【宝箱のミミック】人間の欲望に罠を張るトラップモンスター【モンスターレビュー第83回】

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ミミックとは地下迷宮や魔王の城といった、いわゆるダンジョンに設置されたトラップ型モンスターです。
その多くは冒険者が喜んで飛びつきそうな宝箱の姿で潜んでいます。
不用意に近づくとびっくり箱のように驚かせ、犠牲者を捕食してしまう恐ろしいモンスターなのです。

我々にそんなミミックによる被害を最も与えてくれたのは、おそらく『ドラゴンクエスト』シリーズでしょう。
初出は三作目となりますが、人喰い箱として名を馳せる、そのドラゴンクエストのミミック。
その正体と中身についてはご存知ですか?

ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!

それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

目次

そもそもミミックとはなんぞや?

ミミックとは、ダンジョン内にて宝箱を開けた冒険者に襲い掛かるモンスターの形をしたトラップです

ミミック(mimic)とは「擬態」「模倣」「ものまね」といった意味の名詞です。
ミミックとは「擬態」の名が示す通り、別のものの姿に変わるモンスターです。
生物学的には身を護るため、例えば小枝や木の葉に同化する昆虫や、砂や岩に同化する魚のようなものを差します。
ただしファンタジーの世界では人間に対し罠を張って待ち受ける、凶悪なモンスターとして知られますね。
これをモンスターと呼ぶならば、本来はMimicrymonsterとするのが正しいです。
ですがコンピュータRPGの始祖『ウルティマ』にて、宝箱の形をしたモンスターを「ミミック」と名付けたことが広まり、現在のミミックという名前が定着したようです。

その正体は幽霊、悪魔、妖精など、実のところ実態がつかめていません。
大抵の場合、倒してしまうとその姿は消滅してしまうためです。

最も多く見かけるのは、ダンジョン内に置かれた宝箱に擬態したミミックでしょう。
財宝を求めた冒険者が近付くと襲い掛かってきます。

基本的には肉食で、箱のフタを縁取るように並んだ牙で、罠にかかった人間を捕食してしまいます。
この牙には麻痺などの神経系に及ぼす毒が分泌されることもあります。
この場合の正体は幽霊ではないかもしれませんね。

擬態するのは宝箱だけとは限りません。
壺である場合もありますし、落ちているアイテム自体が擬態したミミックの可能性もあります。
それどころか階段やベッドなどに擬態している可能性もありますので、冒険の際には細心の注意が必要です。

それに「箱を開けると襲い掛かる」、と思い込むのも危険です。
中には蓋が口のようになっているミミックばかりではありません。

RPGの元祖『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では腕の生えた宝箱による叩き付け攻撃が凶悪です。
しかもこのミミックは接着剤のような粘着液を吐き出し、犠牲者に引っ付いてしまうのです。
そのため離れることが出来ず、箱から伸びた腕で何度も殴打されることになります。

固い宝箱に擬態しているので、刃物で切り裂く攻撃は有効ではありません。
しかし仲間が捕らわれている状態で、ハンマーなどの打撃武器をヒットさせるのもまた難しい事でしょう。

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ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(Wizards of the Coast)

最も大事なのは宝箱を開ける前にミミックかどうかを見極めることです。
しかしそのための有効的な方法は議論の余地があります。

普段は石像ですが、侵入者が近付くと動き出す魔法の番人ガーゴイルというモンスターがいます。
冒険者を待ち受けるトラップモンスターとしてはミミックに近しい存在ですが、そのガーゴイルを見極める方法は冒険者の間では常套手段があります。

動き出す前にぶっ壊してしまえばいいのです。

そうすれば仮にその石像がガーゴイルだったとしても、半壊していれば戦闘力は激減するでしょうし、そもそももう動かないかもしれません。

ですが同じことを宝箱に擬態したミミックには出来ません。
もし仮にその宝箱が本物であった場合、中身の貴重なお宝や魔法のアイテムなどが壊れてしまうかもしれません。
ですので罠を見破り解除する、盗賊スキルを持つ者の見極めが必須なのです。

さらにもう一つ注意点があります。

宝箱に擬態したミミック」ではないかもしれませんが、「宝箱の中にモンスターが潜んでいる場合」もあり得るという事です。

ミミックだったら箱の見た目や手触りが違う、などと思い込んでいたら、空の箱の中にスライムが潜んでいた!

などという結果としてはミミックと同じ場合も考えられるので、その辺は注意しましょう。
中身の財宝に擬態しているミミック」という事もありますし、そうなるともうどこまで警戒してもし足りないですよね。

ただ、ミミックがハズレ宝箱とばかりは言えません。

何故なら誰にも退治されずに残っていたミミックならば、その腹の中にはそれまでの犠牲者の所持品が未消化で溜まっているからです。
それは所持金であったり装備品であったり、もしかしたらとっても貴重なアイテムが紛れている事だってあり得ます。
ですので開けた宝箱がミミックだったとしても、ガッカリしないでくださいね。

ドラクエのミミック、その正体

おそらく最も有名なミミックのひとつに『ドラゴンクエスト』シリーズの「ひとくいばこ」があると思います。

初出は3作目の『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』

古参のPCゲーマーでもない限り、未だRPGと言えばドラクエという風潮が強かった時代。
純粋な少年少女たちに強烈なトラウマを植え付けてくれたのが「ひとくいばこ」でした。
砂漠のピラミッドは強敵揃いなうえに呪いのイメージも合わさり恐ろしいダンジョンです。
そんな時に冒険を楽にしてくれるアイテムが入手できるかもしれない、と、並んだ宝箱をすがるような思いで開けたことを思い出します。

すると突然の戦闘開始!
中身は「ひとくいばこ(人食い箱)」というモンスターだったのです。
しかもコイツの攻撃力の高いのなんの!
ちなみに「ひとくいばこ」からは逃げられませんし、眠らせてくる「あまいいき」も吐きます。
仲間が次々と一撃で沈められていき、瞬く間に全滅しましたっけ。
それ以来宝箱を開けるのを躊躇するように……。

しかし冒険を続け、こちらのレベルが上がってくるともはや、「ひとくいばこ(人食い箱)」の攻撃力も怖くはなくなります。

そうしてまた、心置きなく宝箱をガンガン開けるようになるころ、現れるのが上位モンスターの「ミミック」なんです。

このミミック、攻撃力はさほどでもなく、プレイヤーはホッとすると同時に肩透かしを食らいます。
ですが真に恐ろしいのはこいつの唱える呪文。
一撃で相手の息の根を止める呪文「ザキ」「ザラキ」を連発してくるのです。
しかも火力のある「メラミ」や眠りの呪文「ラリホー」、さらに2回攻撃まで。
まったく良くできてる。
プレイヤーの感情を見事に読み取っていると言えますね。

さてそんなミミックですが、デザインは開いた箱の中から目が光っているというもの。
この中身の正体が実はとあるモンスターだという説があるのです。

それはドラクエシリーズのモンスターに焦点を当てた一冊の書籍にあります。

 ミミックが生まれたのはこの塔のある大陸から遥か南、赤道を超えた凍てつく土地だった。
 そしてその土地で、雪と寒風の高地でミミックたちは別の名前で呼ばれていたのだ。

<中略>

「そうだ。あの場所は良かった。いつも、いつも吹雪がうなり声をあげていた……」
 ミミックは、そして別の名前で呼ばれていた過去の彼らは熱に弱かった。いや、そのことに気がついたのは、あの雪に覆われた岩山を離れた後だった。
 そこには彼らだけでなく幾多の魔物が棲息していた。単眼の巨人が、凄まじい魔力を秘めた巨大な悪魔が、万年雪の積もったその場所の住人だった。

<中略>

 そして何より恐ろしかったのは外界の凄まじい熱気だった。何匹かの仲間が高温のため死んだとき、彼らは自分たちが熱に弱いのを知った。
 そして数を減らした彼らはこの塔へたどりついたのだ。

<中略>

「そうだ! ここに来たときはまだこんな箱の中に入っていなかったんだ!」
 塔の中へ入って初めてこの箱を見つけたのは誰だったろう? 自分だったような気もするし、仲間の誰かだったようにも思える。だがともかく箱の中は、信じられないくらい心地よかったのだ。まるであの雪の高原のように……。
 彼らには知る術もなかったが、箱には強力な太古の魔法がかけられていたのだ。冷気の攻撃呪文を改良した特殊な魔法が……。

引用:『ドラゴンクエスト モンスター物語』©エニックス

雪の高原から離れたこの魔物は自分たちが熱に弱い事を知りました。
なんとかたどり着いた塔の中には太古の魔法がかけられた冷たい箱がありました。
彼らは知りませんでしたが、太古の昔、この地で戦があり、塔に籠った人々は食料を保存するために、箱に冷気の効果を及ぼす呪文をかけていました。
それから何年も過ぎ去り、人々は消え、箱だけが残された塔に彼らは棲みついたのです。
それがミミックとなりました。

暑さに弱く、ザラキが得意な、肉体を持たないモンスターと言えば、こいつですね。

初期のザラキという呪文の設定は「相手の血液を凝固させて死にいたらしめる」というもの。
血液を凍らせる呪文なので「ブリザード」も得意にしているのですね。
いつしかザラキは氷系から呪言めいてしまいましたが。

雪の高原ロンダルキアがあるドラクエ2の世界とドラクエ3の世界は繋がりがあります。
いわゆる3が「上の世界」、1と2が「下の世界」もしくは「地下世界」と呼ばれます。
彼らが獲物を求めて上の世界にまでさ迷い出てきたとしても、まあ可笑しくはないですかね。

とはいえこの本の内容はドラクエの初期に発行されたもので、わりと自由な形式で書かれていますから公式設定とは認めない、という方もおられます。
ですので、そういう説もある、全てのミミックがそうではなく、この個体の中身がミミックめいていただけ、などなど、様々に捉えるのが無難かもしれませんね。
どうせ真実なんて誰にもわからないんですから。

ちなみに、じゃあ「ひとくいばこ(人食い箱)」の中身はなんなの?
この答えはズバリ言うと「くさった死体」です。

これもそういう説がある、にとどめておいてくださいね。

まとめ

  • ミミックとは「擬態」という意味
  • 宝箱などに擬態して冒険者を待ち伏せるトラップ型モンスター
  • 神話由来ではなくゲームから生まれた
  • 正体、実態は不明

いかがだったでしょうか。

ミミックは創作においては汎用性が高いモンスターです。
暗い洞窟に潜み、冒険者を待ち構えるのが一般的ですが、必ずしもそうした怖さを活かす利用だけにとどまりません。
例えばちょっとエッチなラブコメや、SFにだって登場できます。
宝箱に限らず、階段やベンチ、手に持つアイテム類から身にまとうドレスにだっていいでしょう。
下手に神話や伝説に因らないので、自由な発想が許されたモンスターと言えましょう。

ただし恐ろしさは折り紙付きです。
なんたって正体は不明なんですから。

それではまた!

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この記事を書いた人

漫画家になりたくて毎週のように出版社へ持ち込みをしてた人。
ケータイ用ミニゲームイラスト、アンソロジーコミック経験有。
執筆したファンタジー小説を投稿サイトにて公開中。

三匹のカエルと七人の闇堕ち姫
小説家になろう/ノベルアッププラス

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