吸血鬼と言えば耽美で病的でゴシック。
そんなイメージの元となったのがご存知、魔人ドラキュラです。
吸血鬼の中でも最も有名なお方ではないでしょうか。
「元祖ドラキュラ伯爵」
さて、この中に2つ、ウソが混じっています。
おわかりですか?
今回は凶悪にして有名な悪役、吸血鬼ドラキュラを調べてみました。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームなど没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもドラキュラとはなんぞや?
ドラキュラとは、トランシルヴァニア地方の山中に居城を構える吸血鬼のことです。
トランシルヴァニアとは、東ヨーロッパに位置するルーマニアという国の中部から北西部を指す歴史的な地名です。
- 超人的な怪力の持ち主である
- 狼やコウモリ、霧等に姿を変えることができる
- 姿を消したり、ノミほどに小さくなれる
- 触れた金属を溶かすこともできる
- 暗視能力がある
- 美女の生き血を吸うことで永遠の若さを保つ
- 多くの魔性を配下に従える
とまあ豊富な能力を持っている魔人なのですが、逆に弱点も多いです。
- 日光に弱く、昼間は地下の棺で眠っています
- 心臓に白木の杭を打たれることで消滅してしまいます
- またニンニクや十字架といった聖なる道具も苦手です
原作『吸血鬼ドラキュラ』は1897年、アイルランドの作家ブラム・ストーカーにより発表されたホラー小説です。
この作品により、元々あった東欧の吸血鬼伝説が再び脚光を浴びることとなり、今日まで知られる有名ヴィランとして残ることとなりました。
それではその『ドラキュラ』とは一体どういった物語だったのでしょうか。
軽くご紹介させてください。
ドラキュラの物語
※ドラキュラ城のモデルとなったルーマニアのブラン城
時は19世紀末。
過疎化の進むカルパティア山中周辺では、ドラキュラ伯爵が生き血を吸える若い女が足りなくなっていました。
そこで発展著しいロンドンへと引っ越すため、不動産関連の手続きを頼める弁理士ジョナサン・ハーカーを居城に招き入れました。
首尾よくロンドンでの隠れ家を手に入れた伯爵でしたが、ジョナサンの持っていた彼の妻、ミナの肖像画を見て一目惚れしてしまいます。
ロンドンに渡った伯爵は、まずそのミナと懇意にしているルーシー・ウェンステラ嬢を毒牙にかけます。
しかしルーシーの死に疑念をもった医師ジャックが、アムステル大学名誉教授であり、医学者でもあるヴァン・ヘルシング教授に相談することにします。
教授は吸血鬼研究の第一人者で、すぐに死因が特定されました。
世間は狭いね、伯爵。
ヘルシング教授はすぐに吸血鬼退治のチームを編成しますが、そのメンバーにジョナサンもいました。
彼は伯爵の居城から脱出し、ミナの安否を確認するため戻ったのです。
ジョナサンは伯爵の住所を知っています。
ですがロンドンの隠れ家はすでに撤去され、ミナを連れ去った伯爵は船や汽車を乗り継いでトランシルヴァニアへと逃げ帰ったあとでした。
急ぎ追跡します。
そして居城までもう少しというところで追い付き、最終決戦が始まるのです。
ヴァンパイアイメージ
今日のヴァンパイア(吸血鬼)イメージとは、おおよそこのドラキュラ伯爵からもたらされたものばかりです。
それ以前の吸血鬼、ヴァンパイアといえば「赤黒い素顔」「吸血で浮腫んだ膨らんだ身体」といった感じで、美しいとは程遠い存在でした。
ブラム・ストーカーはこの『ドラキュラ』を書くに辺り、15世紀、ワラキアの領主であったヴラド・ツェペシュをモデルにしたと言われます。
「串刺し公」の異名を持つ恐ろしい方ですが、彼にはもうひとつの異名がありました。
それが「ドラクロワ(英語読みでドラキュラ)」です。
意味は「ドラゴンの息子」です。どういうことでしょうか。
ヴラド公の父が神聖ローマ帝国の竜騎士団であったことからドラクル(竜)と呼ばれ、その息子だからドラキュラなんです。
さらに参考にされた物語があります。
1872年、ジョセフ・シェリダン・ル・ファニュが発表した『吸血鬼カーミラ』です。
ル・ファニュはブラム・ストーカーと同じ大学の先輩に当たります。
20年以上上でしょうけどね。
怪しい女吸血鬼カーミラが、次々と若い娘を餌食にするという耽美な物語なのですが、「棺の中で眠る」「心臓に白木の杭を打ち込んで倒す」という、吸血鬼の定番イメージはこのカーミラが発祥でした。
ここでわかるとおり、ドラキュラは決して吸血鬼の「元祖」ではありませんね。
さらに言うと当時のワラキア地方に「伯爵」という貴族階級は存在しないそうです。
なのでドラキュラ伯爵という呼び方はあくまでイメージに過ぎないとのこと。
冒頭でお伝えした「元祖ドラキュラ伯爵」という通称に含まれたウソ2つとはこの事でした。
現在我々が抱くドラキュラ伯爵のイメージは映画から来ています。
ベラ・ルゴシ、クリストファー・リーといった名優がドラキュラを演じた際、髪型オールバックで黒のマントに夜会服というイメージが完成しました。
魔人ドラキュラとは、こうして100年にわたり構築されたイメージだったのです。
生なかなもんじゃありませんね。
ドラキュラの出てくる作品
枚挙に暇がありません!
『ヴァン・ヘルシング』
ドラキュラと対戦したヘルシング教授もよくネタとして使われます。
ヒュー・ジャックマン主演のこの映画もモンスターてんこ盛りです。
『悪魔城ドラキュラ』
100年に一度復活する悪魔城と魔王ドラキュラと、ヴァンパイアハンターの家系であるベルモント一族の戦いを描いたアクションゲームです。
初期はありふれたイメージのドラキュラ像でしたが、『月下の夜想曲』辺りから威厳たっぷりのドラキュラがデザインされました。
甦っても毎回すぐに封印されてばかりですけどね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
吸血鬼ものを扱うと高確率で偉大ななにかに流用されるドラキュラです。
そうでなくとも今現在皆さんが好きなヴァンパイアのイメージを構築したお方なのです。
せめて敬意をもって創作ネタに使いたいものですね。
それではまた!