだとライオンやハイエナ。南米はジャガー。中国では虎人間(これはイメージに合いますね)などなど。
他にもネズミから熊からなんでもありです。
そのうち個別に取り上げたいですが、膨大な数に上る為、今回は狼男に絞りましょう。
まずは呼び名について
冒頭でも述べましたが、狼男とは種族としてはライカンスロープ、またはリカントロープと呼ばれるのが一般的です。
- ライカンスロープもリカントロープも「lycanthrope」で語源はギリシャ語。
- 狼を意味するリュコス、人間を意味するアントローポスを合わせてリュカントロポスから来ているらしい。
ということは昨今種族名として使われるライカンスロープもリカントロープも意味は狼人間てことなんですね。
呼び名としては他にフランス語のルー・ガルーなんてのも稀に見かけます。おしゃれですね。
では狼男を呼び表す際のウェアウルフ。
- ウェアは「were」で男性を現す古英語。
要するにウェアウルフはそのまま「狼男」という意味ですね。
ちなみに「男性」のwereに対して「女性」を表すのがワイフ(wife)。聞き馴染みがある言葉ですよね。
なので狼女ならワイフウルフでしょうか。
ちょっと聞き馴染みのない呼び名ですね。どうしてでしょう?
その理由は狼男のルーツにあるようです。
狼のコスプレをして夜中駆けずり回るの刑
中世ヨーロッパのお話です。
墓荒らしや魔術的な行動をすると罪人としての警告を受けます。
3回警告されると罰として、月明かりの夜は狼の耳や毛皮をまとい森で吠えながら徘徊する刑に処されます。
これが狼男が満月の晩に現れるいわれのようです。
なんか信じにくい刑罰ですが、これは「追放刑」と言って、村のコミュニティから迫害されるわけです。
昼間は普通にしていてもいいけど、誰も取り合ってくれないので仕事にもあぶれます。
ハブられて、定職も失う。結果、こいつらは強盗や略奪に走ります。
狼男とは、神を冒涜するような悪行を犯した者が、夜な夜なオオカミに扮して森を駆けずり回る刑罰を受けた者が着想の原点なのです。
ちなみに刑期は9年ぐらいだそうです。
更に言うと、ではなぜ狼女(ワイフウルフ)の逸話がないのかというと、女の犯罪人は「魔女」として、即「火あぶり」にされたからのようです。
男は「狼男」に、女は「魔女」になるのです。
ここで私はハッとしましたよ!
冒頭でお話しした謎!
おとぎ話の『赤ずきん』ですよ。
森の家でおばあさんに扮した狼が赤ずきんちゃんを食べようとするお話です。
あの狼って、もしかしたら追放刑を受けた罪人が、強盗する様を描いたものじゃないでしょうか?
文学は世相を反映します。
その当時の出来事が文学の中で息づいているものなのです。
これはスゴイ発見じゃないですか?
ええ、もちろん勝手な妄想で騒いでるだけですけど。
いいじゃない。
上で挙げた例は比較的近年になって語られるようになった説なのですが、他にも狼男のルーツはあります。
- 北欧の戦士ウールヴヘジンは要するにバーサーカーです。毛皮をまとい戦うさまが発想に影響しています。
- 狂犬病に罹った人間を指して狼男とした経緯もあるようです。
種族ライカンスロープとして様々な動物が出てくるのは上述の通り。
狼以外の種族が生まれただけでなく、他にも多くの設定がライカンスロープには付け足されていきました。
- もう満月関係なく好きに変身できたりする。
- 噛まれた者も感染して狼男になってしまうという、ヴァンパイアと設定が混同されてしまう。
- 銀の弾丸でしか傷つかないという困った無敵設定もつく。
- 生まれた時からライカンスロープという者もいっぱいいる。
発想は自由です。
狼男と狼女が双子を産んだらオオカミと人間に分かれた、なんてのがあってもいいでしょうね。
ライカンスロープが出てくる作品
それこそ膨大な数があるのでいくつかご紹介。
『ドラゴンクエスト』
ドラクエはファンタジーとして知る人の最大公約数だと信じているので紹介頻度が高いのはご勘弁を。
モンスターとして「リカント」「リカントマムル」「キラーリカント」が登場。
狼と言うよりネコ科の印象ですね。
ところでマムルってなんのことだろう?
『ブラッディロア』
対戦格闘ゲームです。
キャラクターは全員人間から獣人に変身して戦います。
狼、兎、虎、ライオン、モグラ、蝙蝠、狐、猪、ゴリラ、カメレオン、象、他にもいっぱい。
この記事で紹介すべき作品筆頭です。
『獣王記』
ライカンスロープと言えばコレ!
女神アテナを救うため、筋肉マッチョが狼、ドラゴン、熊、虎に変身して戦います。
移植された物や続編には他にもライオンやサメなんかにも変身できました。
この記事で紹介すべき作品筆頭です。
『魔豹人』
菊地秀行先生の小説。
魔界都市〈新宿〉を舞台にしたマン・サーチャーシリーズの短編にてお披露目された水無月豹馬。
彼は用心棒(バウンサー)でありパンサーである。豹のライカンスロープですね。変身はしませんが。
他にも蛇男とか出てきました。
『地の底に響く風の唄(ソードワールド短編集13収録)』
友野詳先生の短編です。
オランの街の地下を舞台に、ワークロコダイルやワーモウルが戦います。
この作品を読んだときにモグラとかなんでもありかと悟り、TRPGのマスタリングでワーペンギンとか出したりしました(思い出)
まとめ
いかがだったでしょうか。
ライカンスロープ、リカントロープと言えば多種多様なキャラクターが創造されており、とてもじゃないですが1記事で書ききれるものではありません。
これはまた順を追って個別に取り上げたいと思います。
今回の記事で不足を感じられた方がおられましたら申し訳ありません。
そのうち続報をお届けできるよう頑張ります。
それではまた!