夢なかに現れて、快楽と悪夢の子種を植え付けていく。
古代から中世にかけて、多くの女性を悩ましてきた夢魔。
それがインキュバスです。
特に貞淑な女たちを悩ませたはずのインキュバス。
しかし実は女たちに巧みに利用されていた面もあるのです。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもインキュバスとはなんぞや?
インキュバスとは、深夜、女性のもとを訪れ悪魔の子を懐妊させる夢魔のことです。
インキュバス、またはインクブスと言って、名の由来はラテン語で「悪夢」または「上にのしかかる」です。
女性が胸を圧迫するような寝苦しさを感じた時、そこには上にのしかかるインキュバスがいるとされます。
インキュバスの姿は主に二通りあり、ひとつはコウモリの羽に尻尾を生やした小悪魔の姿。
もうひとつは女性を虜にするような美青年です。
小悪魔の姿から美青年に化けて女性をかどわかすのが一般的かもしれません。
インキュバスの目的は女性を快楽で堕落させ、悪魔の子を生ませることにあります。
そのため女性をとろかすような美しい青年の姿で夢に現れるというのです。
インキュバスには対となる女性型モンスター、サキュバスがいます。
性質は男女の別がある以外はほとんど同じですが、この二体は一心同体であるという説もあります。
というのも、インキュバスには生殖能力がないので、女性を懐妊させることができないのです。
そのためサキュバスに化けて男性から生気を回収し、それを使い女性を襲うとされます。
となると生まれてくるのは普通の男と女の子供に思うかもしれません。
ですが夢魔を介した懐妊は、特異な能力を持った子供が生まれることが多く、例を挙げれば「アーサー王伝説」で有名な魔術師マーリンが有名です。
また、夢魔と人間のハーフ、半人半魔として生まれた者は「カンビオン」と呼ばれます。
語源はケルト語で「曲がっている」。
狙われた女
インキュバスは女性に快楽を仕込み、堕落させ、悪魔の子を生ませることが目的です。
そしてインキュバスからもっとも狙われたのは、貴族の女や修道女といった、より貞淑な身分の女です。
おしとやかで、身持ちの固い女性を好んで夢魔は狙いました。
そして実際、そのような女性たちが父親不明の子供をもうけることもあります。
この摩訶不思議な現象の理由にインキュバスが当てられるのです。
そしてそれは不義を働いた女性にとって、小賢しい言い訳に利用できるものでした。
不倫などした場合、インキュバスにやられたと言い張るんですね。
実際中世ヨーロッパの教会では夢魔による懐妊はあり得るのか、といった議事録も残されているようです。
スコットランドのある貴族の令嬢が、夢魔によって醜い子供を産んだとされる修道士の報告もあります。
さらに悪魔学において、インキュバスの著作や報告件数は、サキュバスと比べてなんと9:1。
圧倒的にインキュバスの報告例が多いのです。
さらにいえばインキュバスは古代からその存在を語られますが、サキュバスについては中世以降になって登場という。
この男女夢魔の誕生にはかなりの時間差があるのです。
それだけ活発に不義を働いた女性が多かったということなのでしょうか。
それとも本当に、インキュバスが現れたのでしょうか。
サバトの主役
最後にインキュバスは小悪魔的な面もあるため、よく魔女の使い魔として登場することもあります。
と言ってもいつもいつも雑用を押し付けられているという訳でもなく、魔女といえばサバト。
森の奥深くで怪しい儀式を開いていたりするものですが。
その際によく見られる人間の体に山羊の頭をした悪魔。
あれもインキュバスであるというのです。
そこでインキュバスは魔女の相手をするわけです。
魔女の使い魔、兼パートナー。
そんな役割もあるのですね。
まとめ
- インキュバスは寝ている女性を懐妊させる小悪魔
- 美青年に変化し惑わす
- サキュバスとは対となる存在
- 生殖能力がないのでサキュバスになって男から採取する
- 不義を働いた女性がインキュバスにやられたと言い訳に使われた
いかがだったでしょうか。
古代から中世にかけて猛威を振るったインキュバスですが、時代がら鬱屈した女性の捌け口に使われた感じもしますね。
それに魔女の使い魔としてもいいように扱われているあたり、ある意味インキュバスは女性のおもちゃとして弄ばれていたのかもしれません。
まあそれも現代の価値観ではわからないことなのでしょうが。
古代では夢魔といえばインキュバスでしたが、現代では圧倒的にサキュバスでしょう。
こうした下りからも人類史と風俗を紐解くことは出来るかもしれませんね。
それではまた!