ハエの姿で現れる悪魔というのもかなりの種類がいるもので、今回ご紹介させていただく女悪魔ナスもそのひとりです。
またマイナーな悪魔を取り上げますが、知識は多い方がいい。
そう。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもナスとはなんぞや?
ナスとは、ハエの姿を借りて疫病を広めるゾロアスター教の女悪魔です。
ペルシアの北方、「アルズーラのしゃれこうべ」と呼ばれるアルズーラ山の洞穴に棲んでいます。
ナスは常にこの山から、ハエの姿を借りて人里へとやって来ます。
ナスとはズバリ「死体」という意味です。
ハエは死体の周りで増えることから「不浄なる生物」とされました。
そこから女悪魔ナスという存在が生まれたのです。
同様に「女」もまた「不浄なる生物」とされていました。
太古の昔の話ですよ。
人里へ現れたナスは、ハエの姿のまま安置(または放置)された死体に入り込むと、疫病、伝染病を撒き散らすのです。
対策はナスを死体に近付かせないこと。
病原菌を撒き散らせない対策としては、悪魔が嫌う「聖なる動物」である「犬」を見張りに置くことです。
他に「猛禽類」も苦手であるとされます。
そのためこの地域では鳥葬が行われていました。
屋外に死体を置き、鳥がついばむに任せるのです。
これでナスは近付けません。
疫病も発生しません。
もちろん神聖句による呪文を唱えることにも退魔の効果はあります。
ちなみにゾロアスター教では犬は神聖視されていましたが、後世この地に広まるイスラム教では特別そのようなことはありません。
女悪魔ドゥルジと合身
まだ紀元前であったアケメネス朝ペルシア時代にはすでに信奉されていたとされるゾロアスター教も、紀元後のササン朝ペルシア時代に入る頃には様々な変化をきたしていました。
ナスにとってもそれは大きな変化で、同じく女悪魔として強大であったドゥルジと同一視されるようになります。
ドゥルジは悪神アンラ・マンユ直属の六大悪魔のひとりです。
「虚偽」「背教」を司り、「真実」「正義」を司る火の天使アシャ・ヴァヒシュタと対立していました。
そのドゥルジも後期ゾロアスター教では「不浄なる女悪魔」として、ナスと同様にハエの姿を借りて死を撒き散らす存在になるのです。
言うなればナスはドゥルジの完成形のため、吸収合併されてしまいます。
前期のドゥルジと区別するため「ドゥルジ・ナス」という名も与えられました。
企業のM&Aのように、力の強い方が名前も前になるようです。
こうしてパワーアップを果たすのですが、ナスという女悪魔はドゥルジ・ナスとしてその名を残すことになりました。
まとめ
いかがだったでしょうか。
死体にたかるハエと疫病からひとりの悪魔を生み出す考えは至極真っ当かなと思えますね。
清潔にしないと感染するという事実が一般に常識とされるのは人類史上まだまだ先の話。
ナイチンゲールの登場を待たなくてはなりませんからね。
悪魔として恐れるのも頷けるというものです。
創作のネタに使うもよし。
遊んでいるゲームなどで出会えたならば、今後は知識をもってお相手することも出来るかと思います。
皆様になんらかの思いを残せたことを願って。
それではまた!