まだ人類がエアコンを開発する以前、猛暑を耐えしのぐ方策として最も最大限効果を発揮したのは、そう「怪談」でした。
そこで今回はモンスターレビューとしては初のホラー系モンスター「アンデッド」を取り上げようと思います。
今回は初のアンデッドという事で、これはもう出し惜しみはなしだと最初から最強の奴を行きたいと思います!
ズバリ最強のアンデッドとは、リッチです!
ご存知ですか?
ゲームする方ならご存知かも知れませんが、そうでないとあまり馴染みがないかもしれませんね。
なにせこのリッチ、出自は神話や民話ではなく、ゲームから生まれたモンスターですから。
ファンタジーの知識を知れば、より楽しい!
それでは今回も皆さまの創作活動やゲームへの没入感の参考になることを願って。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
そもそもリッチとはなんぞや?
自らをアンデッド(不死の怪物)に変化させ生き永らえようとする魔術師のなれの果て、それがリッチです。
リッチ(Lych)とは古英語で「死体」を意味します。
元々人間(もしくは亜人)の高位の魔術師が、死と時間の制約から逃れ、自らの研究に没頭するため、人間としての生命活動を捨て去った者たち。
自然の摂理に逆らった者たち。
それがリッチです。
自らをアンデッドとするためにはかなり高位の魔術の知識、能力が必要です。
そしてより不死に関して専門と言える「死霊魔術師(ネクロマンサー)」がリッチとしての適性比率が高いです。
- 姿はほとんどが闇のローブに覆われています。
- 骸骨、あるいは少々の肉をこびりつかせた骸骨、という死神のように怖ろしい姿をしています。
- 腐臭、あるいは負のオーラを漂わせます。
- 目にすれば「恐怖」、触れられれば「麻痺」します。
- まともな人間なら近づく事さえ忌避します。
彼らが他のゾンビやスケルトン、ゴーストといったアンデッドと違うのは、「死」を経験していないという点です。
死んでから蘇ったのではなく、死なないようにアンデッドになったのです。
ただし人間のような生命活動は今後一切できません。
食欲も、睡眠欲も、性欲も失います。
ただひたすらに知への探究にのみ憑りつかれた存在となるのです。
リッチが最強たる所以(ゆえん)
ではリッチがアンデッドとして最強だと言えるのはどうしてでしょうか?
それには大きく分けて3つあります。
その1 高レベルの魔法を使う
自らをアンデッドへと変えるほどの高位の魔術師です。
使役する魔法も最高ランクの魔法ばかりです。
ただし使えるのは黒魔術や死霊魔術に偏ります。
神聖魔法や精霊魔法にはいささか縁がないかもしれませんね。
その2 知能が最高レベルに高い
自らをアンデッドへと変えるほどの高位の魔術師です。
その魔術師が自我を保ったまま永遠に研究に没頭するのです。
生半可な頭脳では到底太刀打ちできません。
ゾンビやスケルトンにはない、優秀な頭脳を持っているのですからこれほどに恐ろしいアンデッドも他にないでしょう。
その3 肉体が不滅
実はリッチは肉体を不滅とするために「魂」を別の場所へ保管しています。
「聖旬箱(せいしゅんばこ)」と呼ぶ媒体に魂を保管し、これを破壊されない限りは彼らを滅ぼすことは事実上不可能とされています。
なので面と向かって戦闘を開始しても絶対に勝てないようになっているんですね。
さらにリッチにもファンタジーゲームならではの亜種がたくさん生まれました。
中でも強力なのは「デミリッチ」。
これは半身を霊体化できる、要するにとことん物理無効な強力な上位種です。
さらに「ドラコリッチ」。
何もリッチになるのは人間ばかりではありません。
むしろより知恵の高い古代竜(エンシェントドラゴン)などがリッチになると手が付けられませんね。
単純にリッチの上位版として「マスターリッチ」や「エルダーリッチ」など、ゲームならではの味付けも可能です。
もうなんでもありですよね。
リッチの出自
初出と言えるのはアメリカの作家クラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国』で描かれた不死の魔術師のようです。
その後さまざまな形でリッチは創作物に採用されるようになりました。
冒頭でゲームから生まれたと述べましたが、そのゲームとはRPGの元祖『ダンジョンズ&ドラゴンズ』です。
ルール的には己の生命力を保管する「リッチの経箱」を自分で作らねばならず、「魔法のアイテム作成」の特技を持つ11レベル以上のウィザードかクレリックかソーサラーであること。作成には120,000gpと4,800xpが必要である。
経箱は超小型の金属製で魔法の文句の書かれた羊皮紙が数枚入っている。
通常リッチ自身が身に着けているが、箱の形とは限定されておらず、指輪やお守りといったアイテムであることもある。
しかしながら『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で使用されるものは権利上そのままでは使いにくいとされています。
そのためリッチというモンスターはファンタジー黎明期にはあまり見られない希少モンスターでありました。
しかしながらこれほど魅力的なモンスターを放ってはおけない。
名称を変えて利用した例を二つほど上げたいと思います。
『BASTARD暗黒の破壊神』のエデ・イー
「冥界の預言者アビゲイル」に請われ、3つの魔導器のうち「サタンリング」を持ってメタ=リカーナに現れたのは「エデ・イー」のリッチーというアンデッドマジシャンでした。単行本6巻にて登場します。
リッチーとは個人名で、種族名としてはエデ・イーとされています。
このエデ・イーというのは他作品では見かけないので、リッチの変更名と思われます。デッド(Dead)のアナグラムかな。
バスタードはこれ以前にもビホルダーという怪物を無許可で出し、版権を持つ会社に叱られた経緯があるようです。
単行本で「鈴木土下座衛門」と改名されたことはあまりに有名。
しかし名前さえ違えばOKということなんでしょうかね。
『ソードワールドRPG』
おそらく日本で1番普及したテーブルトークRPG『ソードワールド』には、リッチの代替えモンスターとして「ノーライフキング」がいます。
人間の超英雄が10レベルであるのに対し、ノーライフキングのモンスターレベルは最高位の15レベル。
平均ステータスはありますが、生前のキャラのステータスにプラスボーナス値を付ける徹底ぶり。
また腐った土で無限に回復できるというヴァンパイア要素も併せ持っています。
背景世界であるアレクラスト大陸にはわずかな個体数しかいませんので、遭遇頻度は超レアです。
リッチの出てくる作品
近年はリッチという名称のままで登場する作品も増えています。
『伝説のオウガバトル』
ネクロマンサーからクラスチェンジできる最強の魔法職で、全体攻撃を3回も出来る。
『ファイナルファンタジー』
四天王の一角、土のカオスがリッチです。
最初に戦う事になる四天王ですが、メルモンドの街から離れた位置にあるこのダンジョンがまた長くてしんどいのです。
しかしFF1は本当にファンタジー色が色濃くて好きです。
上記の『BASTARD』が許されずにFFが見逃されたのは、当時の集英社に対しスクウェア社がまだまだ小さい存在だったということですかね。
『ディアブロIII』
ディアブロ3で中盤、主人公に協力しつつも結局は倒されるゾルタン・クーレもリッチなのかな、と。
魔術結社の一員で天使と悪魔の魂を取り込もうとして失敗、肉体をバラバラにされても蘇り一時同行します。
確かにアンデッド風でリッチぽいと思うんですけどね。
まとめ
- リッチとは高位の魔術師が不死となったアンデッドである
- あらゆる肉欲を捨て、知識への探求を追い求める
- 肉はこそげ落ち骸骨のような姿である
- 魂を別の小箱などに納めることで不死身を保つ
いかがだったでしょうか。
リッチとは知能高い、魔術スゴイ、見た目怖い、格がある。
と物語のラスボスに据えてもなんら遜色のない最強モンスターのひとつです。
それでいて歴史が浅いので、まだまだまだまだ色々とアレンジも効きそうな逸材だと思います。
創作においてこれほど美味しいネタもないのではないでしょうか。
あなたの手でさらに新境地を開拓してみませんか?
その時は是非教えてくださいね。
それではまた!