ゾロアスター教の女悪魔ドゥルジです。
メジャーとは言い難いですが、割りと創作界隈に登場する機械も多いようです。
一説にはハエの悪魔とも言われるようですが。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど、没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもドゥルジとはなんぞや?
ドゥルジとは、「虚偽」「背教」を司る女悪魔です。
キリスト教より2000年も古い「ゾロアスター教」に登場します。
ゾロアスター教とは開祖ザラスシュトラ(ゾロアスター)により、ペルシア地域に広まった宗教です。
火を神聖視することから「拝火教」とも呼ばれます。
最大の特徴は「善悪二元論」を唱えることで、必ず最後は「善(光)」が勝利するとされています。
ドゥルジは悪の頂点に君臨する悪神アンラ・マンユにより生み出されました。
善の頂点に立つ光の創造神アフラ・マズダが6人の天使「聖なる不死者(アムシャ・スプンタ)」を生み出したため、それに対抗するよう生み出されたのです。
アンラ・マンユも6人の悪魔(ダエーワ)を生み、「聖なる不死者」と対立構造を作ります。
「虚偽」や「背教」を司るドゥルジは、「真実」「正義」を司る「聖火の天使」アシャ・ヴァヒシュタと対立します。
アシャ・ヴァヒシュタが人々に「光の神を信じなさい」と説くと、ドゥルジは逆に人々に疑念や混乱を芽生えさせ、背教へと導きます。
このようにゾロアスター教では「善」と「悪」の対立構造が明確であり、人々は悪に屈することなく「善き思い、善き言葉、善き行い」を求められるのです。
元は悪の概念的存在
ドゥルジとはもともと「悪徳」や「非道徳的」を指す概念としての言葉でした。
そしてそういった「悪」を為す人のことを「ドゥルグワント」と呼びました。
ところがゾロアスター教ではそれを「ドゥルジ」と呼び、「悪を為す人」を悪魔「ドゥルジ」とされていったのです。
ドゥルジは疫病を流行らせたり、害虫を大量に発生させたりして人々を苦しめます。
さらに果敢にもゾロアスター教の開祖ザラスシュトラに地母女神アールマティに化けて誘惑しようとしました。
しかしこの時、アールマティに化けたドゥルジの股の間には、蛇やサソリ、毒ガエルといった不浄な生物が取り憑いていたため、まんまと見抜かれたそうです。
そりゃあいくらなんでもね。
さて概念から晴れて実態のある悪魔へと変貌したドゥルジですが、時代がさらに進むと更なる変化を遂げます。
不浄なる女悪魔ドゥルジ・ナス
時代が進み、ササン朝ペルシア時代の後期ゾロアスター教では、ドゥルジは「虚偽」「背教」の悪魔から「不浄なる悪魔」と呼ばれるようになります。
「死体」「廃棄」「死の汚れ」を司り、死体に取り憑く悪魔ナスと混同されるようになるのです。
悪徳の概念からより物質的な悪の象徴とみなされるようになります。
この後期型ドゥルジを前期型と分けるため、便宜上「ドゥルジ・ナス」と呼称されます。
ドゥルジ・ナスは悪魔たちが棲むペルシア北方の山より、ハエの姿を借りてやって来ます。
不浄をばら蒔くため、人間の死体の穴という穴から入り込み、疫病を広めるのです。
対策はあります。
聖なる動物である「犬」をけしかけることで、ドゥルジ・ナスは退散するのです。
また、ゾロアスター教の聖なる呪文を唱えることでももちろん追い払えます。
となれば高位の司祭にはドゥルジ・ナスも無力であるということです。
そもそも前期型ドゥルジの司るのは「背教」でした。
ゾロアスター教に対する信仰心を失わせるのが目的であった彼女からすれば、これは合点のいく弱点であると言えますよね。
またもうひとつ、猛禽類も苦手であるとされます。
そのためこの地域では死体を鳥葬にするそうです。
それはドゥルジが近付けなくするための重要な儀式であったというわけですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
悪徳の概念から、虚偽、背教の悪魔となり、死体から疫病を広める不浄なる女悪魔へと変化していったドゥルジでした。
悪神アンラ・マンユの配下である六大悪魔の中で最も登場機会の多い悪魔のようです。
創作のネタに使うもよし。
遊んでいるゲームで出会えたならば、今後は知識をもってお相手することが出来るかと思います。
皆様になんらかの思いを残せたと願って。
それではまた!